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ダッシュ!!  作者: 浮雲士
第二部
55/193

韓国戦2







「くそがああっっ!!」


 前半が終わりハーフタイムの現在。控室に戻ってきたキムは空になった給水ボトルを控室の壁に投げつけ、鬼の形相で叫ぶ。

 だがそれもしょうがないのかもしれない。試合前、散々抑えると言っていたヤナギにあそこまでいいようにされたのだ。

 椅子やロッカーを蹴り上げようとしたキムを慌ててスタッフやコーチ陣、ファンが取り押さえるのを見ながらアンは素直にヤナギの実力を認め、恐ろしく思う。


(まぁ彼一人では厳しいと思っていたけど、まさかあれほどとはね)


 場所がホームとはいえ前回のオマーン戦とは完全に別人だ。プロデビューして二年も経っていない選手の実力とはとても信じられない。

 アンとてイングランドリーグやCL(カンピオーネリーグ)でヤナギの同類(ゾディアック)と数回戦ったことはあるが、今日ほどの衝撃と恐れを抱いたのは二度目だ。

 給水ボトルでずいぶん補給をしながらアンはゆっくりと周りを見る。チームメイトたちは皆、苦渋と苛立ちを面に浮かべ、そして途方にくれている。


『そろそろ落ち着いたかね』


 英語でそう言って羽交い絞めにされ肩で息を荒くしているキムに給水ボトルを差し出すのは韓国代表の監督、ヴェッセル・バウマンだ。

 彼がオランダ人であり現役時代はCB、オランダ代表の守備の要として世界に名をはせていた。絶頂期は世界最高の一人とさえ言われていた人だ。

 五十代半ばで金髪に幾分か白いものが混じっているヴェッセルだが、表情や瞳には力がある。噛みつくように睨み返してくるキムを真っ向から見返し、言う。


『君の大言はやはり大言でしかなかったわけだ。私が練習中や試合前、さんざん彼を要注意するよう言っていたことがよくわかったかね』

「……っ!!」

『後半、システムは4-3-3を維持。ヤナギ選手にはキム、ファンの二人でマークに付け。その上で中盤、DFラインと連動して網を張り日本の攻撃をしのぐんだ』

『俺はまだやれる! あのガキに負けてねぇ!』


 そう言うキムを監督は冷たい眼差しで見て、言う。


『前半の二点目、彼に完膚なきまでに敗北したのをもう忘れたのかね。私の指示に従えないのなら君は交代だ。私が監督と務める代表にも今度呼ぶことはない。

 いや、君が望むなら今すぐにでもイングランドに帰ってくれて構わんよ?』

『俺なしでヤナギのガキに勝てるっていうのかよ!?』

『勘違いしては困るな。私たち韓国代表が戦っているのは”日本代表”だ。シュウスケ・ヤナギではない。試合前のミーティングでも言ったはずだが?』


 そう言って監督はキムから視線を外すと、コーチの一人に言う。


『チャにいつでも出れるよう準備をしておいてくれと伝えてください』

『!』

『え!? わ、わかりました』


 控室を出ていくコーチを見て、監督は再びキムに向き合うと、元々細めていた視線をさらに鋭くして、言う。


『いい加減その過剰な自惚れとヤナギに対する個人的感情はどうにかしろ。君は若いが一国を代表する選手だ。国に選ばれたものが個人的感情で動くことなど許されるはずもない。

 いや、たとえ君の国や民が許しても監督である私が許さん。このチームは私のチームだ。それ壊そうとするものは何であろうと排斥する。チームの若手であろうとエースであろうとだ』


 ヴェッセルの放つ圧にファンはもちろん、近くにいる面々が息を呑む。

 キムさえも表情を歪ませ、一歩後ずさるほどのものだ。世界最高のCBと言われたときの迫力は老いた現在でも健在のようだ。


『……わかり、ましたっ!』

『ならいい。それと給水はいつもより余分にしておけ。その火照った頭を冷やすためにな。

 ──さて私の選手たちよ、貴重な時間を費やしてすまない。だが後半のゲームプランはすでに出来上がっているし、君たちの頭脳と実力ならこれを実行できると私は確信している』


