八話 平和
お待たせしました!
キャラクターの名前に意味はありません。
「うーん…」
「どうした?」
「招き猫とか熊手とかを倒してキングオブ福ものインジャパンとなった打出の小槌を手に、一寸法師が世界の福ものに挑むところまではかけたんですけど…」
「迷走してないか?」
シャーペンを手でくるくると回しながら考える。
「ここからシリアスに行くか、ギャグに行くか悩んでまして…」
「そこまでがギャグじゃなかったのか…」
なんとも言えない表情の先輩を見ながら考える。
「部長はどうですかー?」
「犬、雉、猿の巨大ロボがオトモ合体して巨大化した赤鬼に挑むところまでかけたぞ。」
「どこのニチアサだよ。」
「問題は変身アイテムをどうするかだな…」
「本格的にニチアサじゃねえか。」
「やっぱり銃とか腕につけるアイテムですよ!」
「剣やケータイという手もあるぞ!」
「いや、本気でその路線で行く気かよ…」
コンコン
部室のドアが叩かれる。
「もうそんな時間でしたか。」
「今日もか?」
「はい。お先に失礼します。」
荷物をまとめて外に出る。
「お待たせしました。」
「遅いです。今日は聞き込みに行きますよ。」
「はーい。」
運動部の掛け声が聞こえる。
「これ、被害者をまとめたものです。」
「ありがとうございます。」
渡された表を見る。
『1-1 田中山達也 野球部
1-1 本田星飛 野球部
1-2 藤本慎太郎 野球部
・
・
・』
学年、クラス、性別、部活、どれも共通点は見られない。
「野球部から聞き込みに行きますよ。」
「分かりました。」
そう言って階段で上に上が…?
「野球部は校庭なので下ですよ?」
「…」
ズグシャッ
「いったあ!?」
「行きますよ。」
「あいあいさー…」
頭をさすりながら階段を降りる。
先を進む香織ちゃんの耳は真っ赤に染まっている。
しばらくして、香織ちゃんがようやく口を開く。
「…文芸部っていつもあんな会話をしてるんですか?」
「へ?」
特撮談義のことだろうか。
「締め切り前以外はあんな感じです。」
もしかして
「入部希望ですか?」
香織ちゃんの正面に回り込み、尋ねる。
「え?」
「楽しいですよ、文芸部!さっき言った通り締め切り前以外は雑談ばっかりしてますし、締め切り前以外は緩いですし、兼部でもOKです!」
一月三作はキツい。
人手が欲しい。
「入部はちょっと…」
「ですよね…」
分かってた。
「どんな作品を書いているんですか?」
「えっと…部長が主に得意としているのはSF系で、先輩はラブコメ、自分は決まってません。」
心情描写が苦手だ。
「ラブコメですか…」
「気になりますか?」
「あの不良みたいな先輩ですよね。」
「強面で口調は荒いですけどいい人ですよ。」
この前妹さんと歩いていて通報されたんだとか言ってた。
「ラブコメ好きなんですか?」
「お嬢様に勧められたので読んだら思った以上に面白くて…」
ハマったと。
「そうだ、ちょうどラブコメ書きたいと思ってるんで最初の読者になってくださいよ!」
「え?」
部長や先輩以外にも読んでみてほしい。
「できたら伝えるんでお願いします!」
なんか書ける気がする!
「聞き込み行きましょう!」
「いきなりなんですか!?」
やる気が消える前に続きを書きたい。
階段を駆け降りる。
窓からは中庭で白猫があくびをする姿が見える。
学校は事件が起きていると思えないほど平和だった。
入れたい内容を入れたらキャラがよくわからなくなりました。後悔はしてません。
次は…もっと早く出せるといいなあ…