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グルイヤールの姫君  作者: 天桜犀 海陽
3/9

早速町についた私たちは、質屋を探したが、見つからなかった。

町の人たちに聞いたところによると、首都のアーベルでしかそんな高い宝飾品買い取ってくれるところはないよと言われた。


私たちは、渋々その町を後にした。


「はぁ、まさか首都までいかないと買い取ってもらえないなんて…。」

「まあ、俺は予想してたがな。」

「ならなんで言ってくれないのよ!」

「これもお嬢様が知らないことを知っていくお勉強のためだ。」

「知らないだなんて、私これでも勉強はできるほうだったのよ!」

「それは、王族としてのお勉強だろ?これから知らなくちゃいけなのは、市井のことだ。いま、質屋がないことすら知らなかったんだから、勉強していくことだな。」

「うっ、わかったわよ。」


私は、指摘されたことにぐうの音も出なかった。

確かに、私が勉強していたことは市井のことではない。

今さっきの町での視線も、私が何かやらかしたからなのだろう。


「さっきの町での視線は、何かやらかしたというわけじゃないぞ。」

「え?どういうこと?」

「ただの村娘が、そんな高価なものを持っていることに不信を覚えてただけだ。」

「そ、そういうものなの?」

「普通の市民はそんな高価なもの持ってないな。持っているのはお貴族様だけさ。」

「そうだったのね。」


こんな宝飾品はいつも見ていたから、これが普通の国民たちは持っていないようなものなんて思いもしなかった。

私は、自分の無知さに恥ずかしくなり黙り込んでしまう。


「それじゃあ、これから次の町に向かいながら、特訓でもしますか。首都までは時間がかかるみたいだからな。」

「特訓?いったい何の?」

「そりゃあ、身を守るための体術だよ。」

「!!そんなもの必要ないでしょう!」

「あ?いいのかそんなこと言ってて。もし、お前が生きていることが知られたとき、刺客が送られてくる。もし俺だけで守り切れない数が来たとき、リアーヌ自身で対処してもらうしかない。わかったか?」

「…わかったわ。私は強くなればいいのね。」

「まあ、手っ取り早い方法もある。」

「それはなに!」

「俺に自分を守れる力が欲しいと願うことだな。」

「そ、それは…。」

「ああ、対価が必要になる。」


私は、体の一部をまた持っていかれるということを考えると、差し出せるものがない。

髪はもう差し出してしまったし。

黙り込んでいると、グライナーが話しかけてきた。


「出せるものがないって考えてるだろ?」

「ええ、私に差し出せるものはもうないわ。」

「あるさ。」

「ないわよ!何言ってるの!」

「あるだろう?差し出しても、また生えてくるものが。」

「髪の毛ならもう差し出したじゃない!」

「髪の毛以外にもあるだろ。手と足に。」

「手と足?」


私は、両手を見た。

手の甲を見たとき、私は気づいてしまった。


「まさか…。」

「そのまさかだ。」

「爪を差し出せっていうの!」

「全部の爪をな。」

「これから歩くたびに激痛が走るじゃない!」

「ああ、それも対価の一つになるな。」

「っ!!」


私は、彼が本気で言っていることが分かった。

爪がはがれたとして、どれくらいの期間をかけて治っていくかなんて、私は知らない。

だからこそ、怖い。

でも、力は欲しい。


私の顔を見て、グライナーはにやりと笑った。


「覚悟は決まったようだな。」

「ええ、私は復讐を遂げるためなら何でも差し出す。そう決めていた。だから、力を手に入れるために、あなたに手足の爪すべて差し出すわ。」

「契約成立だな。じゃあ、靴と靴下を脱げ。」

「ええ、わかったわ。」


私は靴と靴下を脱ぎ、両手をグライナーへ向けた。

すると、足元に魔法陣が出て、光った瞬間、私の手足の爪全部がはがれていった。


「あ゛ぁああああ!」


あまりの痛みに叫び声をあげる。

激痛とともにはがれていった爪と、その時出た血液はグライナーの手に収まり、光の粒へと変わった。

そして、その粒を私に向けて吹きかける。

光が私を包み、まぶしく光った後、頭の中に力の使い方が入ってきた。

力の使い方がすべてわかった後、光も収まり、魔法陣も消えていた。

そして、爪のあった部分からの出血も止まっていた。

痛みは依然として続いていたが。


「これでお前は悪魔の力を得ることができた。その力は、対価とお前の素質で変わってくる。これまで俺と契約して悪魔の力を欲するものは少なかったからな。どんな力になるのか楽しみだ!」

「不思議な感じね。今まで使ったこともない力の使い方がわかるなんて。」

「どうだ?使ってみるか?」

「ええ、試しにちょっとだけ。」


私は、靴と靴下をはいてから、力を使ってみた。

手のひらを前に突き出し、意識すると、そこにはひし形をした水晶が一本浮いていた。


「おお、きれいだな。」

「ええ、私もそう思うわ。」

「それは何本出せる?」

「指の数、20本よ。」

「そこそこあるな。これなら敵襲が来ても何とかなりそうだな。」

「そうともいかないわ。まだ扱いに慣れていないんだもの。」

「ま、それもそうか。慣れるまでは首都に行くまでに俺が相手をして叩き込んでやろう。」

「よろしくお願いね。」


私は水晶をしまうと、次の町に向けて歩き出した。


「うっ…。」


一歩歩くだけで激痛が走る。

これは、次の町に着くまで時間がかかりそうだ。


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