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常態化

いらっしゃいませ


目に見えない存在。或いは確かな存在感。

この空間に留まっている何か。


視界は闇一辺倒。それどころか瞼を動かせているのかすら分からない。

一つわかるとしたら、普通ではないこと。

風も感じない。無風なのか、密室なのか。

音が聞こえない。自身に異常があるのか、ノイズキャンセリングの様な現象が耳元で発生しているのか。知識を総動員して現状の理解に努める。その自我はその努力に保障されるのか。

『我思う我あり』の格言は意味を成すか?


拠り所のない現状下で、擦り寄る先が何かへと向かっているのは仕方のない事だ。


昔は良かった。そう考えるのは現実逃避に他ならないと知っている。何も感じられない。

視覚も聴覚も、剰え触覚も機能しない。

元々、嗅覚は優れている訳ではない。

呼吸をしている感覚を掴めない時点で、嗅覚には期待していない。例えば、舌を動かす感覚を思い出せないでいる。


経験則から語るなら、全身麻酔。

脳の機能が低下していくのを実感する。

それは、当たり前だ。


麻酔が効いてきたのだろうと。


……

…………


目が覚める事がない。寝ても醒めても、現実は変わらない。麻酔が延々と効果を発揮しているのか。投薬され続けているのか。

定かではないが、この現状が維持されている間は退屈と憂鬱が肉体に労働を求め始める。

肉体の輪郭さえ掴めないのに。


随分と時間が経った様な気がする。

暗闇に閉じ込められると時間の感覚が狂うという話を聞いた事がある。三日程度で一週間の差が生じるという。時間を余りにも遅く感じるのだろうか。退屈と感じている時、自身の認識はその場に停滞する。それが三日。

それだけで、体感で一週間。


考えるのを止めると今度は時間の波に襲われる。努めて考えないというのは、どうやら疲れるらしい。全然時間が経った気にならない。

数分か、その程度か。


自身の姿を想像する。

それはまるで植物人間の様だ。

そう。それらの認識が正しい。

植物人間の感覚に近いのではないか。


そういえば、植物人間の脳波が日常生活を送る健康な人の脳波と一致するという話を聞いた事がある。…夢を見ている時の脳波だったかな。

どちらにせよ、今の様に荒唐無稽に違いない。


現実を生きる夢を何度か見た事があったな。

やる事をやって、家事をこなして、風呂に入って、ご飯を食べて寝るという休日の一連の流れを当たり前のこととして夢の中で送る。


…夢の中で寝ると同時に目が覚めた時、やる事が終わってない事を察して汚い部屋を見て、空腹に苛まれながら頬を掻いたあの瞬間は、憂鬱を通り越して、いっそ清々しい気分だった。


そして現実逃避を始めて10分も経ってないのならば、そこにあるのは実に残酷な話だ。


何時になったら夢から覚める事ができるのか。

寝ても醒めても変わらない。


今現在できることは現実逃避だけである。


ーーー


ドラゴンに転生したいと願った輩を転生させてやったが、無事孵化する事が出来るのか。

肉体は完成しつつある卵をくれてやったが、はてさて他の神々に遊ばれん事を"カミ"とやら祈ろうか?


ーーー


ドラゴンは総じて知性が高い。

種族間で文化が継承される程度には。

生物の観察とその発見を伝達する言語を持つ程度には他者との交流がある。

異文化の独自解釈と、事実の羅列を整理する読解力も持ち合わせている。

そして、感情の起伏を抑える術も。



しかし、偶に失敗作が誕生する。

運動能力が低く、感情的で、愚かしい。

そんな個体は群れの統率力を低下させ、外敵に付け込まれる隙になる。そんな異物は排除するのが望ましい。


この個体のように。


ーーー


神々の1柱が疑問を問い掛ける。

「人間の信仰心はどの程度まで発達するのか」

「そんなの、知らないよ」

「さぁ、ある程度まで育ったらそれ以上は無さそうだね」

「信仰心はある程度までいくと、徐々に信仰心が常態化してしまう」

「行動様式は、作業と化して、精神は信仰心と名を打った無関心に至るってのが実験から得られてるけど」


「…信仰心を改めて抱くことくらいじゃない」

「そもそも、信仰心が、自惚れの一種である事が分かってるじゃないか」

「…我々が欲するは人間からの解放」

「で、実際信仰心を得て開放された例は存在するか?」


「…一時的に負荷は無くなる」

「やはり、魂の撤去を試みるしかないな」

「盲目の神は負荷から解放されている」

「うむ、盲目が目指すべきと示唆するならば、上の方々含めて間違っていると」


「さて、次の話題に行こうか」


お疲れ様でした。

↓作者の独り言です。

最強種が最強種である理由…それは、転生者をサクッと早い段階で潰しているからではないかなと…人間の考える残忍さなんて、人間特有の考えに他ならない。人間ですら行える残忍な行動だ。他の動物が行えない!なんてことはない。


人間を辞めた時にしか、人間以外の考えは分からないわけです。


他の動物の感情を理解する?

同じ人間の感情すら察せない粗末な感覚器官なのに?

動物の気持ちが分かるなんて、なんて傲慢なのでしょう。

…と考える私も傲慢に違いない。


科学的に正しいは感情的には否定する事が出来る。

科学を基盤に物事を考えた場合、"科学的に正しい"を否定する事は不可能になる。何故ならば思考の基盤がその科学であるからだ。実証、或いは再現性の低いモノは否定される傾向にある。


再現できず、批判され、理不尽と感ずるのは感情であり、事実のみを羅列すれば、そこには事実のみが残る。それに何を感じるかはその人間次第である。


物の見方を変えると云うのは、事実の追加を意味する。

事実はその人間の主観である。

その主観に賛否両論が起きてもそれは事実の追加が成されるだけである。俯瞰するとは、事実の羅列を他人事として扱い、内に沸いた感情が流入しない様にする事である。


関心事を無関心に追求するのは難しい。ほぼ不可能である。


。。。

他人と意見を共有するというのは、殆ど失敗してるのでは無いかと思う。

美術品を鑑賞する時間を共有しても、感じ方までも共有できない。感想を言い合うのは、その擦り合わせに他ならない。と…私は思う。これもまた主観の羅列である。

(実は、少しばかり人間の考えから逸脱するつもりで書いていた)

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