1.ドラゴンクリエイト!
[まずはアイテムボックスをご確認ください。
《収納箱》と口に出していただければ確認が可能でございます]
「あ、《収納箱》」
アドバイザーさんに指示されたとおりに声に出すと、地図のウィンドウが消えて他のウィンドウが出てきた。
どうやらアイテムボックスの中に入っている物の確認画面のようだ。
これ、今持ってる鞄も仕舞うことができるのかな?
手ぶらなのに物を大量に運べるって便利だな。
いかんいかん、脱線した。
《収納箱》の中身を確認すると、《創造石》と記載されたアイテムがいくつかあった。
しかも数種類あるらしい。それぞれ三つずつアイテムボックスの中に入っていた。
「《創造石》?」
[無から生命を創造するために必要となるアイテムです。
こちらの中から二種類、ないしは三種類を選び、《生命創造》を行使することで生命を創造できます]
「そんなとんでもねぇ代物が何で私のアイテムボックスに?!」
[創造神エリアス様からの贈り物の一部でございます。
召喚元からあまり距離を離すことができなかったお詫びにと]
「創造神様ー!大盤振る舞いが過ぎますー!」
こんなとんでもねぇ贈り物の数々、十数年生きただけの小娘には荷が重すぎますわー!
[それでは早速ドラゴンを作成いたしましょう!]
「むっちゃ生き生きしてますねアドバイザーさん!
っていうか百歩譲ってドラゴンを造るとして、何でドラゴン?!」
[リナ様の世界では"飛行機"なる空を飛ぶ乗り物があるようですが、この世界にはございませんので]
せやな。
剣と魔法の世界に飛行機あったら確実に二度見するわ。
だったらドラゴンのがよっぽど目立たんわ。
納得したところで、造りましょうかね、ドラゴン。
とはいえ、二種類から三種類ねぇ……
まずドラゴンを造らなきゃなんだから《竜の創造石》は必須でしょ?あとは……属性とか?それじゃあ二つ目は《聖の創造石》にしよう。
三つ目……こっちは無くても大丈夫だけど、使えるんだったら使ってみようかな……?
……、……。……《王の創造石》にしよう。
竜王って響き、素敵じゃない?私だけ?そっかー。
《竜の創造石》と《聖の創造石》、そして《王の創造石》をアイテムボックスから取り出した。
外見は透明度の高いクリスタルのようだった。そのクリスタルの中に、竜の鱗らしきものや白くて温かい光などといった、それぞれの象徴となるようなものが見える。
へぇ、綺麗だなぁ……っとと、今は見惚れてる場合じゃないっ。
三つの創造石を掌の上にのせて、《生命創造》を発動させる。
すると三つの創造石が眩い光を放った。
その光に思わず目を瞑って顔を逸らす。
どこぞの大佐ではないが「目が、目がぁー!」と叫びたくなる。
しばらくすると目蓋越しに光がおさまったのが分かったので、恐る恐る目を開く。
目の前には、光を反射して虹色に見える白い鱗を持った巨大なドラゴンが、天色の瞳で私を見下ろしていた。
お、おおう……想像していたより遥かにデカい。
あまりのデカさにぽかんと呆けていると、ドラゴンはその大きな身体を器用に屈ませて甘えるように頭部を私の身体に擦り付け始めた。
しかもクルル、とこれまた甘えるような鳴き声付きで。
……か、可愛いじゃないか……っ!
私今まで爬虫類は好きでも嫌いでもなかったけど、これは好きにならざるを得ない……!
[成功ですね。それじゃあ名前を付けましょうか]
はっ!そうだった。ドラゴンを愛でるのは後にしよう。
それにしても名前、名前かぁ……
私、ネーミングセンスないって言われてんだよなぁ……
良い名前つけてあげたいんだけど……むむむ。
……よしっ!
「フォス。君の名前はフォスだ!」
ちなみにギリシャ語で「光」って意味だよ!
《聖の創造石》が白い温かい光を放ってたからって理由は安直すぎますかね?
……なんでギリシャ語知ってるんだって?
一時期例の病気を患ってたんだよ、言わせんな恥ずかしい。
ドラゴン……フォスも、付けられた名前を気に入ったのか、嬉しそうに鳴き声を上げた。
[それでは移動いたしましょう。長居は無用です]
「分かりました。……フォス、連れてってほしいところがあるんだけど、連れてってくれる?」
フォスは私の言葉に頷くと私を前足で優しく掴んで……前足で掴んだ?
現在の状況。
フォスに片手で掴まれてるなう。
……めっちゃ足がぷらんぷらんしてる……
というかものすごーくお腹が圧迫されて苦しいでござる。
[わたくしが目的地までナビゲーション致します。
それでは参りましょうか]
「え、ちょ、このまま……うにゃあああああああああ?!」
テイクオフしおった!
あの状態のままテイクオフしおったぞ?!
めっちゃ不安定だし風が強い……って、あれ?風感じない、何で?
[あ、ドラゴンの結界が張られているので風の心配は無用ですよ。
彼を創造した親である貴女をこのドラゴンが傷つけるようなマネをするはずがないじゃないですか]
あ、そーなん……?そうなのかー……
そしたら背中の方に乗っけてほしかったなぁ……
うん、まぁ……離陸しちゃったのはしょうがないから、落ちないように大人しくしとこう……