 皆に向き直るとヴェッセルはよどみない口調でゲームプランを口にする。

 難易度は高いが日本、そして柳の弱点を突いたそれに皆が小さく驚きの声を上げる。


『──以上だ。私がいま述べたプランと日本の弱点を徹底的につけば追いつき、勝ち越すことも可能だろう。

 我がチームよ、大韓民国の精鋭たちよ。君たちの奮起に期待する』






◆◆◆◆◆






 後半開始の笛が鳴り響き、センターサークル内にいる鷲介は軽くボールを動かす。それを堂本が後ろに戻すのを見て鷲介は静かに韓国代表の様子を窺う。


(フン、さすがにハーフタイムで落ち着きを取り戻したか。あのままなら一方的にボコボコニするのも簡単だったんだが)


 三点目が入り前半終了するまでの短い時間でのことだ。表情や視線にまだまだ力はあった韓国だが、動き自体は粗雑で勢いがあるだけだった。あの状態が続いてくれていたらもっと点を取るの簡単だったのだが。

 韓国はシステムは変更した4-3-3のままでメンバーチェンジもない。表情や視線に力はあり、しかし同時に落ち着きとこちらの隙を見逃さない抜け目ない雰囲気をチーム全体に漂わせている。

 右サイドに上がっていく鷲介に近づいてくる二人。一人は当然キムだがもう一人はファンだ。視線が合うとキムは血走った目を向けてくるがすぐに冷静さを取り戻す。


『二人がかりで来るのか。あれだけいきっていたのにそう来るとは、一人では俺に勝てないってことを理解できるだけの頭はあったんだな』


 嘲笑しながら鷲介がそう言うと再びキムは鬼の形相となるが、その彼を押さえてファンが前に出て、言う。


『君こそ調子に乗らない方がいい。まだ試合時間は四十五分ある。四十五分後、君が泣きを見ていないとも限らないのだから』

『そうですか。ではそうならないよう気を付けますよ』


 静かに闘志を燃やすファンにそう言って鷲介は動く。

 後半、両チームとも静かな立ち上がりだ。日本はいつもの位置で待ち構えており、いつでもカウンターを発動できる様子だ。

 そして前に出てくると思われていた韓国はもちろん全体がやや前目ではあるが想定したほど激しくは動かない。虎視眈々とこちらの隙を窺っている様子だ。


(なんか韓国らしくないな。今までの韓国ならここでムキになって来るはずなのに)


 そう鷲介が思っているとボールがやってくる。前を向くとファンがこちらに突撃してくるが、彼の体が右に重心がかかっているのを見て加速。彼の左側を通過する。


「!」


 しかしその直後、キムが迫ってきた。突破直後、それもアジリティなら鷲介に近いレベルのキムの速さにさすがに対応できず、キムが伸ばした足が足元にあるボールをカットしてしまう。

 

「ちっ」


 ラインを割ったボールを見て舌打ちする鷲介。またキムからの罵倒が来るかと思ったが、彼は小さく笑みを浮かべつつもすぐに鷲介から顔をそむけ、ファンに近づいていく。


(なんだ、今の様子は)


 キムらしからぬ様子に鷲介は眉をひそめる。とはいえ今のカットも単なるまぐれだろうと思い、試合に集中する。

 やはりと言うべきか試合は激しさを増す。静かだった韓国も徐々に前に出始めアンを中心に激しく動き、攻勢に出る。当然日本はそれをチームで守り、カウンターを仕掛ける。十分の間で両チームにイエローカードが一枚ずつ、ファウルの数も増加する。

