崖っぷちの最終予選5
「うおおお、危ねー! 今の、危なかったですよ先輩!」
「結局ゴール枠外だろう。……わかった、わかったから肩を揺らすな」
ゴールから数メートルの距離でシュートを撃ったアンを見て、広助の肩を揺らすイケメン後輩。
広助は白坂を押しのけTVに映っている表示時間を見る。運命の日韓戦はすでに後半25分になろうとしている。
後半15分間の間、怒涛と言う勢いで3得点した日本。そのすぐ後に疲れが見えていた中神、藤中を同時に二枚替えして瀬川、南郷を投入。高くしていた最終ラインもいつもの状態に戻していた。
さて、当然ながらリードされている韓国はこのまま黙っているはずもなかった。こちらも疲労の色が見えた二人を同時に変えて前がかりとなる。
韓国が見せる日本への異様な執念とそれに触発された主審のホームよりの笛で日本は押される。怒りと気迫に満ちたプレーで今のような危険なシーンもあった。
だが広助は騒ぐ隣の後輩ほど心配はしていなかった。攻められてはいるも日本のプレーには余裕があるし、交代で投入された二人はピッチを走り相手のチャンスをことごとく潰している。
危険なシーンがあったといっても前半と同じくチームではなく選手の個によるものだ。後ろからの縦パスや遠くからのクロスボールにこぼれ球に韓国選手が反応してのプレー。しかしそれらの前に日本DFが立ちはだかり、ボールがゴール枠内に行くことは一度もない。
(攻められている、というよりも攻めさせているという感じだな)
韓国の怒りに任せた粗雑、強引なプレーも一因なのだろうがそう見える。TV画面では小野や瀬川、田仲といった面々が味方にコーチングをしているのが見えた。
彼らの的確な守りの指示により日本イレブンは韓国ほどピッチを動かない、効率的な守備で相手の攻撃をシャットダウンしている。
余裕があるもう一つの理由はパス回しだ。今までの最終予選の後半と同じくパススピードを上げた日本。そのスピードに韓国選手は翻弄されており、プレスに行っても速いパスワークでかわされ、無駄走りをさせられる。
また今日はパススピードを上げる場面は選手の意志に任されているようで、通常のパススピードや遅い時もある。取れると思わせるパス回し。それが韓国のプレスを誘発しているのだろう。
(しかしここまで差がつくとは)
互いの戦力差を考えると日本が優勢なのは間違いない。だがこれほどの差がつくほどではない。これは日本イレブンの力だけではなく監督の手腕によるところが大きい。
韓国のヴェッセル監督も有能だ。元々韓国代表は攻撃力に優れていた半面、守備の方に問題を抱えていた。そんな韓国に韓国人の気性に合っているマンツーマン気味のハイプレスを代表に浸透させ、韓国代表を攻守ともにアジア随一と言ってもいいチームに変えた。
しかしそれに対してヨアヒム監督は見事に対応して見せた。前半は小野、中神、藤中三人の視野とコーチングを生かした攻守とカウンターで2点先行し、後半は緩急をつけたパス回しで相手の戦術をほぼ無効化した。
(小野達三人をスタメンに連ねたのは韓国の戦術を潰す意図もあったんだな)
攻撃に優れた三人。しかし反面、その力はアジアクラス相手ではそう易々とボールを失わないということでもある。
ドリブル技術に長ける中神。強靭なフィジカルを生かしたキープ力と正確なパス精度を持つ藤中。若手二人よりも熟練した動きと読み、さらに中神と同等以上のドリブル技術、藤中以上のパス精度を持つ小野。
三者は守備の時と同じく攻撃の時もどこにいたらいいのか、味方から見てどこにいてほしいのかを察して動きパスを回す。
