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3-4

 雨乞いという一大イベントが終わったら、また元の日々だ。あれで水は足りたのか、お呼びはかからず済んでいる。

 ただ、祈祷前と変わったのは、タバナの訪問が増えたことだった。どうやら洞窟でのツウリキと雨乞いの祈祷、続けて成功させたおかげで、オサの私に対する態度が軟化したみたい?

 タバナが言う。

「私はミコ様の、いや、カラナの言葉を、ムラに伝える取り次ぎ役でもあります」

 つまりタバナを私に会わせないと困るのは、オサのほうだってことだ。伝えた言葉を鵜呑みにするのかは別の話だけど、少なくとも出入りはさせないと周囲の目もあるから……ってことらしい。

「占いかぁ。なるほどね」

 うん、なんか卑弥呼って、そんなことする人だって教科書に書いてあった気がするわ。

 とはいえ占いの仕方も分からないし、どんな言葉を出せば良いのやら? 求められているものが分からないけど。

 現代で占いって言ったら、将来のこととか結婚運、金銭運……お祭とかで占うなら、今年は豊作か、みたいな?


「ミコ様は朝夕となく受託なさりました」

 タバナの訪問自体は午後がデフォルトだけど、朝いきなり呼び出されることもあったとか? カラナ、自由だな。

 普段のカラナは、ヒタオたちから受ける朝の沐浴と朝ご飯が済んだら、祭壇に座ってジッとしているんだとか。特に儀式らしきものは何もなく、ただ『降りて』来るのを待つのだとか? 受託つーか、ご神託つーか。

 神憑(かみがか)りってことみたい。もしくは、インスピレーション? 神様の言葉が聴こえる、なんていうのは、なんか胡散臭い。聴こえたら納得できるのかなぁ。お前は本当に神様なのかって疑いそうだ、私なら。


 しかも毎日ではなく、受託があれば伝えるってだけで、法則性はない。まったく受託がないと数日とか平気で空くそうで、それは、そういうもんだと認識されているらしい。

 何かミコ様、めっちゃ楽な暮らしだな。

 毎日、雨乞いレベルの集中しないといけないのかと思ったわ。とはいえ、あまりにも受託がないと、またオサから"役立たず"レッテル貼られて、洞窟に放り込まれるのかも知れないけど。

 雨乞いが終わってから何日も経ったけど、受託とやらは来そうにない。


 タバナの教育は、今も続けてくれている。段々知識が深く広くなってくから、ついて行けない時があるけど。日本史とか嫌いだったもん。

 でも今のところは面白い。自分の生活に直結してるからだね。いざとなったら、私が戦争の指揮を執らなきゃいけないとか言われたら、他人事じゃいられない。

 このヤマタイは、(クニ)として相当大きく、また、大きいがゆえに問題も多いようなのだ。私が住むこのムラだけなら、統制も取れてるし豊かなほうだけど、ちょっと離れると、ムラに馴染まないヤツらが盗賊やってたり、暮らしが貧しかったりと大変なのだとか。

 そんなの統治しろって言われたら、そりゃ逃げたくもなるかもな。


 他国に攻め入られる場合もある。

「ヤマタイだけが国ではありません。周囲にはシナノハラ、ナコク、トバヤナイと各面々がクニを成しており、領土、物資と取り合う(いくさ)を……ミコさ、いや、カラナ……?」

 タバナから説明を受けている時だった。

「あ」

 他国の名前を聞いた途端に、自分の何かが弾けた。カラナの記憶が刺激された。

 脳内に名前が浮かんだのだ。


「キヒリ……」


 不思議な名前だ。絶対、現代で聞いたヤツじゃない。

 カラナの記憶から出てきた名前だ。多分。

 でも、どこの誰なのか、さっぱり分からない。

 私の呟きを聴いたタバナにも心当たりはないらしく、怪訝な顔をしている。

「それは……ご神託で?」

「だとしても、どうしようもないよね」

 思わず苦笑した。こんな言葉ひとつ持ち帰っても、タバナの立場もないんじゃないか。あの嫌味顔に叱られそうだ。

「違うと思う。落ちてきたってより、思い出したって感じだったから。他のクニの名前を聞いて思い出したから、どっか、その辺のヤツじゃないかな」

 私が喋るのに合わせて、タバナが段々眉間にしわを寄せた。一緒に考えこんでくれたのかと思ったら、そうじゃなかった。

「ミコ様たる御方の話しぶりとして、感心できぬ口ぶりですぞ」

 そっち?!

 私は口を尖らせた。

「皆の前では、きちんとやるよ。でもタバナとヒタオにだけは、素でいさせてよ」

 疲れるもん。

 ヒタオは、私を受け入れて甘やかしてくれるもんねーだ。

 タバナがため息をついた。

「有事の際ほど、普段の行ないが現われてしまいます。常日頃よりミコ様たる立ち居振る舞いをなさって頂くことが、ひいてはミコ様のためでもあられるかと」

 はいはい。


「ではタバナ、今しがた(わらわ)の口にした、キヒリなる名を受託とし、オサに伝えるが良い。オサがいかな顔をするか、知った名であるかを見極めて参れ」

「……御意に」

 タバナは何か言いたそうな、不満げな顔をしたけど、もう知らん。これが精一杯です。

 命じた内容は思いつきだったけど、結構いい線ついてるんじゃないかな。もしかしたら「キヒリ」が、カラナが消えたことと関係があるのかも知れないし、それをオサが知っているとなれば、他国の名前を知ってるなんて、きな臭いことありそうだもんね。

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