 そして思った通り先程のはまぐれだったのか、鷲介はファンたちからマークやファウルまがいのチャージを受けつつもボールをほとんど失わない。フェイントで彼らを惑わしてはボールをキープしてはパスを出し、また一度だけ二人まとめて抜き去りゴールに迫ったが、前半と違って人数をかけ組織で守ろうとしている──必死の形相で──韓国の守備の前に韓国ゴールネットを揺らすのを阻まれる。

 

(流石に激しくなってきたか。だがカウンター狙いたい放題だな)


 後半二十分前、アンを中心とした連続シュート攻撃がバーを大きく超えたのを見て鷲介は小さく息をつきながら思う。数分前から韓国の陣形はさらに前に出てきており日本陣内には両チームのイレブンが入り乱れている。

 しかし当然ながらDFラインも高くなっておりセンターサークル近くまで上げており、4バックも左に偏っておりやや3バック気味になっている。

 小野の方を振り向く。すると視線の合った日本代表の司令塔は頷き、韓国ゴール側へ顎をしゃくる。それを見た鷲介は下唇を舐めて機を窺う。

 川上のゴールキックを繋ぎ丁寧にボールを回す日本。韓国はそれを必死に追いかける。カードギリギリのプレイをした選手には主審から注意が与えられ、また一枚、イエローカードが韓国に対して突き出される。

 しかし注意を受けた選手もカードをもらった選手も、そして当然他の韓国イレブンもそんなことお構いなしに必死に走り、前に出る。その猛烈と言う勢いに日本の陣形はやや下がり始め、鷲介も多少守備に参加せざるを得なくなる。


「げっ!」


 鷲介がドリブル突破すると見せかけて中にいる土本──先程柿崎と交代で入ってきた──へパスを出したボールが、ホンの伸ばした足に当たる。軌道が変わったそれをクォンが拾い、すぐさま日本陣内の右サイドにいるソにパスを出す。

 ボールを受け取ったソはすぐさま前を向きサイドを突き進む。佐々木が立ち塞がるがスペインリーグ所属の韓国随一のドリブラーはリズムのいいフェイントで佐々木を惑わし近寄らせず、またフォローに来たパクとのワンツーで裏に抜け出し日本陣内に深く侵入する。迎えたピンチにスタジアムから悲鳴のような声と守れと言う大声が響く。

 ペナルティエリアラインに来たソに海原が向かっていくが、ソはドリブルすると見せかけて右から左に切り返してパスを出し、それにイが飛び込んでくる。

 一気に加速しフリーとなっているイ。だが彼がダイレクトシュートを撃つ直前、間一髪瀬川が体を張ってコースを塞ぎ、イの放ったシュートは横に弾かれる。だが安堵はしなかった。ペナルティエリアを出たそのこぼれ球にアンが真っ先に駆け寄っており再びダイレクトシュートを放ったからだ。


「!」


 アンのそれを見て鷲介は青ざめる。彼の武器の一つが正確無比なシュートだが、今日もそれをいかんなく発揮し日本ゴールに迫っていたからだ。

 鋭く声を描くアンのシュート。だが狙い過ぎたのかポスト右上部に当たり跳ね返る。そしてそれを下がっていた土本が拾い、鷲介を見た。


(来る!)


 直感的に思い動く鷲介。DFラインを見てセンターラインから飛び出す。

 そして思った通り左サイドの土本からロングボールが放たれる。ピンチの後のビックチャンスと心中で拳を握ったその時だ、なんとキムが鷲介より早くボールの落下地点に移動していた。


「!?」


 跳躍するキム。土本から来たボールを彼はヘディングで前に弾き返す。力があったヘディングは一気に日本陣内中央に落下し、それを下がってきていたチが拾い素早く反転しては前線へボールを来る。

 ペナルティエリア正面にいるアンに収まるボール。井口が立ち塞がるがアンは背を向け、右から来たパクにパスを出すふりをして滑らかな動きで左から右に180度反転し前に出る。

