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グルイヤールの姫君  作者: 天桜犀 海陽
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首都アーベル

長い道のりを経て、私たちは首都アーベルについた。

首都までほんとに血反吐を吐くようなきつい道のりだった。

でも、そのおかげで、首都で行うことは決まっていた。


まず、お金に関してだが、もう十分と言っていいほどあるが、力を封印されている宝石が売られている可能性もあるため、その情報を収集するためにあえて質屋にはいくことにした。

また、街中でグルイヤール王国が現在どうなっているのかの情報収集も行う。


関所で入国料を支払った私たちは、とりあえず宿をとった。

しばらくはこの街にいるのだ。

休める場所は必要だ。

部屋を二部屋取ろうとすると、後ろからグライナーにさえぎられた。


「いや、二人一部屋でいい。空きはあるか?」

「はい!もちろん!」

「ちょっと、部屋は別でもいいでしょう?」

「何かあった時困るだろ、だから同じ部屋だ。いいな。」

「うっ、わ、わかったわ。」

「いやぁ、彼女の心配をするなんて素敵な彼氏ですね!こちらが部屋のカギになります。部屋は2階の突き当りから2番目の部屋です。どうぞごゆっくり!」


私たちは案内された部屋に向かった。

部屋はベッドが二つあるシンプルな部屋だった。


「ねえ、絶対変な勘違いをされてるけど、それでもいいの?」

「ん?なんだそんなことか。リアーヌ、お前俺のこと好きだろ?だったら勘違いされてもいいんじゃないか?」

「っ!!」


私はグライナーが好きだということを知られていることに驚き、言葉を詰まらせた。

からかっているとわかるニヤニヤ顔で聞いてきたので、私は気持ちを落ち着けるため、ため息をついてから、切り返した。


「ええ、そうよ。あなたが好き。あなたと復讐のためなら、私はなんだってできるわ。」

「!!そうかい、そりゃよかった。」


私の切り返しに驚いていたが、彼はまんざらでもないようだった。

悪魔だからいろんな人に好かれるなんてよくあることなんだろうなと、私は勝手に納得した。



それから私たちは質屋へ向かった。

宿屋の受付の人に聞いて一番いい質屋を紹介してもらった。


向かった質屋は、おいている商品を見たところいいものばかり扱っているようだった。

私はカウンターにいた人に話しかけた。


「すみません、買取をお願いしたいのですが。」

「はい、いらっしゃいませ。買取ですね、どのような品をお持ちですか?」

「これなんですけど。」


そういって私はカバンから、一つだけ宝飾品のネックレスを取り出した。

ネックレスを見た男は、驚いていた。


「これは、母が無理をして買ったものなんです。いま、家計は火の車になってしまい、少しでも足しになればと思いお持ちしました。」

「な、なるほどそういうことですか。それでは鑑定いたしますね。」


男は手袋をつけ、眼鏡を取り出し、つぶさにそのネックレスを見た。

一通り見た後、男は顔を上げた。


「お客さん、これはとてもいいものです。貴族の方が持っているような品物ですが、本当によろしいのですね?」

「はい、お願いします。」

「では、こちらは250,000ロイスです。」

「ありがとうございます!」


私は嬉しそうな演技をした。

すると、横からグライナーが男に尋ねた。


「なあ、店員さん。悪魔憑きの品物って扱ってるかい?」

「!!お客さん、どこでその話を?」

「ああ、あたりか。いや、なに実は悪魔憑きの商品を取り扱ってる場所があると伺ってね?お教えいただけるかい?」


「あたりか」の部分は私にだけ聞こえる大きさの声で、グライナーは悪魔憑きの商品が扱っている場所を聞いた。

悪魔憑きとは、様々なものに悪魔がとりつき、そのものを持っているだけで悪魔の恩恵を受けられるというものだった。

そんなものがあるなんて、私はグライナーに教えてもらうまで知らなかった。


「ただで教えるわけにゃいかねえ。」

「もちろん、今出したネックレスと同等の価値のものをただで渡すと言ったらどうだ?」

「…なるほど、やりてだな。いいだろう。紹介してやる。」

「契約成立だな。」


私は促されるままに、もう一つネックレスを取り出し男に渡した。


「裏で行われている悪魔市には、招待状が必要だ。俺も出品者の一人でね。特別にアンタらに招待状を書いてやるよ。」

「ほう、それはありがたい。」

「ちょっと待ってな。」


そういって、男は店の奥に入っていった。

私は安どのため息をついた。

うまくいくかわからない行為をグライナーにやってもらったのだ。

もし、私が話していたらこんなにもうまく進まなかっただろう。


「ありがとう、おかげで力の封印された宝石の情報が得られそうね。」

「このくらいなんてことないさ。それより、市に参加してからが問題だ。」


話しているうちに男が戻ってきた。

片手に手紙を2通持って。


「はい、これが招待状だ。ただ、その恰好では入れねぇな。有名なお貴族様も参加される由緒ある場だ。あんたらせめてドレスでも買うんだな。」

「ご忠告感謝する。そうするよ。」

「ああ、そうしてくれ。」


話が終わり次第、私たちは店を後にした。

招待状はカバンの中に入れ、宿に帰ってから見ることにした。


元々街を見て回りグルイヤール王国についての情報を集める予定だったが、ドレスの購入まですることになるとは。


「それじゃあ、まずは新聞でも買うか。一番情報が載ってそうだしな。」

「そのあとはドレスを買いに行かないと。はぁ、まさかの出費だわ。」

「お、庶民の感覚に近くなってきたな。その調子だ。」

「からかわないで頂戴。」

「まあ、これからもこういう裏の市に参加することになる。その際絶対に必要になるだろうから、必要経費だと思っておけ。」

「ええ、そうするわ。」


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