入学式4
おそるおそる顔を上げると、男、ではなく女の顔があった。確かに声が女のものに聞こえなくもなかった。長い髪をポニーテールして、元気そうな感じの子だ。私がその前の席の女の子を凝視していると、その子があっとした顔で言った。
「あっ、ごめんね。急にびっくりしたよね。いやぁ、かわいいなと思って。自己紹介もしてなかったよね。私、橋下雛!よろしくね!」
正直、初対面の人に急にかわいいというのはいかがなものかとは思ったが、素直で話しやすそうな感じだ。
「あっ、えっと、私は風月院由佳です。こちらこそよろしくお願いします。」
「敬語じゃなくていいよ!それと、私のことは雛って呼んでもらえると嬉しいな。」
「じゃあ、私のことも由佳って呼んでもらえる?」
「もちろん!」
ニコッと笑った。笑顔が素敵で、よく似合う。思ったとおりのとっても明るい子だ。
「私、かわいい子が好きなんだよね。それで、由佳があんまりかわいいから、思わず声かけちゃった!」
「あはは、そうなの。」
思わず苦笑いをした。
「でも、十分雛もかわいいと思うよ。」
「いやぁ、私なんて全然。由佳はとっても目がきれいだし。」
「そうかなぁ」
そして、雛はふと私が見ていた資料に目を落とすと言った。
「由佳は入試の成績3位だったんだよね?すごいなぁ。」
「まあ。あ、うん。ありがとう。」
「しかも、かわいいし。」
「いやぁ。そんなことはないよ。」
「絶対、由佳はかわいいよ。あっ、そういえばさ、首席だった子もうちのクラスなんだよね?」
「えっ、そうなの?」
クラスのメンバーもちゃんと確認してなかったし、自分が資料に載ってたことばかりで頭がいっぱいになって、そこまで見ていなかった。
「うん。ほら、そこ。」
資料を指差されて見ると、
(首席 遠山翔 特別科1年A組………)
「あ、ほんとだ」
「でしょ。」
そして、急に顔を近づけてきて、
「それに、結構イケメンじゃない?」
「あはは、まあ、そうだね。」
確かにその遠山翔という人はかなりのイケメンだった。黒い髪に凛とした黒い瞳。鼻筋も通っていて、かなり整った顔立ちだ。
「絶対モテるよね。頭もよくて、カッコよくて。バレンタインとかすごいことになりそう。」
「あ〜、確かに。」
「それには及ばないけど、この次席の子もそこそこカッコいいよね。」
「あ〜、そうだね。裕一、中学校で結構モテてたみたいだしね。」
「えっ、由佳、知り合いなの!?」
「うん、まあ。家族ぐるみで。」
裕一は私の幼なじみだ。裕一の家の守坂家は古くから風月院家と親交があり、小さい頃、同い年ということもあってよく一緒に遊んだ。
「今年の上位3名は美男美女でいいですな〜。見ててほんとに気持ちがいいわ。」
「あははは。」
すると、急に勢いよく教室のドアが開き、先生らしき女の人が入ってきた。
「今から、入学式を始めますので、講堂へ移動してください。」
「由佳、一緒に行こう。」
「うん!」