朝目覚めると…
魔導師ー。魔法を操る者たち。それは一般的には空想上の存在でしかないと思われている。しかし、それは一般的に言われいるだけで、絶対に存在しないという証明はどこにもない。
そう、この世界には魔導師という特殊な存在がいる。彼らは遠い昔から存在していて、世界中にいる。そして、大きな歴史の影にはいつも彼らがいた。しかし、ほとんどの者たちは彼らのことを知らない。いや、知らないのではなく、彼らが己の力を隠し、知られないようにしてきたのだ。
彼らはいつの時代も影に生きてきたのだー。
由佳……………由佳さ………起きて…さい」
誰かが私を呼ぶ声がする。
(誰?まだ眠いよ…)
再び眠ってしまいそうになる。しかし、体が大きく揺すられる。
「起きて……起きて…」
だんだんと意識がはっきりしてきた。そして、だんだんと声も大きく聞こえてくる。
「由佳様……由佳様…由佳様早く起きてください!もう6時30分ですよ!」
(えっ!うそでしょ!?)
ゴッチーーン!
「いっ、うわぁっっ!」
何かに支えられる。
(ん?)
おそるおそる目を開けるとそこには少年の顔があった。
(は)
驚きを忘れ、時が止まったように感じた。細く通った鼻筋、今にも吸い込まれてしまいそうなまっすぐな黒い瞳、そして綺麗な黒髪。見とれてしまうほどに輝いていた。いや、見とれてしまっていた。
(何じっと見てるのよ、私!それにこれってもしかしてだけど、お姫様抱っこされちゃってる!?)
顔が赤くなっていくのを感じた。
「わぁぁ、ごめんなさい!」
慌てて立ち上がった。少年がベッドの下に片膝ついているのを見て察した。どうやら私は勢いよく起き上がった拍子に、この少年に頭突きし、ベッドの端っこで寝ていたため、ベッドから落ちてしまったらしい。
(恥ずかしい…もう何しちゃってるんだろう)
こんなことがあってはもう頭は覚醒しきっている。
(あぁ、そうだ。)
そして昨日の出来事が蘇ってきた。
(思い出すだけでなんだか疲れる。)
すると、少年から声がした。
「由佳様、少々手荒な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。ですが、起床のお時間でしたので。」
あまり感情を感じさせない顔だった。
(目覚ましセットし忘れちゃったかなぁ。はぁ。もう、主としたことが…)
「それは大丈夫よ。気にしないで。」
なるべく主らしく言った。
「着替えるから、外に出ていてちょうだい。」
「かしこまりました。それではダイニングでお待ちしております。あと、ボタンを付け直してブラウスはそちらに置いておきました。では。」
そう言って少年は部屋を出て行った。
「はぁ」
部屋を出て行くとため息が出た。
「どうして昨日にしても今にしてもドジっちゃうのかな。」
独り言が溢れた。そして、すぐにブラウスを見る。
(まぁ、どうしたらこんなに綺麗につけられてるのかな…どうせ、私が下手くそなだけだけど!どうして、あんなに完璧なのよ!)
今度は心の中で叫んだ。
私の名前は風月院由佳。15歳の高校1年生だ。そして彼の名は遠山翔。私と同じ15歳で同じ高校に通う1年生だ。しかし、ただの同級生と言うわけではない。彼は私の従者なのだ。身の回りの世話もしてくれるし、もし私が襲われるようなことがあれば、彼が守ってくれる。つまり、彼は使用人兼ボディーガードなのだ。そして、彼はあまりにも完璧すぎる。なにせ高校は首席合格で性格は知らないが、ルックスも抜群。家事スキルもあの綺麗なボタンを見ては高いといえるだろう。そして、彼と会ったのは昨日が初めてだ。そこからどうして彼が私の従者になり、一緒に住むことになったのかは昨日に遡るー。