プロローグ
初めましての方は初めまして。
そうでない方は本作もお読みいただきありがとうございます。
更新頻度に関しましては現在連載している【元社畜さん、異世界で何します?】を優先して更新していく予定でございます。
見切り発車な上にかなりの亀更新になるかと思われますが、お楽しみいただけますと幸いです。
私の名前は香坂璃那。
それなりに学校生活を面白おかしく過ごしていた女子高校生だった。
……うん。だったんだ。過去形。
現在の私の状況。
広大な草原のド真ん中で立ち尽くしてるなう。
そう、なう。nowである。
ついでにingでもある。現在進行形。
学校から帰宅している途中で何やら激しい光に包まれたかと思ったら、この草原で一人寂しくポツンと立っていたのだ。
……この状況。最近凄く、ものすごーくどこかで見たことが……というか、読んだ覚えがある。
最近巷で流行っている異世界転生とか転移とかのラノベな展開じゃね?これ。
「……まっさかぁー!まっっっっさかぁーーーーー!」
ありえないっしょー!
私勇者とか主人公とかって柄じゃないですしおすし。
「だからステータスオープンとか言っちゃってもステータスなんて出るはずないよねー!
さぁてスマホで現在地特定してさっさと帰ろ……う……」
ヴン、と音を立てて目の前にゲーム画面でお馴染みのステータスさんが現れた。
思いっきり自分のほっぺたを引っ叩く。めちゃくちゃ痛かった。
現実は時として無常である。畜生め。
「……嘘だろマジかよ……」
開いた口が塞がらない。
現実は小説より奇なりとは言うがこれはない。
……うん、まぁ否定してても始まらないし、一応ステータスの確認だけしておくか……
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名 前:香坂璃那
種 族:人間
性 別:女性
年 齢:17
称 号:〔巻き込まれた異世界人〕〔創造者〕
【スキル】
◇戦闘スキル
なし
◇魔法スキル
《属性付与魔法》《効果付与魔法》
◇生産スキル
※全て取得済みのため割愛します
◇その他スキル
《アドバイザー》《鑑定》《アイテムボックス》
【ギフト】
《創造神の腕 ☆10》
【加護】
創造神エイリスの加護
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……おい。
おい!何だこのステータス!
生産スキル「全て取得済みのため割愛」ってどういうことだよ!
魔法があるってことはあれだろ?剣と魔法の世界ってことでFAだろ?ファイナルアンサーだろ?!そんな殺伐としてるであろう世界で戦闘スキル無しってお前生きてけるかアホ!しかも取得してる魔法スキル非戦闘系だし!
あとギフトって何?!☆10って何?!面倒な匂いがプンプンするんですけど?!下手に町に行けねぇ!
しかも称号どういうこと?!〔創造者〕は何か異様なギフトのせいだってのは分かるけど〔巻き込まれた異世界人〕って?!他の被召喚者誰だよ!ってか召喚者どこだよぶん殴る!
ぜはーっ。ぜはーっ。
……声には出してないけれどものすごく疲れた。精神的に。
……本当にどうしろと。
途方に暮れてその場に膝をつく。
私、まだ死にたくないんですけどぉ……具体的に言うと格好良い旦那を捕まえて子供と孫に囲まれて布団の上で老衰するまで死にたくない。
……でも今の状態だと確実に死ぬよね、これ。モンスターの格好の餌ですわ。
本当どうしよう……
[それでございましたらわたくしにお任せを]
「……は?」
今どっから声がしてきた?
声が降ってきた方を見ると、そこには出しっ放しのステータス画面があった。
いつの間にか文字が消えて、受話器から音が漏れているような表示が映し出されている。
[申し遅れました。わたくしは《アドバイザー》。
どこぞの傲慢極まりない悪逆国家が行った勇者召喚の儀に巻き込まれた貴女を導くために、創造神エリアス様より作り出されたスキルでございます]
「今ものすんごいワードが聞こえてきたんだけど?!何『傲慢極まりない悪逆国家』って!」
[そのままの通りです。民からの税の搾取は当たり前、人身売買人体実験お手の物。
そして貴族や王族といった裕福な層はその甘い汁を啜って贅沢三昧です。
勇者召喚も魔王討伐と称した領土拡大のための駒確保のための召喚でしたし。
創造神様からの又聞きですが、勇者の証とか称した奴隷の腕輪なんかもガッツリ用意済みのようでしたよ?]
「う、うわあああああああああああ!」
ぶっちゃけられた真実に思わず叫び声を上げてしまう。
ブラックどころじゃねえ!ダークネス国家じゃねーか!
転移した場所が召喚した暫定宮廷魔法使いと王族がいないところでよかった!
