女公爵は勝利を掴む
エルドラドの邪竜で優勝
さて、コンテスト当日。作品を提出し、採点を待つ。
「おお!これは…エルドラドの邪竜!」
「なんと美しい!」
「混沌と闇の象徴!これぞエルドラド!」
「…だそうですよ、ご主人様」
「やめて…やめて…」
「ふふ。ご主人様のおかげで勝利を掴めます。ありがとうございます、ご主人様」
「もうやめて…」
「審査員全てが十点満点を出しました!百点満点です!この後百点満点の方がいなければ、チームエルドラドの勝利が確定します!」
「チームエルドラド…?」
「おや、いけませんでしたか?」
「リュカ…本当に…もうやめて…」
「ふふふ。ご主人様のこのようなお姿、中々見られませんね。嬉しいです」
「リュカ、本音出てる…」
「おや、失礼致しました」
「最後のチーム、九十五点!チームエルドラドの勝利が決まったー!」
わあっと観客が盛り上がった。リュカは涼しい顔で壇上に上がり、優勝トロフィーと優勝商品であるラピスラズリの鏡を受け取る。
「うう…」
「ほら、ご主人様。勝利を掴めたのですから、笑顔笑顔」
「貴方、頭から齧りつかれたいの!?」
「ふふふ。いえいえ」
「リューカー?」
「申し訳ございませんでした」
「もう!」
「さあ、帰りましょうか」
「ええ」
アンジェリクとリュカは献上品を手に入れ屋敷に戻ろうとした…が、馬車に乗る前に不穏な言葉が二人の耳に届いた。
「おい!約束と違うじゃねーか!」
「金を払えば優勝させてくれるって話だからこっちも色を付けて払ったんだぞ!」
「なんのお話でしょうか?我々にはわからないのですが…」
「審査員のチェンを出せ!あいつ、裏切りやがって!」
「あー…またチェンなの…」
「どうしましょう、ご主人様」
「関わりたくないけれど…そうもいかないわよね…」
リュカが審査員席に詰め寄る三人組に話を聞くと、審査員の一人であるチェンに金を払えば優勝させてやると嘯かれていたとわかった。このチェンという男は、その名を陳 皓然という。実はこの男、裏も表も関係なく色々な場所で騒動を巻き起こすトラブルメイカーである。東国人風の風貌だが、その実我がターブルロンドで大きな『ファミリー』を抱えた『貴族』の一人である。子爵なので、まあそれなりに顔が効くことも多く、揉み消して回っているので大した問題にはなっていないが、皇女殿下が「あの人本当に大丈夫かしら?」と心配していたので、放っておく訳にもいかない。
「え?僕?やだなぁ、なんの話かわからないなぁ」
「そこまでよ、チェン。話は聞かせて貰ったわ」
「げ、エルドラド!」
「げ、とはなんです。ご主人様に失礼ですよ」
「ちっ…わかったわかった、今回は僕が悪かったよ。ほら、円卓金貨あげるから君達はもう黙って!」
「え、円卓金貨!?い、いいのか?いいんだよな!はは、悪い悪い、俺たちの勘違いだったぜ!」
「…てことだから、ね?」
「リュカ。チェーンウィップ」
「はい、ご主人様」
「ま、待ってよ、ほら、本当に彼らに勝たせる気だったんだよ?でも、ほら、君達が出場する見たいだったからどうせ皇女殿下絡みだと思って、手を引いたんだよ」
「ならその時にお金を返して差し上げなさいな。そもそも買収ごっこなんてしないの!お金なら困ってないでしょうが!」
リュカがチェーンウィップでチェンに当たるスレスレの場所を叩く。
「だ、だって楽しそうなコンテストだったからつい…」
「何がどう楽しそうなのよ。…次また騒動を起こしたらリュカのチェーンウィップでお仕置きだからね」
「天使様のお仕置きとかマジ勘弁!」
「なら大人しくしておいて下さい」
「はぁーい。ちぇっ」
何はともあれ、トラブルも解決し、今度こそアンジェリクはリュカと屋敷に帰る。
「リュカ。ご苦労」
「ありがとうございます、ご主人様」
「そうそう。そういえばこの辺に美味しいカフェがあるそうだから、一緒に寄って行きましょう?」
「ええ、構いませんよ」
「本当に?嬉しいわ!」
…その前に寄り道を楽しみながら。カフェの窓ガラスに映るアンジェリクの笑顔は、それこそ天使のような微笑みだったという。
仲良し主従