そのパスが速くダイレクトに、そして時には遅くくるのだ。マンツーマンをしている韓国イレブンとしてはどうしても後手に回る。
さらに前線の三人、堂本、鹿島、柳。この三者の存在がより韓国の守備陣を瓦解させる。
堂本は元来持っていたフィジカルによるキープ力を生かしたポストプレーでボールを捌き、柳は世界トップレベルと言うべき切り込みで韓国守備陣を切り裂き、オールラウンダーの鹿島は二人ほどではないがどちらのプレーもでき、またオフ・ザ・ボールの動きで相手守備陣をかき乱す。
三者ともアジアトップクラス──柳だけはワールドクラス──の実力者。それが三人揃っているだけでも厄介だというのにさらに小野達三人がいる。
そのことを考えればこの結果は必然と言えるのかもしれない。
(ヴェッセル監督はここまで打ちのめされることは想像していなかったんだな)
ベンチから腰を上げ声を張り上げているヴェッセル。スコアが2-4なってからずっとこうなのだ。
細かい指示を送っているが韓国イレブンの動きにさほどの変化はない。おそらくここまで差をつけられたことをピッチの選手たちは怒り、戸惑い、混乱しているため、正常に頭が働かないのだろう。
「あ、三人目の選手交代です! ここで井口さんの投入ですか。このまま守り切るつもりですかね」
「そんなわけがないだろう。よく見て見ろ。今まで下がっていた中山がいつものように高い位置に出ている。カウンターで止めを刺す気満々だな」
井口が投入され、日本の守備はますます統制が取れだし今まで以上に韓国の攻撃を弾く。
そして後半30分、井口がアンからボールを奪い繋ぐ日本。そのボールが左サイドを駆け上がる中山の元に届く。
すっかり柳と並び日本のカウンター要因となった中山。彼が駆け上がる韓国の両サイドは攻撃に傾倒しすぎてガラガラだ。
元々3バックでありサイドアタックには弱かったが、それでも鉄壁の守備を誇っていたのはCB三人が優れていたのと、互いに連動して守備を構築していたからだ。
しかし現在そのうちの一人はすでにベンチに下がっており、代わりにファンがCBの一角に入っている。彼も優秀な選手だがCBとしては他の三人に劣るし、また本職であるキムたちが攻撃に意識を裂きすぎているのか高い位置にいる。守備のバランスが取れていないのだ。
まだまだスタミナが十分なのか、前半のような勢いで駆け上がる中山。ペナルティエリア直前でファンが追い付くが、中山は一瞬スピードを落とした後急加速して右に切れ込む。ファンも反応しているが中山の日本人離れした長い脚はセンタリングを上げる。
高く飛んだ、しかし精度を欠いたボールは中央にいた鹿島を飛び越え、右サイドのペナルティエリアライン上に落ちる。そのままサイドラインを割ろうとするが、猛スピードで駆け上がってきた柳がギリギリで抑えゴールに向かう。
その柳の前にキムが立ちはだかる。二人の経歴を調べているうちにわかったことだがユース時代、この二人には因縁があった。柳の前回の意気込みすぎたプレーもその辺に原因があったのだろう。
左に切れ込む柳にキムが反応する。しかし柳はそれを見越していたかのようにダブルタッチで逆に切り返すが、またしてもキムは反応し、前を塞ぐ。
「うわっ……取られますよ!」
白坂の言葉通り、広助もそう思った。だが柳がまたしてもダブルタッチで左に切り返したのを見て仰天した。
連続ダブルタッチはできないことではないのだが後半の時間でやってのけるのは驚きだ。しかもミカエルのようなテクニック系ドリブラーでない彼が。
(ゾーンにでも入っているのか?)
