首都アーベルまでの道のり
私たちは、首都につくまで1週間の期間がかかった。
首都につくまでに、様々なことがあった。
最初の町を出た後、どうやら盗賊が宝飾品を見ていたらしく、襲われてしまった。
しかし、それもあっさりとグライナーが倒してしまう。
また、グライナーはあえて一人を生かし、どうせなら力の使い方の練習のために盗賊団を全員倒そうと提案してきた。
私は断固反対したが、これからもし同じように宝飾品を見られて襲われたとき、対処できるようになっていたほうがいいだろ?と言われ、一理あると思った私は渋々盗賊団の討伐を行うことにした。
私の歩くスピードが遅いせいで、盗賊団のアジトにたどり着いたのは夜になってからだった。
「ほ、本当にここなのね?」
「ああ、間違いない。それじゃあ行くぞ、覚悟はいいな?」
「ええ、もちろんよ。」
私はその言葉と同時に左右に一本ずつ水晶の槍を召喚した。
グライナーはそれを見てうなずき、前を歩いて行った。
入り口にはやはり見張りがおり、私がその見張りの二人を倒すことになった。
私は、2本同時に見張りの腹に水晶の槍を突き刺した。
相手は声も上げずに絶命した。
「よくやった。初めて人を殺した感想は?」
「意地の悪いことを聞くのね。でも、その答えに関しては“特になにも“よ。」
「おや、罪悪感でも感じるかと思ったが、やっぱり剛毅なお嬢さんだ。」
「これからも私はたぶん人を殺していく。復讐のためにすべきことならなんだってやるわ。」
「覚悟が決まると君は強いな。それじゃあ、その調子でどんどん行こう。」
私はグライナーに続いてアジトの中に入っていった。
グライナーがほとんどの盗賊を倒したが、あえて私の方へ逃した敵を私は倒していった。
そうして、このアジトに私たち以外の人がいなくなると、グライナーは私の方に振り返ってこういった。
「それじゃあ、こいつらが蓄えてる金品をいただこうか。ついでに、ここにこの国の衛兵もつれてきて、当別した褒美ももらえば首都までの旅費は何とかなるだろ。」
そういわれて、私は昨日から何も食べていないことを思い出し、おなかが鳴った。
恥ずかしさに、私はとっさにおなかを抑えうつむいた。
「腹も減ってるみたいだし、こいつらが持ってる食べ物ももらうか。」
そういって倉庫らしき場所を見つけ、金品と保存食を手に入れた。
おなかがいっぱいになったところで、グライナーに話しかけられた。
「ふむ、これらなんかいいだろう。おい、リアーヌ。」
「なに?」
「これらを対価にカバンが欲しいと願え。」
「え?なぜ?もうカバンは持ってるじゃない。」
「ああ、ただのカバンはな。願うのは無限にものが入るカバンが欲しい、だ。」
「!!そんなことできるの?」
「これだけ財宝があれば、その半分を使えばそれくらい作れる。まさに貯めたいのにその分の金品を消費しないとえられない、奇跡の品だ。」
「なるほど、そういうことね。なら、願うわ。無限にものが入るカバンを頂戴。もちろん、持ち運びしても怪しまれない形のものでお願い。」
「了解した。契約成立だ。」
魔法人が金品の下に現れ光った後に残っていたのは、斜め掛けのできるサッチェルバッグだった。
確かにこれなら持ち運びもたやすい。
「ありがとう。それじゃあ、これに金品と食料全部入れるわね。」
「ああ、そうしてくれ。」
「…手伝ってはくれないの?」
「俺がしなくてもできるだろ?」
「手足はまだ痛いのだけど。」
「はぁ、しょうがないなぁ。」
グライナーはカバンを開き持つと、金品等に向け、カバンを叩いた。
すると、みるみるうちにカバンに金品等が吸い込まれていった。
「なにそれ!そんなことができるなら、初めから教えなさいよ!」
「まあ、それもそうだな。悪かった。」
「…聞かなかった私も悪かったわ。ありがとう。」
私が謝罪と感謝を述べると、グライナーは頬を掻いて照れているようだった。
その様も美しいのだから、美しさは罪とはよく言ったものだ。
…私が彼に惹かれているのもあるかもしれないが。
そのあと、私たちは次の町にいた衛兵に盗賊をとらえたことを伝え、その褒美をもらうことができた。
お金が手に入り、私たちはその日、その町の宿に泊まることにした。
次の日から、私たちは町に着くまで歩きながら私が得た能力の扱いに慣れる特訓をした。
手足の痛みに耐えながら、私はグライナーの悪魔らしい厳しい特訓について行った。
毎日毎日汗をかき、時には吐きながらも特訓を頑張った。
これも復讐のため。
グライナーに見合うようになるため。
そうして特訓をしているうちに傷がよくなってきたのか、私が痛覚に鈍くなったのか、だいぶ痛みは引いていき、特訓ももっと効率よくできるようになった。
痛みが引いてからは、さらにきつい特訓を課されたが、痛みがないだけで体が軽くなったように次々にこなしていった。
そして、首都アーベルに着くころには、私は20本の水晶を手足のように扱うことができるようになった。