正解の不問
いらっしゃいませ。
綺麗な世界から拭い切れなかった闇を見る。
薄らと泥流している霧が、確かに地面を這っている。
踏み荒らされ霧散寸前の闇がそれでも消えないのは、踏み荒らすその存在が掻き乱す光の影に他ならないからだ。
流動的な光が消え去るのを滞留する陰がじっと待っている。
世界の翳りに身を窶す者にとって「綺麗」などという淡麗な言葉など飲み込む事は出来ない。
奇しくも世界は両極端な存在を孕み、受け入れる。
悪魔も天使も、真には神も。星々の啖呵の無用な連中に侵されている。宇宙の意思たることを思えば星々はただ静観するのみである。
綺麗な世界から見た光など高が知れている。
漠然と眩く光る一筋の光。一際大きく、強かな光。
汚れを知らない世界はその純白たるやことをしれない。
穢れすら臆する事なく触れてしまう。
既知の世界。安心と安寧が独白する世界。
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見ず知らずの人を信用する。未知の人間を信頼する。
信用と信頼が前提となる世界。それに応える事が当たり前の世界。相手の要求に従える強靭な精神を求められる世界。
卑しさなど知らない。穢れも嫉妬も失意も不要。
平等の概念も公平の概念も失われた世界。
格差の概念を知らない世界。
それゆえ、他者との乖離も許されない世界。
それゆえに独自性を許されない世界。
究極の平和と究極の安寧の最終は徹底された多様化の排斥。
誰が唱えたか、自己犠牲第一主義にして平和と安寧の実現者たること。対立の根源たる個の排斥。個性の排除。
利己的であること、自分優先である事を排斥する。
個人の裁量を徹底駆除した世界。
歩き方もその足の速さも、時間の使い方すらも画一的に。
変化のない世界。それゆえに平和である。
平和である為に平等で、公平で、画一的である。
平和主義の行き着く先。宗教の原点。
…。
……。
…………。
「我々は利己的であることを思えば人で居られる」
個人主義に傾倒することで、対立と競争によって、我々は発展する。個人の裁量によって自由を獲得し、個人の力量によって生活水準が決する世界であることを望む。
感情的であることを肯定する社会を求める。
喜怒哀楽のその全てを肯定する。
差別と偏見を許容し、画一的な在り方を否定する。
他者を容認するなどありえない。他者の否定と拒絶によって自己を確立する。同一であることを否認する。
同一、画一的ではないと他者に対する不理解を習得する。
不理解である事を我々は求める。偏見と差別と決め付けを我々は要求する。不理解の先に存在する世界は他者理解とは無縁の世界である。
「偏見と差別を!我々は数多の愚人を手本にし、彼らの奔走した自由を目指そうではないか!理解の乏しい事を是正することのない、理不尽を容認し、不条理を最上の喜びとする!我々は戦争によって生まれたエラーである!我々は不理解を求める!我々は不条理を求める!我々は不自由を求める!」
それは、かつて世界が失った不自由を求める人々であった。
不自由を失った彼らは実に快適に画一的な世界を満喫している。それゆえに、その思考回路のエラーが導き出した結論こそ、不自由を求めるという現状の社会に対する反骨精神であった。全ての行動が許されてしまう。許されない事に重きを置くことを、エラーは求める。
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「世界を救う事に喜びを感じる個体を転生者に選んでいた」
そして、世界を滅ぼすことを目的とするならば落選した人間を転生させればよい。
ハッピーエンド。バッドエンド。
選んで、仕向けて、調整する。その結末が神々の知る未来である。
急な眠りにつく神々によって世界が凍結することもある。
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「転生者に何を求めるのか定かではない?ならば、我々の計画を手伝ってはくれまいか」
お疲れ様でした。