そう思う広助の目に映るキムをかわす柳。GKが前に出てくるが彼がボールを抑えられる直前、左にパスを出す。
そのボールを走ってきた鹿島が無人のゴールへ押し込む。2-6。これで、4点差だ。
(決まったな)
互いに手を叩きあう柳と鹿島、そしてそのすぐ傍で項垂れるキムを見て広助は確信するのだった。
◆◆◆◆◆
(勝てない……)
自国民の悲鳴とブーイングを聞きながらキムはピッチの芝に視線を向けていた。残り15分での4点差。ここまで突き放されるとは予想すらしていなかった。
日本がこのグループ最大の強敵であることはわかっていた。ヤナギや小野など厄介な選手がいることも十分に分かっていた。
だが、それでも、負けること自体、頭にはなかった。韓国は予選はほぼ負けなしで突破は確実。一方宿敵である日本は2位に入るか入れないかの瀬戸際。
日本は監督が交代したあと、ずっと勝ち続けているが試合内容は決して良いものではない。先日のイラク戦もエースであるヤナギは不調。
今日の前半も運悪く2点奪われるもなんだかんだで同点に追いついた。ベストを尽くせば勝利できるものと思っていたのに──
「何俯いている。顔を上げろ」
「ファンさん……」
声の方に視線を向けると、厳しい顔つきのファンがいる。
彼はこちらを見てますます不機嫌そうな顔となる。
「何だその情けない顔は。まだ時間は15分も残っているんだぞ」
「たった15分ですよ。4点差を詰められると思うんですか」
よほどの格下相手なら点を取ることもできるだろうが相手は仮にも同格と言われている日本。
崩すのは容易ではないし、しかも自分と同じイングランドリーグで戦う井口が投入されたことで守備がさらに安定している。韓国のエースであるアンも投入前ほど自由なプレーができていない。
「だからどうした。試合が終わっていない以上諦める理由にはならないだろうが。
勝つ気もなく、そんな無様な顔をするなら今すぐベンチに下がれ」
ファンの言葉にキムは思わず気圧される。
普段穏やかな人が怒ったことに驚いたこともあるが、彼の言葉や態度からは勝利を諦めていない気迫が感じられたからだ。
「ピッチに立つのであれば最後まで戦い抜け。
俺たちはイングランドリーグでいつもそうしているだろう。代表戦でできないとは言わせないぞ」
そう言ってファンは立ち去っていく。
彼を見送り周囲を見渡す。すると自分と同じような顔をしているのはイたち年が近いものだけでアンや年長者、ベテランたちはまだまだ気迫に満ちている。
これだけ点差をつけられたための空元気、やけくそとも取れるが、それを見てキムも気合を入れ直す。
試合再開のホイッスルが吹かれる前、韓国も最後の交代が行われる。イに代わり長身FWでベテランのナム・スンギュが入る。高さと速さを併せ持ち途中交代で幾度も結果を残してきたスーパーサブだ。
笛の音と同時に攻める韓国。4点差つけた日本はヤナギが中盤に下がっており前半見た4-4-2、それもダブルボランチとなっている。
ナムをメインターゲットとしたパワープレーをするも、ますます厚みを増す日本の中盤とDFに韓国の攻めは止められ、停滞せられる。しかし疲労困憊だというのに必死に戦っているファンたちを見て、キムもそれに続く。
「おおおっ!」
日本ゴール前までロングボールを放つキム。それをナムが競り勝ち抑えるが素早く日本DFが囲む。
強引に前を向けば奪われる。下げるしかない状況にキムが歯噛みした時だ、斜めからパクが突撃するような勢いで接近、ボールを奪われまいと体を張るキムからボールを渡され、強引にシュートを撃つ。
強襲と言うべきそれに日本GKは驚いたのか、中途半端にパンチングをしてしまいボールがペナルティエリアに転がる。それをハーフである左SBが拾おうとするが、それより先にアンが体を投げ出すようなスライディングシュートを放つ。
そのシュートに日本GKは慌てて反応するが遅かった。ボールは勢いは強くゴール右隅に入りネットを揺らした。
3点目に沸くスタジアム。しかしアンは相手ゴール内のボールに駆け寄り持ち上げると、センターサークルに向かって走り出す。
そんな彼と同じく自陣に走って戻る仲間たち。それを見て小さく弱まっていたキムの闘志の炎が再び激しく燃え盛る。
(前半は残り5分足らずで同点に追いついた。
なら残り3点差、追いつけない道理はない!)
