5-1
「はぁ?!」
と、タバナは声が出ていた。
周りの皆が驚いてたけど、まぁ当然だよね。私がいること、みんな感じてないって言ったもん。タバナも私の姿は見えてないから、今や変な方向に顔を向けてるし。
『何を……! ミコ様!!』
タバナが慌てて思考を飛ばしてきたけど、私は無視した。そんなの、許可なんて求めてないし。私が勝手に行くだけだし。
ちょっと力を込めれば、ぴゅーんと、ひとっ飛びだい。
幽体万歳よ。
今からなら、タバナたちより速く着ける。
「皆、急いでナコクに向かう!」
「タバナ様?!」
突然、馬を走らせはじめたタバナに、戸惑う部下の皆様たち。気配は感じるし想像もできる。いきなり走り出すもんだから、馬が慌てて悲鳴を上げたのが聴こえた。だいぶ離れて、薄れてきたけど。
ごめんね。
皆が、足並み揃えて走り出すには、時間がかかる。ましてや馬は疲れてる。人も疲れてる。おろおろして、タバナ様と何度も呼んでるのも感じる。タバナが、急げミコ様に追いつくのだと説明してるけど、皆、意味が分かってない。
夜通し走ってたのかもな。判断力だって落ちてるだろうね。それでよく刺し違えようなんて思ってたもんだよ。
私には、追いつけない。
タバナも、それが分かるのだろう。悔しそうな、悲しそうな気持ちが感じられた。無茶をしないでくれという心配の念が送られてきてる。
私もタバナに、送り返そう。
『無茶しないで』は、私だって言いたいことだ。
死のうとしてたくせに。ヒタオの元に行こうとしてたくせに。
逝かせるもんか。
ほどなくして見えてきたのは、都かよってぐらい立派な街だ。さっき見えてた湖からの川かな。広くて、ゆったりした川が側にある街だ。平地が広がってるからか山が低いからか、荘厳ささえ感じる。
なんか文明度が、かなり違う……。ヤマタイが縄文時代なら、ナコクは弥生時代か、もう少し進んでないか、ここ? なんつったっけ、古墳時代?
家の数、整備の感じが、ヤマタイより整ってる。空から見てるから、余計に分かる。
家が、一方向を向いて並んでる。それだけで充分、見た目が良い。家と家の間も、土が平らだし草とか刈られてて歩きやすくしてある。ちゃんとした道路だ。
統率の取れてる街だ。ここを管理、統べてるオサに当たる人間は、立派な人っぽい気がする。建物も、ひときわ大きい木造建造物がある。あそこに住んでるに違いない。
歩いてる人たちも見える近さになってきた。穏やかな顔をしてる。どことなく身なりも、ヤマタイより良いように見える。清潔なのかな?
色々なものを抱えて歩いてる。壺とか布の固まりっぽいのとか。なんか牛とかいる? 牛車ってヤツかな。
ちょっと待って。
水不足で飢餓状態で、って話じゃなかった?
おかしいな。
だって水あるじゃんね。川あるし、あんなでっかい湖あったし。森も心なしか、しっとり感あるよ。
街が綺麗って、それだけ余裕あるってことじゃない?
荷物色々持って歩いてるって、物資めっちゃあるじゃん?
そんな無防備に歩いてて奪い合いとかしてないの、すごくない? だって災害の時のスーパーとか、ニュースすごいじゃんね。
私たち、間違った情報を掴まされてたってこと?
もしかしてナコクは、めっちゃ戦争できるクニ?
私は、ひときわ大きな建物に向かって飛んだ。大きなって言うか、広い建物って言ったほうが良いかも知れないけど。高層ビルみたいな、そういう建物じゃない。あっても多分、2階とかしかなさそうな造りに見えるんだけど、ものすごく高くて広いのだ。中で野球できそう。ホームラン打てるわ。
あっ、あれか。
中に奈良の大仏とか入ってんじゃないか? これ。
大仏って何時代?
けど中にいるのは、そんな穏やかな物じゃなさそうだ。
そこに答えがあれば良いな、ぐらいの軽い気持ちだったけど、どうやらアタリだったみたい。近付くと険しい気配が感じられた。ものすごい敵意を感じる。殺されかけたのも納得な殺意。
まだか! って怒鳴り声が聴こえた気がした。人の姿が分かるぐらいには近付いたけど、まだ建物には入ってない。どんなヤツがいるか分かんないし。タバナみたいに、私の気配が分かるぐらいの人はいるかも知れないし。
キヒリみたいな。
中からは、焦りや怒りも感じられる。そうじゃない感情も複数、渦巻いてる。悲しみ。恐れ。でも激昂の感情を撒き散らしている人も、一人じゃない。かたまってる?
複数の怒れる人たちが、一部屋に集合してる。イヤだな、あの部屋には近付きたくないなぁ。でも、あそこがポイントだよね。
あ……。
キヒリの気配……?
まさか。
『来たね』
ゾワリと背中が凍った。




