素質の形成
いらっしゃいませ。
天界に存在意義すら後付けされた神がいた。
役割は転生者の思想を転生先の思想に寄せる為の知識の形成。
加護の恩恵は言語の理解。
神は云われる。
「常識とは。常日頃の見識である」
故に人の持つ常識は千差万別であり、絶対は当てはまらない。
神は云われる。
「正義とは。実態はエゴイズムを基盤に個人主義的思考を満たす全てを正当化することである」
故に、知性ある生物は大義を盾に身勝手な正義を奮って殺し合う運命にある。
神は云われる。
「道徳とは。正義の衝突を避け、円滑に人間関係を構築する為の妥協と黙認」
故に、仮に相互認識の差異が明らかになって精神的苦痛を伴っても、内面に秘めることを美とする事で関係の悪化や恨み妬みによる負の連鎖を食い止めたり、迷惑な正義執行の足枷などの役割も担っている。
神は云われる。
「邪悪とは。簡素に言い換えるなら、道徳的な精神や行動に反する言動」
故に、道徳を軽視すれば排除の対象となる。無邪気を理由に道徳に無知である事もまた排除の対象となる。
神は云われる。
「危険思想とは。その正体は反逆主義である」
故は、元々抱いていた幻想、思想や感情が何らかの形で破綻した場合、或いは其れらすら持ち合わせていない場合、元の主義主張を批判する事で、困惑から開放され、反骨精神に目覚め邪悪になる。反逆はその文化の崩壊を意味し、道徳的思考が見出してきた意味や共通認識を無為にする。無闇に干渉すれば死ぬ事もある。
神は云われる。
「反抗多動性思考とは。主体となる自己が周囲より劣っている事を自認しつつも、自己優位を築く為に道徳や他者の正義に相反する他者の正義や邪悪を持ち出し反対することである」
故は、相反する常識や正義を持ち出し矛盾を成立させ、その何方にも属していない自己こそ有意な常識の持ち主であると誇示する為に無闇矢鱈に思考すること。
神は云われる。
「敬虔な信徒とは。神を信じ、神の言葉を唯一と考え、その人生を神の教えをさんに理解する為に捧げる謙虚なる人物である」
故に、信徒は神の教えを説く事が唯一の仕事である。
かくして、その転生者は宗教家の平民として生まれ落ち、神の加護によって実に静かに天命を全うする。
ーーー
「ふむ…時間軸の分離ですか」
それは世界樹の根が時空を裂いた事で発生していた。
危険性やその作用は不明である。
ーーー
「…」
「………」
「……………」
ーーー
宇宙の人格が形成されつつある事に宇宙は気が付かない。
そして、宇宙が把握できない事を神は知る事ができない。
お疲れ様でした。
異世界の常識に必要な造語を作ったつもりでしたが、どうやら「反抗挑戦性障害」とやらが存在していた。リアルな造語をと思って頭を捻ったはいいものの、既に存在していた概念だったとは…無知ですまない。
という訳で、世界観の構築に必要だった概念であると、改めてそういうものだと認識してくれると、はい。修正の必要がなくてとても助かります。