可能性としては限りなく小さい。だができるかもしれないというそれだけでピッチを走る理由としては十分だ。
残り時間は8分、それでも勝利を信じて走る仲間たちに日本はじりじりと押されだす。しかし日本もしぶとさを見せ、最後の一戦は越えさせない。
時計の針が43分を刺した時、韓国はCKを得る。ファンを最終ライン近くに残し、キムも日本のペナルティエリア内に入る。
アンが精度の高いボールを日本ゴール前に上げる。ターゲットとなっているナムがそれに食いつこうとするが井口が体を当てたため彼はバランスを崩しボールをスルーしてしまう。
だがそのボールがキムのところにやってきた。それを見たキムは迷うことなく頭で合わせる。
誰もいないゴール左へのヘディングシュート。入ったと思った。だがボールがラインを割ろうとしたところで日本のGKのグローブがボールを弾く。ボールは左に飛びバーに当たり、ゴールライン上で日本のGKがキャッチした。
前を向き、鋭い視線を見せる日本のGK。それを見てキムは反射的に反転し、自陣に駆ける。直後、背後から短い日本語が聞こえ、ボールが投擲された。
投げられたボールの先には一人、カウンターに備えていたヤナギがいた。収め前を向くヤナギ。しかしすぐにファンが駆け寄ってきて前を塞ぐ。
(挟み込む……!)
ファンからのアイコンタクト通りに動くキム。しかしその直後、ヤナギはファンに向かって突撃。大きく右に切れ込むと見せかけてボールを誰もいない右サイドに蹴り、自身で追いかける。
ヤナギの一人スルーパスにファンもわずかに遅れて反応、追いかける。そしてヤナギが韓国陣内の右サイドでボールを収めた時、再び回り込んだ。
待ち構えるファンに柳が再び突っ込んでいくのをキムは戻りながら見る。何とか遅らせようとするファンだが柳はそれをさせないかのように距離を詰める。
勝負を無理やり挑まれ、ボールを奪うべく動くファン。しかしヤナギはそんなかれをあっさりとかわし韓国のペナルティエリアに近づく。
(ぐっ……!)
ファンが下手なのではない。ヤナギの緩急を生かした体重移動とボールさばきが上手すぎるのだ。彼ほどの動きを持つものはイングランドリーグにもそうはいない。
しかしラインまで1メートルというところで、キムがギリギリ追いつき、彼の前を塞いだ。そして再びファンと共に彼を挟み込む。
(なんとしても止める……!)
そうキムが思った時だ、ヤナギの姿が消えた。
いや、消えたのではない。彼はキムの視界の右隅に映っていた。ただそう感じたのは彼の切れ込んだ速度が今までのどれよりも速かったからだ。
(まさか今日の試合、今まで切れ込む速度を落としていたのか? ここ一番でこちらのタイミングを狂わせるために!?)
通り過ぎる彼にキムは思わず手を伸ばす。
しかし本気のヤナギはそれすらかわしエリアに侵入。ループシュートで飛び出してきたチュの頭上にボールを通過させ、白と黒の球体は韓国ゴールに優しく収まった。
力ない叫びをあげる韓国サポーター。控えめなガッツポーズをするヤナギを見て、キムは思う。
(格が、違う……!)
