入学式7
校舎内は普通科よりも最新の設備が整い、充実していた。1年生の教室は1階にあった。教室は、黒板に机、椅子とごく普通なものであったが、それもまたとても新しいものだった。
生徒が番号順に席につく。もちろん、私の前は雛だ。そして、遠山翔は私の斜め後ろの席だった。
教室のドアがガラッと開いた。スラッとした女性が入ってくる。教卓の前に立つと彼女は言った。
「1年A組の担任をさせていただきます、鈴宮明菜と申します。1年間よろしくお願いします。」
「それでは、さっそくですが、学校に関する説明をします。では、まず教科書を配ります。」
配られる教科書は数学や社会など一般的な教科のものだ。しかし、芸術系の科目のものはない。それは特別科には芸術系の科目をするカリキュラムが組まれていないからだ。なぜなら、その余裕がないからだ。ここでは、その分を魔法の授業に充てている。魔法の授業は授業数こそ少ないが、ここでは1番大切な教科といってもいい。
主に、魔法の授業は理論と実践に分かれており、授業数は実践の方が多い。理論がわかっていても、実践できなければ、意味がないからだ。そして、魔法理論の教科書はない。外部に情報が漏れる可能性があるためだ。理論に関する情報は学校が支給するタブレット端末に入っている。
担任の説明は魔法を学校で許可なく使ってはいけないなど、魔法に関する説明ばかりだった。
「これで、説明を終わります。明日は実践のテストがあるので、頑張ってください。」
(入学して2日目にテストとか、この学校、鬼だな)
「それでは、解散です。」
もう、午後3時をさしていた。
生徒がわらわらと立ち上がって、帰る準備を始める。
ふと、斜め後ろを見ると、遠山翔はもうそこにいなかった。
(帰るの早いな。)
ガタン、ゴトン
私と雛は同じ電車通学だったので、一緒に帰ることにした。しかも、同じ方向だった。
「ねえねえ、由佳、連絡先交換しない?」
「うん、いいよ。」
雛がQRコードを出してくる。これは最近流行りの無料チャットアプリだ。もちろん、私もそのアプリをインストールしている。
ピコンッ
「よし、これでいいね。私、1人暮らしだから、色々あるかもしれないから、よろしくね。」
「雛、そうなの。私もだよ。お互い様だね。よろしくね。」
「私、群馬出身だから、東京のこと全然分からなくて。」
(あー、やっぱり。)
「大丈夫だよ。何かあったら、私に言ってね。」
「うん、ありがとう。心強いよ。」
雛はニコッと笑った。
「私、ここ最寄りだから、じゃあね。」
「また、明日ね。」
手を振った。ほっと、息をつく。
(友達できないんじゃないかと思って、少し心配してたけど、思ったより大丈夫かも。よかった。)