6-5
オサの姿をしたキヒリが、高笑いしながら衝撃波を打ってくる。私が避けたら、皆に当たる。私が受けて、衝撃を殺すしかない。
しかも、ご飯食べたとはいえ、縛られてた私は疲れてる。
平行線じゃなく、追い詰められてる。
長引くと駄目なやつだ、これは。
「ごふっ」
あっ、やっべぇ。
ダメージ来てるわ。
口元を拭ったら、とうとう涎じゃなくて血が出ていた。胃がやられたかな。
「早く……皆、逃げて」
って言ったところで逃げないんだよなー、あんたたちは。
「ミコ様、お引き下さい!」
「ここは私が!」
って、こぞって出てくれるトサたちが死ぬっつーの!
泣けるわ。
「どうしてそんなに抗うのかが理解できないね。中の君とて、その容れ物を捨てて次に行けば良いだろう?」
キョトンとした感じで言われても、ビジュアルがオサだしな。ってか、もし中の顔で言われてても今さら信じられるかって思うけど。
あんた、中の私から殺そうとしたよね?
あたしゃ覚えてるよ?
まぁコイツからしても、中の私がこんなに抵抗してて身体が乗っ取れないのは、予想外だったみたいだけど。多分、ヒタオが犠牲になった時から計画が狂ってるんだろう。
もしくは、そもそもの最初っから……私が、この世界に来た日から。
「あいにく他にはアテがないんだわ。あんたこそ他を当たってよ」
「そうは行かないってのは、君はとっくに知ってて居座ってるんだと思ってたけど……まさか、知らないのかな?」
「何を、」
言いかけて、これは不毛だなと口をつぐむ。私が何を知らないのかを教える必要はない。
って言っても私、相変わらずほとんど何も知らないんだけど。いやもう他の身体に行けるならそうするわ、ミコなせいで幽閉されたり戦争したりとか、マジ勘弁よ。コイツに殺されるまでもなく死ぬって。
ミコなせいで。
「ミコ様……」
私たちの変な会話に、チサたちが怪訝な声を上げている。
だよねぇ、こんなに喋ってたら、ツッコミ入れたくなるわな。
こんな局面でこんな知られ方するぐらいなら、もっと早くにタイミングみてカミングアウトしときゃー良かった……なんて、後悔先に立たず。
後でいくらでも説明するし謝るから、今は後ろから刺して来たりはいないでね。
正直、揺れないでもない。
訊いてしまいそうだ。他の身体に変わる方法。
なんなら今すぐ逃げたい。私がカラナじゃないこと知られて、チサたちに悲しい思いをさせたり憎まれたりするのは、キツい。
他に移って穏やかに生きられるなら、そうしたい。もっと言えば現代に帰りたい、この気持ちもずっとある。
そもそもコイツに会いたかったのだって、復讐もあったけど、戻れる方法を訊きたかったのもあったし。戻れないみたいだけど、そう割り切るのは難しい。
でも。
今じゃない。
後ろの皆を死なせかねないアンタには、ミコ様やらせる訳には行かない。
それに、少しずつオサの身体にガタが来てるのも感じられる。やっぱりオサの身体じゃ、強大なツウリキは負担がかかるんだ。
前と違って今のコイツは、私の思考を読んだりも出来てないっぽい。力が足らないんだ。
踏ん張れば勝てるかも知れない。
「トサ……チサも」
耳打ちする。
「はい」
「はい」
小声で。でも、二人とも良い返事だ。
「私を信じてくれる?」
色んな意味を込めて訊いた。
二人ともどころじゃない、フサやトワダ、他の人たちだって。幽閉騒動からか、もしくは下手したら、ミコが逃げ出した頃から、何かおかしいと思ってたことだろう。
それでもミコとして神託は授け、ツウリキもあって雨も降らせてた。
そんなミコが今、中の人がどうのと言われてて、オサだって、人が変わっており中の人がどうのと言う話をしている。
よっぽどの鈍感じゃなきゃ、さすがに分かるでしょう。
だとしても、それでも今は。
「はい」
「当たり前です」
小声で肯定し微笑んでくれる二人の、何と心強いことか。
私は思わず振り返ってしまった。
他の皆にも、声が届いていたのだろう。
控えていた皆が苦笑まじりの微笑をして、私を見ている。カラナでなく、中の私を。
「皆……」
「ミコ様!」
「あぶな、」
ハッとして前を向く。だよね戦闘中に余所見するとか死亡フラグじゃん!
慌てて手を拡げた。
が、閃光が私の視界を奪っている。
「!!」
ダメだ、クリティカルヒットだ。やってしまった。
……と、思ったけど……。
あれ、ノーダメージ。
手足もちゃんと付いてる。
後ろの皆も無事。
でもって後ろの皆が前を見ているのは、私の前に立ちはだかっている者だ。
少年漫画か!
私は思わず反動で爆笑しそうになった。
「タバナ!」
「ご無事ですか、ミコ様!」