[しかも勇者召喚の儀に使用された術式なのですが、テキトーにも程がある穴だらけの術式だったものですから……
危うく世界同士がぶつかり合ってどちらの世界も消滅するところでした……
創造神様が何とかしてくださって事なきを得ましたが]
「大惨事じゃねーか!創造神様ありがとう!無神論者だったけど今日から信仰するわ!」
[そう言ってくださると創造神様もお喜びになられます。
因みに貴女様がここにいる理由ですが、世界の衝突を止めることができたものの、転移自体は止められず……
せめて転移する場所を変更させなくては、と動いた結果でございます。
しかし、無理矢理に力を行使したためか、貴女以外は全員肉体が消失し、亡くなられてしまいました……
そんな状況の中で何故貴女様だけが五体満足な状態で転移できたかは謎ですが……]
お、おおう……酷えなこりゃ。大惨事だ。
本当に何で生きてられてるんだ、私……運が良かったのかな?
……残酷なことだけれど、私以外にこの世界に転移した人全員が死んでいて良かった。
生きてそのダークネス国家に転移してたら、社畜もびっくりな環境で死ぬまで戦わされるところだったんだろうし……それよりかはマシだろう。
……見も知らぬ転移者さん達。せめて安らかにお眠りください。
合掌。
……、……。……。
よし、黙とう終わり。
「ええと、《アドバイザー》だったっけ。
私は香坂璃那。璃那でいいです。状況説明してくれてありがとう」
[いえいえ、これが仕事でございますので]
「まだ質問したいこと幾つかあるんだけど、いい?」
[勿論でございます]
よし、こっからは怒涛の質問タイムだ。
「単刀直入に聞くと、私は地球に帰れる?」
[……残念ながら]
「うん、だと思った。ごめん、変なこと聞いたわ」
[いえ、帰るべき場所があるならば帰りたいと思うのは人の常ですから]
《アドバイザー》さん良い人だなぁ。スキルだけど。
帰る方法があったとしても、また世界二つがぶつかり合って消滅する危険があるかもしれないしね。
そんなことになったら二つの世界の住民は勿論、私も消滅するだろうし。
お父さんお母さん申し訳ない。
不肖の娘は世界のために異世界に骨を埋めます。
旦那と孫の顔を見せられなくてごめんよ!
……出来るかも分かんないけどね!
「ええと、それじゃあ次の質問。ここはどんなところ?」
[ここはリナ様にとっての異世界。名前を〔エーギトゥムナ〕でございます。
〔イドゥアハ大陸〕の〔ヘーベガンド帝国〕です。
ついでに勇者召喚の儀を行ったのがこの国家です]
「オッケーここから離れようそうしよう。今、すぐに!」
[わたくしからもそれを激しく推奨させていただきます]
真顔で逃亡宣言をしたら物凄く重々しい声で同意された。
多分顔があるなら真顔だろう。
「どこへ向かえば大丈夫かな」
[そのことなのですが……]
《アドバイザー》さんの言葉と同時に新しいウィンドウが出現する。
描かれている絵の内容からして地図のようだ。
地形に色分けがされていることから、これがそれぞれの国家が治めているという区分だろう。
[今リナ様のいる場所がこちらです]
その中でも真っ黒に塗りつぶされている区画の、北端にあたるところが赤く点滅し始めた。
っていうか地図上でも真っ黒なんかこの国は……
[そして、わたくしがリナ様に提示させていただく場所はこちらです]
ぴこん!と音を立てて今度は黒の区画から国を二つまたいだ位置している、白く表示されている区画に青い光が灯った。
「そこはどんなところ?」
[こちらは〔未踏の大地〕と呼ばれる空白地帯でございます。
非常に切り立った山脈に囲まれており、人どころか魔物すら立ち入ることができない環境故、その名がつけられております。
動物や魔物に類するものもおりませんため、戦闘スキルをお持ちでないリナ様でも安心することができるかと]
「……私、それ辿り着けそうにないように思うんだけど。
っていうかたどり着けたとしていろいろ問題がありそうなんだけど」
確かにそこに行けば万一この国の奴らに気取られても大丈夫だろうけどさ。
魔物はおろか動物すらいないって、本当にそれ住むのに適してる?
衣食住の保証ってかなり大事よ?
[大丈夫でございます。
〔未踏の大地〕へ行く手段はリナ様ご自身が造ることが可能でございますので。
〔未踏の大地〕へ着いた後に関しましても考えがございますのでご安心を]
「……移動手段を私が造れる?どういうこと?」
[リナ様はありとあらゆるものを造ることができるギフトを創造神様より贈られております]
「ふむふむ」
確かにさっきステータス画面に書いてあったな、あからさまに他人にバレると面倒そうなもんが。
[ですので、移動する手段が無いのなら造ってしまえばよいのです。
造りましょう、リナ様によるリナ様の為のリナ様のドラゴンを!]
「待って?」
何で生き物を造ろうという発想になった?!