3.ハウスクリエイト!
ダンジョンを大まかに造り終えて、後はテストプレイのみの状態になったので後ろを振り向くと……
なんということでしょう。
目に入るはずのほとんどの木が伐採されて、見事な更地になっているではありませんか!
[……見事な更地になっておりますね]
「凄い勢いでした……」
「止めなかったの?」
「気づいたらこの状態だったもので……申し訳ありません」
アドバイザーさんの唖然とした呟きに、イリスがちょっと呆れを滲ませた表情で言った。
ルヴィニも同意見なのか、八本ある脚の内二本を使って器用に「やれやれ」というジェスチャーをしてみせた。
「全体の何割くらい森、残ってる……?」
[その点は大丈夫です。六割ほど残っております]
「だったら問題ないか」
いやこの短時間で森を四割伐採したっていうのも凄いけども。
ぽかーんと更地を見つめていると、ちょっとバツの悪そうな顔をしたドラゴン三兄弟が近寄ってきた。
うん、どうやらやり過ぎたとは気づいているらしい。
「……済まない、調子に乗りすぎた……」
「夢中になっちゃった……ごめんなさい」
「……すいません。俺もつい……」
「いやいや良いんだよ!
畑も作る予定だったから、むしろ整地する手間が省けて良かったよ。
ありがとうね、三人とも」
しょんぼりしてしまった三人の頭を撫でてそう言ってあげると、きょとんとした顔をした後に嬉しそうに顔をほころばせた。
うん、しょんぼり顔も可愛いけど、やっぱり笑顔が一番ですな。
[それでは早速なのですが、ダンジョンが出来上がったので誰か二人試していただけますか?]
「それじゃあ、俺が行こう」
「私もー!」
アドバイザーさんのその一言でフォスとフラムの二人が真っ先に挙手した。
アストはそんなやる気満々の二人に遠慮したのか、「俺は残りの二人と一緒に母上の護衛をします」と辞退した。
……でもやっぱり自分も一緒に行きたかったのだろう。
意気揚々とダンジョンの入り口である岩山の麓へ飛び去って行く二人を見送るアストの背中がちょっぴり寂しそうだ。
「次はアストにも頼むね」
「!……はいっ」
はい可愛い。
頬っぺたをピンク色に染めて嬉しそうにはにかんだアストの頭を撫でる。
……それを羨ましそうに見ていたルヴィニとイリスも順番に頭を撫でた。
うん。二匹とも嬉しそうにしてくれてめちゃくちゃ可愛かったです。
ひとしきり三匹を愛でた後、家を建てるべく山積みになった丸太と向かい合う。
どうやら落ちていた岩や鉱石なども拾い集めて一纏めにしてくれていたらしい。ありがたい。
ええと、とりあえず《建築》ってスキルを使えば家が建築できるんだろうか。
「《建築》」
おお、昔お父さんに一度だけ見せてもらった建築ソフトみたいな画面が出てきた。
よし、住みやすい家を作るぞー!
とりあえず一人一部屋ずつあった方が良いかな?プライバシーって大事だろうし。
それと物置……あ、トイレとかお風呂とかの水回りも忘れずに。
あとはキッチンと、食べ物を保存するための氷室と……うん、これくらいかな。足りなかったら増築すればいいし。
物置に物が入らなくなった時用に倉庫みたいな小屋も建てておこう。
建築する建物の間取りを決めて、『建築開始』と書かれたボタンをタップする。
すると地面からにょこにょこと……何だこれ。地面から推定40㎝くらいの可愛らしい小人が地面から生えてきた。ざっと数えて百人ほど。
その小人は私を見つけるとびし!っと敬礼して、山になっている丸太と鉱石の山にわらわらと群がっていった。
……うわぁ。あっという間に丸太が建材になっていく……しかも鉱石の山から鉄を見つけて、何をどうしているのか分からないけど釘とか造り出してる……
そうしてぽかーんとしている間にも小人さんによる建築は順調に進み、数十分後には家も倉庫も半分くらいが出来上がっていた。
「……アドバイザーさん。何です?アレ」
[大地の妖精ですね]
「ようせい」
[とても良い土壌でございましたのでいるとは思っておりましたが、予想以上に多かったですね]
そっかぁ妖精さんかぁ……
建築系統は妖精さんが担当してくれるんだね。
うん、元の世界での常識は捨てよう。
……この世界の常識でも異常だと思うけどね!
と現実逃避をしている間に全て出来上がったのか、妖精さん達がちょこちょこと私の足元に集まってきていた。
「え、えっと……ありがとう。助かったよ」
私がそう言うと、妖精さん達は出てきた時と同じようにびし!と敬礼して、ももももも、っと地面に埋もれていった。
……ええと。とりあえずお疲れさまでした……?
今度お礼に何か渡すべきかな?
妖精さんは何が好きなんだろう……後でアドバイザーさんに聞いてみよう。