白い果実の軌跡
いらっしゃいませ。
ある宇宙空間にて、突如として空間を失った事を観測した神がいた。原因は不明、消失の理由も不明である。
しかし、邪推の神だけは理解する。
「見つけたね」そう言い残し、神々が原因究明に勤めている中、最も初めにポッカリと空いた空間へ赴き、消滅した。
「なんだこれは…」
理解する事でしか存在意義を見出せない神は存在負荷に耐えられずに盲目となり、理解を拒んで身を投げた。
天界の混乱は瞬く間に広がった。
ーーー
「平和だねぇーー」
「そうだなぁ…」
名もなき神々は認知されるまでその存在理由を保留とし続ける。
曖昧で、最も存在感の強いとされる神々。烏合の衆と軽蔑を受けながらも存在負荷から逃れている神々である為、一介の神々程度とは比較にならないほど地位が高い。
そんな神々の会話は明確に曖昧である。
ーーー
「我らが聖域の管理者たる所以、我らが存在は幾千幾百の挫きに屈さぬ理由、語らずとも察せよう!」
世界樹に定められた空間を神域として定め、天使に守らせる。
量産型を凌駕する濃度は悪魔を退けるには足りていた。
ーーー
「会議なんて、面倒なことせず…いや面倒だし、他に任せるか」
邪神は転生者の在り方の変化を確認し、報告する義務を投げた。
本来であれば秩序の崩壊を避ける為に処罰されるのが常であるが、邪神ともなればその罪はない。
ーーー
空白に点が置かれる。
「…えぇ気がつかなければよかったよ」
「転生者の質が上がりましたね」
「えぇ、待遇の改善を思案する必要がありますね」
「転生者のやってくる星の人類は無能ばかり、信仰心こそ最大の武器、それを理解していないのだから、呆れるわ」
「…信仰心の欠如、それが転生に必要な一要素ぞ」
「帰属意識の低さもまた転生者の素質」
「それが、新たに転生者に課せられる素質とやらか」
「昔は帰属意識の強さ、一途な信仰心だった」
「今は逆…だから何年低脳があつまってきやがる」
「いやいや、有能だぞ!彼ら彼女らは!」
「帰属意識を失って他者依存が増えた」
「あぁ、我らを認知すれば勝手に依存して信仰心が向上する」
「手を借りたくて仕方なくなる」
「神の力に頼った愚かを賢しと信ずる哀れを静観するが良い」
「その、神は神で、人は人、上と下では世界は違うのです」
「うむ、無為の神のおっしゃる通り」
「世界とは…我ら神と人は空間の存在」
「力の限り否定したいけどなぁ」
「人は凄いんですよ!」
「そーだ!バカにするな!」
「…」
「…みんな気がついていたんですね、ほんと面倒だ」
「うん、お疲れ様です」
空間が縮小する中、形すら保てなかった会議は終了した。
ーーー
「政治的圧力なんて無視すれば良いだろうに…」
「お前、王様なめとんのか?」
「…いや、大変そうだなぁとは思うけど」
「はぁ…左翼とかゴミの集まりだわ」
「確かになぁ、国の形を保ちたいなら左翼はお荷物でしかないわな…」
「国に尽すことを善しとしない連中が権利の主張ばかりする…」
「大飢饉に、大洪水、更には内戦、それに乗じた他国との戦争」
「頭が痛くなるわ」
「大飢饉だからこそ耐えられている…軍に属する以外に生きる術が用意されてないとかこの国終わってると思う」
「害虫に救われるとはおもってもなかったわ」
「左翼の主張が激しければ激しいほど、軍隊の足並みは崩れ、軍人の死亡率が上がる…どうにかならない?転生者の知恵とかで」
「左翼の主張が軍人の士気を下げて、死亡率を上昇させてるのか…軍歌って偉大だったんだな」
「軍歌?なんぞ」
「…日本陸軍って軍歌とか色々あるけど…っ要するに軍人が役割を理解する為に歌ったりするじゃん」
「いや、激励と日々の訓練で…なるほど転属の際に歌を覚えたら役割も理解できるという仕組みか」
「流石、王様ですね!」
「…はぁ、左翼が蔓延る前に知りたかった」
「…もう左翼が蔓延ってるのか…国の為に命を捨てよみたいな歌は批判が殺到するな」
「それだけじゃなく左翼の浸透した今じゃ、他国の降伏勧告に命の保証が追加されたら…負ける」
「激励はどうなん?」
「効果は…ある」
「効果があるようでまだよかったよ。内容は社会復帰の保障と税金の免除、あとは軍人の労わりか…この世界での保証とか怖くて信用できないけど王様の口から出まかせが出るなんて左翼以外考えんよな」
「…負ければ何もかも失うのだ、後には引かんよ」
「最後までお供いたしますよ…王様」
ーーー
白い果実は落下し続ける。
様々を飲み込みながら成長する。
加速が止まらずにやがて、光をも置き去りに宇宙の果てに消えた。
お疲れ様でした。




