脱出
これの続きはいつ書くか未定
事前情報を仕入れていた私は、初期リスからの脱出を考えた。理由は色々とある。まあ、大きく2つか。
1つ。荒らしから逃れて、安全圏まで向かうため。
荒らしと呼ばれる人種がいて、奴らはとにかく他人を妨害する。そして大抵はチートを使っているので、戦闘が強い。つまり厄介。
そんな荒らしどもの中には、ここ、初期リスで屯しては、初めてこの世界に来た人や、うっかりここに戻された人を攻撃する者もいる。
この世界で生きていく以上、このような危険地帯に居続ける訳にいかない。
また、生きる上でも道具は必要であるが、道具を作るには何にしても「木材」が必要だ。木材がないと何も始められない。この世界では、そういう仕様になっている。
ところが木材は初期リス付近にはない。荒らしが木を、いや、木が生える地面ごと吹き飛ばしたからだ。「苗木」も落ちていない。
という訳で、道具を作るのに必要な「木材」の入手のため。これが2つ目の理由だ。
早速「F3」で、この世界における私の居場所、「座標」を確かめる。
ふむふむ、x=201で、y=89で、z=-103ね、なるほど。
私が視線を向けている向きは……positive xと……。要するに、東向きだな。
ではこのまま向かってしまおう! 出発じゃ!
地面がないことにはすぐに慣れた。人間、やろうと思えば適応できるものだな。他人事みたいに感心した。
まあ地面がないとは言っても、完全にない訳ではなく、空中にブロックとして点在する感じ。
そして地面の下には大穴が開いて、地下の岩盤がすぐ見える。
所々に溶岩や水が垂れているのが、終末感を感じさせる。
いやぁ、他の並行世界では滅多に見ない絶景ですね(笑)。なにわろてんねん。
さておき、落ちたら無事では済まないので、点在するブロックをジャンプして渡り歩く。
よーし、x=300。いい感じに移動できているぞー。このまま行けるといいなあ、ふんふふん、次はあっちに向かってうぎゃあああ!!
足を滑らせたあぁ!!
あーやめてやめて、あーー!!!
グシャァッ
死んでしまった……。
私はとても悲しみを感じます。チーンという効果音の幻聴まで聞こえました。実に悲しいです。
はい、ただいま。「リスポーン」致しました。新しい私は、もっとうまくやってくれることでしょう。きっと。多分。めいびー。
あ、今度は、別の座標でこの世界に降り立ったようで。「リスポーン地点」を固定していない状態だから、バラバラに降り立つのかな。
x=280の、y=256の、z=90か。今度は「限界高度」ですかっ。
並行世界も含めての仕様で、ブロックを配置できる高さは、1から256の間までと決まっていて、yの座標がそれを示す仕様ですねー。
しかしこれはまた……凄まじいな。「黒曜石」の天井が出来ている……。黒曜石って、掘って壊せるブロックの中でも、1番硬いブロックだよ……。素手で壊すと、250秒かかるんだけど。
しかも、レアなアイテムを使った道具でしか、黒曜石として掘れないし……。素手だと回収できないんだよね。
つまり、下に行きたくても行けない。
っだー、困ったなぁ。これじゃ脱出という目標を達成できないな?
そうだ、あれがあれば安全に降りられる! 黒曜石の天井の隙間から探してみて……。よしよしあったぞ。じゃあ準備はいいな? 深呼吸はした? んじゃ、そいや!
ひゅぅぅーーーーー、ーーーぅうん、ドッボン!
無事に着水、成功! お見事、私!
あー途中危なかったな、空中の「丸石」ブロックにぶつかって死ぬかと思った。
落ちる途中で、何故か一瞬だけ動作が戻されたけど、世界とのラグがあったみたいですねこれ。
でもそれがなかったら、位置を制御できずにぶつかっていたので、取り敢えずよしということで。
この世界では、高い所から落ちるとダメージを負うようになっている。但し例外があって、水や溶岩、蜘蛛の巣に落ちた時だけは「落下ダメージ」なしで降りられる。
溶岩に落ちたら、落下ダメージがなくても、体が焼けちゃうけどね。
何にせよ、水があって助かった。
さあ、溺れる前に出てしまいたい所。ぷは。
水面から顔だけ出し周囲を確認する。
丁度いいブロックは……あった、水流の入り組んだ先の方やね。
ざぶざぶ泳いで「石」ブロックに上がる。東は向こうか。
足場がない、道なき道。落ちれば大怪我、進まねば虐殺。
いやでもここは無法地帯であると、何度も自覚させられる。
そう言えば、この世界はとても便利で、思ったことを文章で送るということが可能だ。が、この「テキストチャット」、便利には便利だけども困ったことに、ここすらも荒らす輩がいる。差別発言で溢れていたり、連投で「ログ」をすぐに流したり。
どんな要素でも無法地帯で、何とも元気で威勢のいい話だ。荒らしにもきっと、いいことでもあったに違いない。昂り過ぎ。
凡そ1時間にも亘る激戦の末に、ぽつぽつ木の生え始める場所まで到達した。念願の木材入手のチャンスである。人類勝利の瞬間である。
ふ、勝った。勝ったーーー!!! ふん、見たか荒らしどもめ、私はチートなし単独で、誰の助けもなく貴様らから逃げおおせたぞ!
ふひー。
では、戯言はこの辺に留めておいて。
どうせ見つからなかったのは偶然だし、その偶然を恰も実力と勘違いしても、自惚れでしかない。自惚れで塗れた人間は、悲惨な目に合うからねえ。
さあああああて。さーて、さてさて!
うおっほん、木を掘るぞ? いいな? 戻らないからな??
よっし、取ったどー、「オークの原木」! やべえ、感動だ。私は今、感激している最中だ。明確に自覚できるぞ。望外の幸せであります。
あ、あと遂に視界の右上で邪魔するテロップが消えた。別の世界も含めて何度も見ているんで、そのテロップは今更要らないです。いいけど。
むっふふ~、次は「E」キーから簡易的な「クラフト」をしませう。今入手した原木を、2×2のクラフト部分に適当に配置する。
おお、おおお、おお!
も、も、も、「木材」だ! 「オークの木材」を入手したぞ!
木材を入手すると同時に、レシピの解禁のテロップが出てくる。「トラップドア」「感圧板」「ボタン」「ハーフブロック」etc……って追いつかんわ、一気に解禁されすぎ。いやぁ嬉しいねほんと。
だが今の奴らはどうでも良い。解禁されたレシピで最も重要なものがある。「作業台」だ。作業台を作ると、クラフトできるようになるアイテムが格段に増える。3×3のクラフトができるようになるのだ。
その次に「棒」。棒がなければ作れないアイテムが幾つかある。まあまずは棒をクラフトしてみようか。えい。
うむ、これで「シャベル」「クワ」「剣」「ツルハシ」「斧」といった道具が揃えられるようになる。「はしご」も追加で解禁されるが、まあおまけみたいなものだ。喫緊ではない。
はい、ツルハシと斧を作りました。よっしゃ、これで勝つる!
次の目標は……木でできたこれら道具を、ワンランク上のものにすること! 具体的には、そう、石製にするとか!