 無駄がなく流麗な一連の動作に井口は反応が遅れるが、彼とて長年イングランドリーグで戦っている猛者。何とかアンの動きについてくる。しかし鷲介は青ざめ、叫んだ。


「イが来てる! ダイアゴナルだ!」


 外に移動したアンと入れ替わるようにイが左から中央へ走り、ペナルティエリアへ侵入する。そのイにアンはヒールパスを出す。

 若き韓国のストライカーに海原が追いすがるがギリギリで間に合わず、ペナルティエリア正面からシュートを撃たれてしまう。コースは甘く川上も反応しているが、伸ばした手は数センチほど届かず、ボールは日本ゴールに突き刺さってしまった。


「くっ……!」


 韓国イレブンがゴールを決めたイを囲み喜ぶのを、そしてイの方へ向かっていくキムの勝ち誇ったような顔を見て鷲介は奥歯をかむ。

 だがすぐに取り返してやると意気込みボールを催促する。やってきたボールと共にセンターサークルへ向かおうとした時だ、田仲から呼ばれる。


「どうしたんですか田仲さん」

「監督からの指示だ。残り時間、一点差を守りきれとのことだ。よほどの状態でない限り攻撃には出るなと」

「はぁ!?」


 田仲の言葉を聞き思わず鷲介は声を張り上げ監督を見る。視線に気づいた監督は静かに頷き、右手首を動かす。守りに入れと言う指示だ。

 だが鷲介には到底納得できない。韓国は間違いなく攻勢を強めてくる。アウェーだろうとあの国が日本相手に負けることを良しとするはずがないからだ。時間も十分に残っている。


「間違いなく韓国は先程以上の勢いで来ますよ! 相手の勢いを削ぐため、また得点して相手の戦意を無くすためにもこちらも前に出て攻めるべきです」

「わかっている。俺も監督にそう進言した。だがリスクを犯して前に出て同点にされるより勢いがついた韓国の猛攻を凌げば勝ち点三だけではなく、グループ一番の強敵相手に守り抜けたと言う自信にもつながると言ってな」


 俺としてはどちらの意見もわかるからなと締めくくる田仲。確かに彼の顔に完全な納得はないが、これ(監督の指示)で行くと言うような表情だ。

 監督からの指示を聞いたのかイレブンのほとんどが田仲に似た表情となる。小野も消極的賛成という感じで鷲介のようにはっきりと犯意を示しているのは土本ぐらいだ。

 とはいえチームが監督の指示に従う様子を見て、鷲介は小さくため息をつく。皆が指示に従う中、一人だけ反抗するわけにもいかない。

 疲れが見えていた瀬川に代わり稲垣が入った後半三十分過ぎ、鳴り響くキックオフの笛。陣形を下げボールを回す日本に対し、当然ながら韓国は前に出てきた。


「無理するなよ柳! 後ろに下げろ」


 センターライン近くにこぼれたボールを鷲介は拾い、ドリブルで行けそうだったところで堂本から声がかかる。

 それを聞き動きを止めた鷲介にファンが、そして続いてキムがボールを奪いにやってくる。殺意と執念が混じり合った二人からの圧を感じながらも鷲介はギリギリで後方にいた田仲へパスをする。だが直後、キムがまたしてもファウルまがいのチャージをして鷲介を吹き飛ばす。


「いって~……」

「無理するな、ゆっくり起き上がれ」


 スタジアムから響くブーイングを聞きながら、鷲介は駆け寄ってきた田仲に言われた通り、体に何か異常がないか確認しながらゆっくりと体を起こす。

 立ち上がり周りを見ると主審から注意を受けているキムの姿が目に入る。だが審判が立ち去った後こちらを振り向き、小さい笑みを浮かべる。


(野郎……!)


