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崇高な謀略

いらっしゃいませ


「人間。その軌跡を誇示せよ」

"厳か"な声が瞬時に神々しいと理解する。


「あー…えっー…」

胸の内に沸いた崇拝の感情に絶対的な無神論を盲目的に信仰する思想者は混乱する。それは、かつて神と言う存在を否定した時とは比べ物にならない実感が伴った疑い難い結論であったからだ。


徐々に膨れ上がる罪悪感と有神論を絶対視した理性的な思考回路が、無神論者というかつての人格を破綻させた。


「はい。私は地球に生を受け、日本と言う島国の国民として少々醜くはありますが、平凡と呼べる人生を日本国内で20年間過ごし、交通事故を最後に幕を下ろしました」

うんともすんとも言わない存在に急かされる様に要求に応えられない事を素直に認め、謝罪する。

「すみません、…誇示出来る事は特にありません。ごめんなさい」と深々としたお辞儀を無意識におこなっていた。


既に人間はこの場でその生涯において最も信頼する文化的行動を取り始める。認識の齟齬や乖離が発生したところで、その人間は即座に適応する能力を発揮した。


例えば、権力への屈服。或いは強者への平伏は自尊心の適切な保護を体得しているか、又は自尊心を破棄しているかのどちらかである。


そして、その適応能力の根底にある弱さと弱さへの理解こそ、現在、神々が求める条件である。


感情の処理を感情や理性で処理するのではなく、文化的行動によって処理する事こそ、その魂の軌跡を誇示することと同義。



「人間。輪廻から外れることを望め」

その言葉は人間の想定外であった。

思考停止した人間の脳内はその言葉の意味を再構築していく。

5秒。それは人間が体感した時間。


「の、望みます!」

契約に相違ないと人間の直感は叫ぶ。歓喜と危機感。

既に人間は契約という対等な関係性を神に赦されて興奮し、自惚れ始める。


神に認められたという優越感は次第に唯一無二の価値が自身に有ると確信するに達し、どんな人よりも偉いと誤認するに至る。



その感覚は視界が暗転するまで高まり続ける。


「…俺は誰だ……」


その暗転の最中に人間に残ったのは喪失感とも虚無感とも分からない何かの後遺症。

その感情は生涯を通じて尾を引く。


謙虚な人だったと後世に神父の見本としてもモノづくりの偉人としても言い伝えられることとなる。


ーーー


その空間で行われるのは人間の理想の体現。

その空間が人間によって再構築された結果、それを認めた人間は理想的状況に不満を抱き、徐々に空間が定まらなくなっていく。結果、自害を選択。


その空間で行われるのは人間をその場に留まらせる方法の模索。

その空間が定められた形を取り始め、人間を快楽と悦楽に浸す。結果、思考回路が破綻して快楽も悦楽も得ることが不可能になり、無気力な状態から抜け出そうともせずに餓死。


その空間で行われるのは信仰心がどこまで高まるかの実験。

その空間は、信仰心のない間は刺激的な危機感を与える目的をもって絶えず変化する。結果、人間は安らぎを求めて信仰心を高める。一度膨れ上がった信仰心は強迫観念に至る。


人間の個体差に寄らない確実な行動管理システムの作成。


それらの作成によって、人類が凡ゆる手段での神々の存在証明を困難にする。


干渉されるべき神々とそうでない神々がある。


その空間に住まう神々は思案する。

「…あぁ、神よ!私はここにいます!」

この迷い込んだ人間を利用しない手はない。

お疲れ様でした。

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