もう、認めざるを得なかった。
欧州メディアは彼こそがアジアNo1選手として決めている節があった。自分はもちろん、アンさえも及ばないと。
キムとしてはせいぜいアンに匹敵とまでは思っていたし、それ自体過大評価だと思っていた。リーグやCLの活躍は見事だったが、初出場であり相手が未研究だと思っていた。
しかし今、欧州の評価こそが正しいと、実感した。”ゾディアック”──宇宙に存在する数多の星々よりも強く輝く最強の光である太陽。ヤナギには大仰、不遜だと思っていた称号。だがそれに相応しい実力を、ヤナギは持っている。
とどめ、いや駄目押しとなった7点目にチームメイトたちも完全に心を折られたのだろう。ロスタイム2分の間、選手として本能的にボールを追いまわすだけとなる。
そして何事も起こるわけもなく2分間は過ぎ、試合終了の笛の音がピッチに響き渡った。
◆◆◆◆◆
ピッチに轟く試合終了の笛の音。それを聞き鷲介は大きく、大きく息をつく。
(この勝利でようやくW杯へ行けるめどは立ったな)
残り1試合あるが、この調子なら順調に勝ち点3をゲットし、2位通過で本戦に進めるだろう。
「さて後は八月の最後の試合だけですね。こちらも完勝してW杯の切符を手にするとしましょう」
「楽観視しすぎるなよ。相手は欧州の流れを組むウズベキスタンだ。
ま、これまで通りのサッカーができれば問題ないだろうがな」
戒めるような堂本の言葉。しかしどこか余裕を感じさせる口調から、彼もW杯へ行くことを疑っていない。
鹿島や堂本の会話を聞きながら歩いていると、赤のユニフォームを着た二人がこちらに寄ってくる。ファンと、キムだ。
「ナイスゲーム。完敗だよ。
ただ、次はこうはいかない。次のアジアカップできっちりと借りを返させてもらう」
そう言って握手を求めてくるファン。
これだけの大差をつけられて悔しくないはずはないだろうに。それを微塵も出さない。
”韓国の良心”の二つ名にふさわしいその態度に鷲介は微笑み握手をかわす。
そのファンと入れ替わるように前に出てくるキム。不機嫌そうな顔をした彼は真っすぐ鷲介を見つめて、一言。
「次は勝つ」
そう言って彼は背を向けて去っていく。一方的な、ぶつけるような物言いを聞きファンが小さく頭を下げ、彼の後を追う。
しかし鷲介は気分を害すどころか大したものだと思う。試合の疲労、そして大敗のショックがあるはずなのにその足取りはしっかりしている。
彼の性格上死ぬほど悔しいだろうに。ファン同様、それを面に出さなかった。
(以前に比べてだいぶマシになったみたいだな)
勝利で緩んでいた気持ちが引き締まる。この大敗でしばらくは大人しくなるかと思ったがあの様子を見る限り、そううまく事は運ばないようだ。
彼もまだ22歳。これから欧州で激突することもあるかもしれない。その時、どれだけ成長しているのか──
「やれやれ。他の面々と同じく消沈してくれていればしばらくは楽ができるのになぁ。来季も大変だ」
そう言って近づいてくる小野。
彼は鷲介を見て、言う。
「強かったな韓国は」
「ええ」
即答する鷲介。試合こそ大差がついたがそれはヨアヒムの策がこれ以上なくはまったうえ、鷲介たち日本イレブンが持ちうる力を出し切ったからだ。
もし今の代表が最初から最終予選に参加していれば余裕で1位通過を決めていただろう。だがそうなるまで日本が成長したのはこの最終予選があればこそだ。
そして日本の底力をもっとも引き出したのは、間違いなく長年のライバルとされる韓国だった。彼らに敗北し、追い詰められたからこそ、日本はここまで成長できた。
「でも、ここで満足していたら駄目だよ」
「当然だ。そんなことをしていれば本戦で前回と同じ無様な結果に終わるだろうからな」
忌々しそうな口調で言う堂本。前回のW杯の惨敗を思い出したのだろう。
「まだ通過点だ。1年後に備えて、俺たちはもっともっと成長しなくちゃいけねぇ。
お前ら、気を緩めるなよ」
そう言ってサポーターの元に向かう堂本。
鹿島と小野は小さく息をついたり肩をすくめていたが、鷲介は小さく微笑む。
何があったのかは知らないが彼は自信を取り戻し、結果も残した。その姿はかつて幼かった自分が焦がれた彼に戻りつつある。
(あんたこそ遅れないでくれよ。俺たちの歩みはあんたが思っている以上に、ずっと速いんだからな)
そう心中で呟き、鷲介は鹿島たちと共に堂本の後を追うのだった。
リーグ戦 24試合 25ゴール11アシスト
カップ戦 3試合 1ゴール2アシスト
CL 10試合 14ゴール4アシスト
代表戦(二年目)9試合 17ゴール8アシスト
 




