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6-1

 けれども、まさかの「その時」は、いきなり翌朝やってきた。せっかく取り持ってくれたチサの進言が、いともあったり、なかったことにされたのだ。

 儀式っていうのの準備、無茶苦茶早いな?! タバナが村に戻ってくるまでは大人しくしてようと思ってたの、バレバレだったってか!


「さ。ミコ様」


 オサの口調はうやうやしいけど、目が冷たく笑ってる。ド派手に着飾ってて、やる気満々だ。私が祈祷した時みたいな、ジャラジャラ首飾り。

 縄でイモムシみたいにぐるんぐるんになってる私を、男の人たちが持ち上げる。せめて縄を解いて、身体を洗うぐらいはしてくれないかなぁ。こういう時って身体を清めるとか、やるんじゃないの?

 まぁ見た目が汚いほうが物の怪っぽいよね。狂ってる感じが演出されてるわ。口元ぐちゃぐちゃだし。

 いつも綺麗にしてて真っ白な装束着て祈祷してた女王様が、汚らしい有り様で皆の前に放り出されたら、一気に威厳がなくなるだろうな……。


 騒ぐのも暴れるのも嫌だ。

 どうせ猿ぐつわで喋れないし。

 こんな男に、もがいて暴れる、みっともない姿なんて晒したくない。かつがれてる状態が、まるで神輿に乗って運ばれてるかのように堂々としていたい。

 仰向けに寝かせられてる格好で運ばれてる私からは空しか見えないけど、せめて頭を真っ直ぐにして、悠然と構えよう。

 段々、人の話し声が近づいてきた。広場に移動してきたみたい。頭をよじったら、社が見えた。いつものベランダには上がらない、上げられない。オサが上がれる場所じゃない。

 代わりに、広場の真ん中に木で組んだベッドが作ってあって、私はそこに寝かされた。寝心地最悪なんだけど。

 これ……火をつける焚き木じゃない?

 私このまま処刑されちゃうんじゃない?


 横を向く。

 ムラの皆さんが私を見ているのが見えた。

 あんまり高くない台だから、目線が同じぐらいだ。皆さん遠巻きにザワザワしてる。フツも見えた。泣きそうな顔で、合掌して私に祈ってるみたい。トワダや、他の女の子たちは、人混みに紛れてるのかな。

「本当に?」

 とか、

「いや、しかし、あのお姿は……」

 ってな会話が聴こえるってことは、私が物の怪に憑かれてるとは信じられない! って思ってくれてる人もいるんだよね。

 この猿ぐつわが解けたら、違うって叫べたら、ちょっとは違うかなぁ。


「静かに!」


 オサが朗々たる声で叫んだ。くっそ無駄に声が良いな、この野郎。説得力のある、カリスマ性のある声だ。

 その声が私の罪状を述べる。

 曰く、以前ムラを飛び出したこと、今回も本来の務めを放棄してムラを飛び出し、ヤマタイを敵国に引き渡そうとしていた、などと。

 めっちゃわめきたい。ヤマタイを陥れようとしてたのは、あんたじゃないの?!

 でも実際には、ひとつも証拠がないんだよね。そうかなと感じる片鱗が、ちょいちょいあっただけで……それも私の思い込みレベルだ。


 逆の立場なら確かに、脱走を試みるミコ様なんて、イヤだろうなぁ。肝心の神託も言わないし、なんか前とは雰囲気違うし?

 信頼関係がないのに仕えるのは、さぞ疲れることだろう。これが部活か何かで私がコーチや先輩なら、オサを退部させるだろうし、オサも、私に疎ましがられてるの感じながらオサやってるの嫌だろうしな。

 あ、駄目だ。私のほうが悪いような気になってきた。す巻きにされて疲れてるからか、思考が停止してるわ。

 考えろ。考えろ。生き延びないと。


 こういう時、電光石火でタバナが現れて助けてくれる展開がお約束なんだろうけど……それを期待しても無駄っぽい。まだ、昨日の今日だし。

 全然、気配を感じない。なんなら、まだナコクに滞在してるのかも知れない。

 ちゃんと無事でいるだろうか。タバナなら、今の状態のナコクと話し合って、同盟組んだりとか何かできる気がする。そうなって欲しくて、あんなこと言ってナコクを離れたんだけど……こっちが、それどころじゃなかったよね。諦めずに説得して、タバナを引き返させるのが正解だったとは。


 参ったな。

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