 とことん性根の腐ったキムに鷲介は募っていた怒りのボルテージを静かに上げる。

 後半三十五分を過ぎ、ますます守勢に入りボールを回す日本。だが韓国は微塵も諦めずボールを追いつづけ、また立て続けに前線にリフレッシュな選手を投入して攻勢に出てくる。そして彼らが猟犬のようにボールを追い、GKまで下がったボールにまで突撃してくる。

 執念と言うべき韓国の走りに怯んだのか、さすがの川上もボールを前に大きく蹴りだす。そしてそれが鷲介のいる右サイドに向かって飛んでくる。

 ラインを割るかというボールに走り、ライン上にてジャンプして胸トラップで収める鷲介。だが着地した直後、またしてもキムが突っ込んで来る。

 それを見て鷲介の体は反射的に動き、前を振り向く。トラップする前に左に田仲、正面に小野がいるのは確認していたが今日散々キムから激しくチェックを受けたことと、先程の悪意のある笑みを見て、心中に沈殿していた彼への怒りが一気に膨れ上がり、爆発したのだ。

 

(止めを刺してやる!)


 パスを要求する味方の声を無視して鷲介は前に出る。守勢に回っていたことが幸いしたのか、全力で動けるだけのスタミナはまだ残っている。

 ゆっくりと中に切れ込んでいく鷲介の正面に回り込むキム。腰を低くし、こちらの動きを決して見逃さない様子だ。


(お前如きじゃ何度やっても俺を止められないってこの一対一でわからせてやるよ!)


 鷲介はそう思いながら左右に体を動かす。小野にパスを出すふりをするがそれにキムはつられない。

 そしてさらに中に入ろうと左に動いた時、キムが一気に距離を詰めてきた。それを見て鷲介は心中で嘲笑う。

 

(本当、学習能力のない奴だ!)


 キムの体がやや右に傾き動いたのを見て鷲介はエラシコを発動。ボールと共にキムの左側へ急転換し加速する。


(勝っ)


 たと心中でほくそ笑だその時だ、体の左側に衝撃が走り、動きが阻害される。

 その原因はすぐにわかり鷲介は驚愕する。どうしたことか抜き去ったはずのキムがチャージをしていたのだ。


(なぜ反応できている!?)


 理由がわからず困惑する鷲介。その間にもキムはその強靭なフィジカルで鷲介を押しのけ、ボールを奪おうとする。


(ふざ、けんなぁぁっ!!)


 何故か完璧に止められたことや今キムの手に掴まれているユニフォーム。その事実が心中にある積りに積もった積年の怒りをさらに過熱させ、鷲介から考える力を奪う。

 ドリブル突破することで頭が一杯となる鷲介。邪魔をするキムを振り払おうとする衝動のまま、彼の体に肘を入れてしまう。

 解放されたこと、キムが倒れたことに鷲介は笑みを浮かべ、前に進もうとする。だがその時主審がけたたましい笛の音を鳴り響かせると駆け足で鷲介の元へやってきてイエローカードを提示する。


「な……イエロー!?」


 仰天する鷲介。だが主審から肘を使ったジェスチャーをされ、そして自分が何をやったのかを思いだし項垂れる。


(俺は、何を……)


 キムに対して苛立ちはあり私怨もあった。だが暴力で応じてしまうなど、それこそアイツ(キム)と変わらない──

 そう鷲介が激しい自己嫌悪の念を感じていたその時、主審の笛が吹かれ、周囲から悲鳴交じりの歓声が上がる。

 顔を上げてみればいつのまにかボールは日本ゴール近くまで飛んでおり、そのボールに対し先程パクと交代した長身のFWキム・チャンと佐々木が競り合おうとしている。

 ジャンプした両者、競り勝ったのはKチャンだ。ペナルティエリアギリギリ外から折り返されたボールに長身のチが合わせるが、そのヘディングシュートを井口の体が弾く。

 こぼれるボール。そこに飛び込んでくるのはまたしてもアンだ。シュート体勢に入るアンだが海原が立ち塞がりコースを消す。

 しかし韓国の、いやアジアNo1ストライカーは迷うことなく右足を振りぬいた。海原の広がった股間を通過したグラウンダーシュートは左に向かいゴールポストに当たる。

 そして内側に跳ね返って、日本のゴールネットに突き刺さった。







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