バスケットの中身
俺の異世界楽チン計画は始動した。それによって変わった事が有る、俺の弁当であるバスケットの中身だ。昨日まではサンドイッチと果物だったが、今日からは試作品のハンバーガーになったのだ。沢山作って色々試している影響で朝飯もハンバーガーだったのだ。色々な肉でひき肉を作ったり、中に入れる塩の量を試しているのだそうだ、お陰でバスケットの中には10個のハンバーガーが入っている。そして全てのハンバーガーには番号が振られていて番号毎に食った後に感想を書かなくてはいけないのだ。
こういう場合は学校って便利だ、一人で10個も食える分けないし、一人の味覚なんて当てに成らないからな。多くの人間が美味いと思えば勝ちなのだ、食通の評価などどうでも良い。それに所詮はジャンクフード、底辺の人間が喜ぶ味にすれば良いのだ、つまり塩辛い味だ。
「やっぱ、無理っぽいな」
午前中の授業は既に予習済みなので聞く必要がない、そこで俺は屋台の原価計算やバイトを安く雇う方法なんかを考えていたのだが、学生バイトの相場が分からないので計画が立てられないのだ。まあ、分からなければ聞けば良いだけだけどな。
「お~い、ハラペコ飯食おうぜ!」
「だから私はハラペコではない!マーガレットだ!」
「今日はサンドイッチじゃないんだ、これ食ってくれ。食った後に感想宜しくな」
「全く・・・人の話を聴かない奴だな!貴様は」
何だか最近顔色が良くなって来たハラペコが文句を言っている。大体此奴は何時も怒っているのだ、それでも律儀に一つ食べる事に感想を書いてくれていた。俺も頑張って3個食べたが限界だ、似たような味のハンバーガーをそんなに食えるわけない。やっぱりスープか何かを抱き合わせとして売って客単価を上げる必要がありそうだな。それか目玉商品を置いて客を集めて商品を売るか?う~む、商売って難しい。
「何を難しい顔をしているのだ?」
「商売をしたいんだが知らない事が多すぎてな、困っているのだ」
「お前は金持ちだろう?何で商売なんてするのだ?」
「いやいや、俺は金持ちでも何でもない。実家が金持ちなだけだ」
「実家が金持ちなら、お前も金持ちだろ?」
「それは違うぞ、自分の力で稼いだ金じゃないから実家が没落すれば俺は直ぐに貧乏になるのだ」
「そりゃあそうだが・・・」
子供には難しいのかな?今の状況が人生の全てって思ってるのかな?金持ちが貧乏になって自殺したり、貧乏人が成功して成金になったりするのが人生なのだが若いと分からないだろうな。なにせ学生程度が大変と思うのが子供だからな、働いてみれば学生は遊びって分かるのだがな~。ほんの少しの努力が報われるのって学生位のものだがな、幾ら努力しても報われないのが社会人って奴だ。努力するのが当たり前だからな。
「マーガレットってバイトしてたよな。一日幾らになるんだ?」
「薬草採取で一日2000ゴールド位だな、飯代を引けば一日1500ゴールド位だ」
「じゃあ俺が屋台を始めたら、ハンバーガー付きで一日2500ゴールドで雇われてくれるか?」
「やる!絶対やる!何時からだ!」
やる気満々のハラペコを何とか宥めてハンバーガーを食ってもらう。このハンバーガーを開発して屋台が出来た後の話って事を説明した。
「つまりこれが商品になるのか!責任重大だな」
「おう、お前の知り合いにも食わせて感想を聞かせてくれ」
ハラペコは残りのハンバーガーを3個程残していた、寮に帰って友達に食べてもらうのだそうだ。丁度良い俺はボッチだからハラペコにモニターは任せる事にしよう。ついでに調査に協力してもらったお礼でバイト代も払うかな?張り切って宣伝とかもしてくれそうだ。それに一番欲しいのが美人だな、美人が売り子をすれば男の客が来るかも知れんな。この学園で人気のある女でも雇うかな、きっと気のある男共が下心満々で買いに来るはず。ふははは~、不毛な妄想でも見ながら俺の養分になるのだ。
「ねえマーガレット君、綺麗な知り合いとか居るかね?」
「何だ気持ち悪いな!凄く悪そうな顔してるぞ。美人を紹介したりしないぞ!」
「ふふふ、誤解するなハラペコ、美人は商売の客寄せだ。俺は小娘に興味など無い」
「悪巧みだけは得意そうだな、しかし邪悪な方が商売人には向いているのか?」
「綺麗事だけでは世の中渡っていけんぞマーガレット、清濁併せ呑むのが大物って奴だ」
「面白い、貴様に掛けてみるのも一興かも知れんな、どうせ没落する身だからな」
「ふっふっふ、お主も悪よの~」
こうして俺は何故かハラペコと更に仲良くなった、きっとハラペコに興味が無いのが良かったのだろう、彼女が可愛かったり巨乳だったりしたら邪念が入って友人になり難かっただろうな。だが実際の彼女は小柄で痩せた毒舌の女の子だった。しかし彼女は俺にはない知識を沢山持っていたのでとても貴重な人材だったのだ。