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10.皆の要望


 お米騒動から一か月とちょっとが過ぎました。

 お米のおかげで食へのストレスは解消できた。

 うん、異世界ライフも割と順調なんじゃないだろうか……


「あの、お母様。少々ご相談があるのですが……」


 いつもはエニュの羊毛でダメにされている子筆頭のイリスが、おずおずと話しかけながら私の側にやってきた。

 ルヴィニも私に何か用事があるらしく、ぴっ、と前脚の一本を挙げている。


「どうしたの?何か悩み事?」

「はい。その……染料になりそうなものはないでしょうか。

 どうしても私達の糸や、エニュの毛だと白一色になってしまうので……」


 あー……そういえばそうだね。

 今まで全然不便を感じてなかったから気づかなかった。

 うん、そうだよね。服一つ作るにしても色があるのとないのとでモチベーション違うよねぇ……

 っていうか全員白ずくめって、見る人によってはちょっと怖いかも。


「そうだねぇ……染料になりそうなものかぁ。草木染めとかは……」

「一応試したんですけれど、この辺に自生している草花だと綺麗な色が出なくって……」

「そっかぁ……」


 うーん……ダンジョンでも染料になりそうなものはドロップしてないからなぁ。

 アイちゃんと一回相談して、人間の里で取引できそうなら取引してもらう方針になるかな?

 とりあえず後でアイちゃんとアドさんと一緒に相談しよう。


「おっかん……」

「なぁにー?……ああ、うん。分かったよ。後で新調してあげるね」

「それもあっどん、ちょっと相談があっど」

「相談?」

「……おいん力でも壊れん農具が欲しか……」


 ああうん。そうだよねぇ……

 ちゃんと力加減をしてるはずなのに必ず一本は鍬が犠牲になってるもんね。

 最初はその内力加減ができるようになるはずって生温かく見守ってたフォスが、最近はちょっと圧をかけてきてるし。

 うーん……これもアドさんと相談しようかな。


 ……というか、私の不満はなくなったけど、他の子達の不満は解消できてないよね?

 ちょっと面談して何が欲しいか調べてみようかな……?


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 はい。というわけで調べてきました。


 まずはルヴィニとイリス。

 こちらは朝一で聞いた通り布を染めることができるもの。

 綺麗に色が出てくれる植物の種でもいいらしい。

 確かにこっちで育てられるなら育てて増やしたいよね。

 あと、できれば最近の服の流行みたいなものが知りたいとのこと。

 写真……は、あるわけないか。

 本当は自分で見に行った方が参考になると思うけど、騒ぎになっちゃうかもしれないからねぇ……

 人里に降りるメンツの説明力に期待しておこう。


 次にソル。

 こっちも朝一に相談された通り、自分が使っても壊れない農具。

 思い切り農作業ができないとのことで、ちょっとフラストレーションがたまっているらしい。

 趣味を思い切りやれないのはちょっと可愛そうなので早めに欲しいところだ。

 ……鉱物系をドロップする魔物っていたっけな?

 ちょっと《魔物図鑑モンスター・レコード》で調べてみよう。

 いたら物凄く助かるんだけどなっ。

 ……いなかった。

 いや、正確には銀鉱石や金鉱石といったアクセサリーに加工できそうなものをドロップする魔物はいたけど、ソルの力に耐えきれそうな鉱石のことごとくがドロップされないものらしかった。

 鉱物系と親和性が高そうなゴーレム系ですら落とさないとか……

 期待していただけにかなりガックリした。


 そんでもってドラゴン三兄妹。

 こちらは今の状態で全く不満はないとのこと。

 曰く、私と|思い切り体を動かせる場所ダンジョンさえあればノープロブレムなんだとか。

 ……うん、嬉しいけどちょっと複雑。


 エニュは……お昼寝できればそれでいいらしい。

 そういえばこの子、基本的に寝てばっかりだな。

 起きててもあんまりしゃべらないし。

 それでいいのか、君は。


 そしてアイトリア。

 ……物凄い剣幕でアクセサリーや魔道具のたぐいを強請ねだられた。

 どうやら町で商人ギルドに加入した上で、私の造ったものを売買したいらしい。

 ……うん、まあ……その内ね?その内。


 ついでにアドさんは私と美味しいご飯があればそれでいいと言ってた。

 うん。知ってた。

 腹ペコ属性だもんね、アドさん。

 量を食べる割に体形全然変わってないけどね。

 ……羨ましい。


「とりあえず染色に必要そうなものがあらへんか、里の人に聞いとくわ。

 あとややこしいのはソルおにいのやなあ……

 ソルおにいの力で壊れへん金属ってあったっけ」

「……彼の力で壊れない金属ということですと、やはり魔法金属ミスリル以上のものになりますね。

 手に入れようと思うとなかなかの高難度かと」

「あー……やっぱしかぁ……」


 やっぱり希少金属の類になっちゃうかぁ。

 一度総鉄製の鍬を作ったけど、三回耕したあたりで曲がっちゃったからな……


「……まあ一応そないな金属が採れそうなとこに心当たりあらへんか聞いとくわ」

「うん、ありがとうね」

「へへー。報酬はオカン手作りのアクセサリーと魔道具な!」

「あ、あはは……うん、まあ頑張るよ」


 キラキラと目を輝かせて成功した後のご褒美を強請るアイちゃんに、曖昧に笑って頷いておいた。

 うん、まあ期待されるのは嬉しいからそれなりに量を作っとこうかな。

 フォス達が持ち帰ってきたドロップ品の中に結構な数宝石が混じっていたし。

 でもぶっちゃけ素人の手遊びだから、デザイン性とかは期待しないように。


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