7-3
ナコクの次は、シナノハラ。
そこが攻略できたら、間髪入れずにトバヤナイ。
どれぐらいのクニを統合できるモンだか分からないけど、やるとなったら速攻で動くほうが良い。相手に反撃の隙を与えたら負けだ。
負けられない。
だってツウリキで攻め込む、私だけの戦争だもの。
他国にも、ツウリキ持ってる人はいた。
けど私や、アイツほどじゃなかった。
最初の頃の私みたいに、ツウリキを上手く使いこなせてなかったりとかね。シナノハラの賢者と呼ばれてるお爺ちゃんがいたけど、ツウリキは弱かった。代わりに隋のこととか色々知れて良かった。
賢者は言ってくれた。
「あなた様ほどツウリキの強い方は、そうはおりますまい。あなた様が、この日の本を治めるにふさわしいと存じます」
お爺ちゃんがそう言って、クニの偉い人たちを説得してくれたので、シナノハラとの停戦は疲れずに済んだ。ナコクを落とした時みたいな大きな力を使うのは、やっぱり疲れる。
ここじゃない時代から来た人とかもいないかなぁって思ったけど、そうポンポン沸いてるモンじゃないみたいだし。
昔には、そういう者もいたようですと話してくれたのは、トバヤナイのミコである。彼女のツウリキも、私ほどではなかった。
けどトバヤナイは、ミコ様頼みの生活してなくて田んぼどころか畑や家畜までがっつり確保してて、整ってた。ナコクといい、日本にはヤマタイ以上のクニがいっぱいあるんだな。
そんな中、私が天下統一を成し遂げるんじゃーなんて、おこがましいんじゃね? なんて思ったけど……やらないうちから諦めるよりは、やってみて考えれば良いと言ってくれたのは、タバナだ。
「我らが、ミコ様をお支えします。存分にクニ作りをなされませ」
私が、クニグニを統一して隋に出るという壮大な計画を語った時、タバナはそう言ってくれたのだ。
ヤマタイはまだまだ遅れてて、ミコ様頼みの田舎だ。けど、そのヤマタイに私が存在してれば、強豪国である。
この圧倒的なツウリキは、他国を蹂躙する。そして他国の文化や技術をヤマタイのものにして、どんどん大きくなっていく。
他国の利点を吸収しクニを大きくする仕事は、治佐や稲佐たち皆に任せる。
決め事は、ひとつだけ。
侵略しないこと。
クニを平定したからといって、そこにヤマタイの者を送り込んで侵略するみたいな、そんな支配はしない。それが正解かどうか分からないけど、市井の人たちを巻き込んじゃいけないと思う。ましてや抑えつけたり殺したり、あり得ない。
私のクニ取りは、あくまで国王狙いだ。
幽体で相手国の懐に忍び込み、充分に調査してから、キーマンにだけ仕掛ける。殺さない。怨恨の輪廻は起こさない。自分トコの村人を殺されるのも嫌だし。
統一は、あくまで首脳会談で終わらせる。
ただ、船を作ったり開墾したり、お米が不作の時に、ちょーっと助けて欲しい良いだけだ。っていうのが上手く回るように頭使ってくれるのが、タバナたちの仕事だ。ありがとね。
タバナは、オサが亡くなってしばらくして、オサの地位に就いた。
それと同時に、"ミコ"は皆にオープンになった。
つまり社に引き籠もってた風習を取っ払って、地面に降り立ったのだ。
まぁ、降り立つの、これで何度目よ? って感じになってたしね。簀巻きにされて死にかけたことだし。ミコも普通の人間ですわ。
って、そんな簡単に近所のお姉チャン扱いしてもらえたら、苦労しないけど。そこは徐々に、かな。
何はともあれ私は、以前に抱いた野望を少しずつ叶えている。
ヒタオ。
もう、あなたの魂も感じない、遠い存在になっちゃったけど。
ベランダから降りた私を見て、微笑んでくれてるかな。
いや苦笑してるかな。
私になら、もう、タバナを差し上げても良いですよ、とか思ってくれるかな。ヒタオがそんな風に思ったりはしないだろうけどさ。
順調にミコ様やれててクニ作りも上手く行ってて……っていう日々を過ごしていると、一度は封印して消し去ったはずの恋心が、ふと浮かび上がる時がある。
相変わらずタバナとの距離は、主従の域を出ない。ように、していると思われる。もどかしいけど、納得も……いや、出来てないけどね。
厄介なことだ。




