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女公爵は屋敷を破壊する

男爵は被害者?

瞬間、エピック男爵が姿を変える。混沌が渦巻き、夢魔が姿を現した。それは悍ましく、卑しく、魔と呼ぶに相応しい姿をしていた。何も知らないのであろう使用人達は騒然とする。


「ご主人様」


「わかったわ。ちょっと失礼。もしかしたら屋敷が壊れてしまうかもしれないけれど、ごめんあそばせ」


瞬間、広々とした部屋が一気に手狭になる。…しかしそれは一瞬のこと、すぐに天井が突き破られた。混沌が渦巻き、邪竜が姿を現した。それは悍ましくも神々しく、闇が具現化したような姿をしていた。宙を舞う漆黒。エルドラドの邪竜だ。使用人達は騒ぐのをやめ、ただアンジェリクを見上げて惚けていた。


「さすがご主人様、お美しい…」


いつのまにか天使の姿をとって子供たちと使用人達に保護魔法を掛けていたリュカが、アンジェリクの姿にうっとりしている。


「チャーム!…くっ…邪竜様と天使様には我がチャームは効きませんか」


「ええ、効かないわ」


「ご主人様の美しさの前には、チャームなどと言った小細工はまったくの無駄ですね」


「リュカ…やめて…本当にやめて…」


「ふふふ」


「…ううん!えー、こほん。とにかく、諦めて投降しなさいな、エピック男爵。今なら子供たちも無事だし、許されるわよ?」


「…無事などと。あの薬を盛ったのです、回復には何年、何十年と掛かるでしょう」


「リュカがいれば問題ないわ」


「…いいえ。いいえダメなのです。天使の力すら及ばないのです。あれは『神の粉』なのですから」


「…神の粉?」


「それはなんです?」


「とある方が私にくださった、魔法の粉ですよ。私も、あれを少量摂取したことで、自分の中の欲望に気付きこうして行動に移せたのです」


「とある方?その人に何をされたの?」


「彼の方の名前は言えません。彼の方は、エルドラド公爵様から手紙が届いたその日に突然来訪され、私に神の粉を盛りました。そして、私の知る『子供』の中でも美しく可愛らしいエルドラド公爵様とその執事殿を手に入れられるように、私に神の粉をくださったのです」


「あらまぁ…つまり貴方も元は被害者なのね?」


「被害者などと。私は親から子を誘拐した犯罪者です」


「自覚があるなら結構。寝ていなさい」


アンジェリクがエピック男爵を踏み潰す。リュカが一応の保護魔法を掛けたのでぎりぎり生きてはいるが、普通なら夢魔といえど即死だった。


「リュカ、ありがとう」


「はい、ご主人様。とりあえず、子供たちを治療しますね」


「お願いするわ」


「…お嬢さん、ちょっとごめんね」


リュカが女の子の頭に手を翳す。しかし、いくらリュカの手から光が降り注いでも、女の子が正気に戻ることはなかった。

神の粉とは

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