不良転生
いらっしゃい。
中次元の利用に制限が設けられた。
白紙の空間が本来の機能を取り戻した。
ーーー
開かれた会議の議題は「転生者の怠慢」である。
「どうやら、前世同様、御託が通用しなかったら泣き言ばかりで動こうとしないね。やっぱり素質に問題があるんだよ」
「前世の記憶が足を引っ張ってるね」
「非効率だなんだといって肉体労働を極力サボってるね」
「…迫害されている理由が本気で分かってないのがまた」
「記憶の保持はひつようないんじゃないか?」
「世界への介入の方法を見直す必要がある」
…。
……。
………。
「そーだねー、指先一つで上手く行く人生を送ってきた人間ってのは、忍耐力も我慢強さもない。短期的にしか物事を見れない奴だからーね。短期的な失敗で憤慨する愚者には転生は厳しいんじゃー?長期的な成功を目的とした思考回路が構築されてなんだってー」
「同意する。我々は怠慢が短命種にとってどれ程の愚行かを観察することもある。」
「目的もなく、信仰もなく、大義もなく、叡智も技術もない。泣き言ばかりの凡人には第二の人生など甚だ時間の無駄である」
「対価の価値を自ら貶める態度を正当化する人々に何を言えば良い」
「怠惰を惰性で続けている。変化を望む割に己が変わることすら怠るのだ。そなやつらが状況の変化程度で励む筈もない」
「一部努力している子もいるが…」
「生前も絶えず努力するだけの精神性が備わっていたに過ぎない」
「えぇ、私も同様の結論に達しています」
ーーー
「理想の環境を用意しても積極的に働かんではないか」
人間の望む環境を整えた結果、その現状に甘んじてのらりくらりと楽な仕事ばかりで後は遊び惚けるばかり。
議論の末に、一人の人間をオモチャに色々と実験を繰り返す。
どんな才能を与えたとてそのうちに飽きてくる。
次第に頭を使わなくなっていく。
工夫もなく、愚直に与えられた才能に酔いしれる。
オモチャより目立つ人を置いて見れば今度は不平不満を垂れ流す。優れた物を取り入れることはせずに、批判して価値を貶めることに尽力する。才能を与えるというのはやはり無意味なようだ。
凡才であることを受けることすら不能ならこのオモチャに価値はない。
非凡であることを求める余り、凡才であることを軽視する。
「無能の特筆すべきことはまさに、もとより才能とはなんたるかを知らない事である」
ーーー
悪魔の集会。
「神々が世界樹の伐採を企てているらしい」
「それが神々の欲望とあらば付けいることは可能か」
「堕とすには十分な欲求だ」
「しかし、我々は天界の門を潜れない」
「忌まわしき獣に守られている。欲を与えたい」
「獣の能力は大体把握している」
「獣が認知した存在は無条件に破滅する。そして、獣が認知し得ない存在は例外なく消失する。」
「おまけに、概念の流入すら獣は認めない」
「無能な獣故に我々がいかなる手段を以ても例外なく排斥されている。」
「星々を求め彷徨う神々を乗っ取るしか策はないか」
「しかし、天界を出る神は減少傾向にある」
「我々の存在が露呈している。目は摘み取らねばな」
悪魔の集会へ忍び込んだ存在は抹消された。
ーーー
沈む石段が弾かれるように膨張する。
見えた世界は、かつての草原であった。
お疲れ様でした。
(転生した結果、環境が変化して生活水準が大きく低下してもその世界で仕事しながら楽しく過ごすことなんて出来るのかな。現代人には特にハードルが高い気がするけど。明らかな重労働と非効率(効率を向上させる道具や技術がそもそもない)な状況下で二度手間三度手間なことを繰り返しながら誠心誠意働けるんだろうか。無論、労働の対価は保証されてなくてピンハネ上等の世界なんだけど、或いは、報酬がそもそも迫害の対象からの除外という可能性もある。例えば、働くから村八分にはならないという。
なんなら、ガチ奴隷(欧米流の鞭打ちフルコース)的な現代のブラック企業も真っ青の世界もありえるよね。え?パワハラ?セクハラ?そんなの無いなんてありえない。転生する世界の文明レベルと倫理観次第だけどね)




