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6-2

 オサの喋り声が、段々と叫び声に換わる。


「ミコ様をお助けするのだ!」

 って、なんか涙声になってるし。

 でもって松明を持った人が、私の横に立ってるし!


 この人を(カラナ)は知ってる。

 闘佐(トサ)だ。

 お願いトサ、という気持ちを込めて見つめてみたが、どうやらオサの演説に心酔してるようで、私に向けられてる目に、憐れと嫌悪が浮かんでる。早く燃やしてあげなきゃ、みたいな気持ちが透けて見えてる。


 ーー私を救うがために火をつけるのだ、という演説。


 いやホント上手かったわ。周囲の皆のみならず、聴いてる私まで、自分が火にくべられるってのに、燃やされたら生まれ変われる気になっちゃったもんね。

 火の鳥のように、とか言われたらさ。そういう奇跡もアリなのかなとか思うじゃん。ツウリキだけで充分、普通じゃないんだから。

 一度は私だって、死ねば元に戻れるのかなって思った時もありました。でも死んで元に戻れる保証はないって、分かっちゃったし。

 こんな半端な状態で、タバナを放って私だけ舞台を下りる訳に行かない。この後に戻ってくるだろうタバナだって、どんな扱いを受けるやら、たまったもんじゃない。


「火を!」

「……っ」


 松明が揺れる。炎が揺らぐ。

 ほんの少し、トサが躊躇した。やめて、火をつけないで! 目で訴えたけど、逆にトサが意を決したみたいになってる!

 松明が視界から消えて、足下が熱くなった。


「!!」


 ゴウッという音が響いた。ベッドになってる焚き木の中で、音が反響してる。すごい燃えやすそうな音だ。実際よく燃えてるんだろう。

 熱い。いや。痛い。足が、手が、顔が、痛い。皮膚が痛い。

 ぐるぐる巻きつけられてる縄も、燃えてきてるみたいだ。焦げ臭い。なんなら肉の焼ける匂いとかしてない? 私の足とか言わない? いや人間そんな簡単には燃えないと思うんだけどさ、思いたいんだけどさ。

 でも昔から火刑はあった訳だから、燃えない訳はないんだよね。

 皆が退いている。

 オサも一歩退いている。

 多分すごく熱いよね、周りも。

 皆の顔が歪んでいる。ミコ様ミコ様と叫んでる声が、燃えてる音に混じってる。喜びなのか、悲しみなのか。

 火柱が上がっている。天高く。私の視界を炎が包み込む。その向こうに青空が広がっている。

 雲ひとつない、青空。

 あの時も、こんな空だったな。

 私は天に還るんだろうか。


 上昇気流。

 熱気が、舞い上がる。

 あの時よりも、熱はある。

 焼け死ぬほどの熱が天に昇っている。

 来い。

 あの時よりも簡単でしょう。

 上げた熱が冷える。

 水滴になる。

 ほら。

 もう落ちる。

 しかも一気に。


 ピシャーン! と雷が落ちた。


「うわー!!」

「きゃーっ!」


 次いで、豪雨だ。

 途端に、皆の祈りが叫びに変わった。阿鼻叫喚。

 恵みの雨なんて可愛いモンじゃない。皆が逃げ惑う。私の名を連呼する悲鳴が、豪雨にかき消されている。代わりに燃え盛ろうとしていた炎が、みるみる消えた。

 私を包んでいた熱気が、一気に沈んだ。私はといえば、縄や衣類は焦げたようで嫌な臭いがしているが、どうやら身体は無事みたいだ。焚き木に動物の脂とか仕込まれてたのかな。なんか美味しそうな匂いになってるよ。

 足や皮膚がじんじんしてるから無傷ではなかったようだし、なんなら雨がばちばち当たってスゴい痛いんだけど。しかも焦げたのに縄が(ほど)けないんだけど。どんな縛り方したんだよ。

 もたもたしてたら、耳元で声がした。


「おのれ!」

「ひゃっ?!」


 思わず目をつむっちゃった頭上で、ガキィンと金属音が響いた。といっても鈍い音で、岩がぶつかったような感じだ。

 すぐに目を開けた。

 私を襲ってきたオサの剣を、トサが剣で受け止めていたのだ。

「オサ様! 血迷いましたか!」

「どけ、トサ!」

「なぜ、ミコ様に刃を向けまする?!」

 偉いな、トサ!

 燃やすのには同意してたくせに、斬るのは駄目って瞬時に判断してくれてたとは! おかげで助かった。

 ってか誰か、縄を解いてくれー。

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