女公爵は闇オークションのトップを跪かせる
チェンは何の妖怪でしょう?
「始める?何を…」
「チェン様!今回はご協力ありがとうございます!」
チェンに聞こうとしたその時、ドアが突然開き、上等な服を着た若い男性が現れる。
「いやいや、ここが潰されると困る人がたくさんいるからね。人助けだよ人助け!」
「貴方は…?」
「これはこれはエルドラド公爵様。私、グランディネファミリーのジェラーニオ・グランディネと申します。以後お見知り置きを」
「…また外国のマフィアなの」
「また?」
「こちらの話よ」
「おや、そうですか」
「…目的は?」
「なに、ここを潰されないための自衛ですよ。後はまあ、邪竜や天使なんて、高く売れそうだなぁと」
「…悪趣味ね」
「なんとでも」
話しながらアンジェリクは、チェンのネックレスの光をちらりと見る。それは、アンジェリクが持っているネックレスと同じものだった。
「わかっているのかしら?私はこの国の公爵。執事も伯爵家の三男よ?」
「もちろん知っていますとも。情報屋からの確かな情報ですから」
「情報屋さんねぇ…」
アルファの顔が浮かぶが彼女は後回しだ。
「つまり、私達がターブルロンドの公爵と伯爵家の三男だと知っていて狼藉を働いたのね?」
「ええ。今更なにを?」
「チェンは何故、何をどう協力したのかしら?」
「チェン様はちょっと脅させていただきましてね、まあ何の件でとは言えませんが。チェン様にはエルドラド公爵様と執事殿の種族の情報と、取り押さえるのに必要な道具を取り寄せていただきまして」
「…それだけなのね?人身売買の件には関わっておらず、今回の件も脅されて仕方なく協力しただけ。特に手を出してきた訳ではなく、情報を渡すことと道具の提供をしただけ、と」
「ええ。…化け物同士、今更心配でも?」
「ふふ。ええ、そうよ。化け物同士だもの。…チェン!今よ!」
「はいはーい」
瞬間、広々とした部屋が一気に手狭になる。白い光が部屋を満たし、白い獅子が姿を現した。それは神々しく、清廉で美しく、まさに瑞獣と呼ぶに相応しい姿をしていた。白沢だ。
「な!?チェン様、裏切る気ですか!」
「それはもちろん!だって最初からそのつもりだからね!」
「!?」
「無駄話はいいからやっちゃいなさい!」
「人使い荒いなぁ!」
白沢が黒服達を一瞬にしてのした。そして人の姿に戻るとアンジェリクとリュカを解放する。
「…こ、この裏切り者!あの件がどうなってもいいのか!」
「今ここで君を捕らえて、この映像石に録画した情報で追い詰めれば問題ないからね、別にいいよ」
ぷるぷると怒りで震えるジェラーニオ。しかし圧倒的に不利だと悟ったのか悪足掻きはしないようだ。
「跪きなさい」
「はい」
「…貴方達は終わりよ」
「…はい」
「リュカ、治安部隊に連絡」
「はい」
こうして人身売買の行われる闇オークションは潰された。ベアトリス皇女は、人身売買を行う組織を潰したとの報告をアンジェリクから聞くと、人身売買という言葉に胸を痛めるように辛そうな顔をした後、アンジェリクが売られた人達を全て金の力で解放したとの追加の報告に安心したようにふわりと笑うのだった。
「チェン、貴方もうちょっとスマートに解決できなかったの?」
「だってこっちの方が楽しそうだったからさぁ」
「貴方という方は…」
「まあ、今回は助かったわ。ありがとう」
「エルドラドからお礼を言われるとか雪でも降るの?」
「ご主人様に失礼ですよ。口を慎んでください」
「はいはーい」
ジェラーニオ他ファミリー一同は公爵に手を出した罪で極刑。闇オークションは、なんとチェンのファミリーが人身売買は無しで継ぐ形となった。
「いやー、これからどんどん儲かりそう!」
「そういえば脅されてた件ってなんだったの?」
「さあ?まあ、皇女殿下に迷惑をかける話ではないよ」
「それならばいいのですが…」
「あと、次からは一言相談してね?」
「次がないことを祈るよー」
「確かにそれはそうね」
そんなこんなで今回も無事にメアリー人形を献上出来たアンジェリクだった。
正解は白沢でした!




