坊ちゃん敵を育てる
僻地の連中を教育して1ヶ月たった。
「きたね~!」
「汚くない!作戦だ!」
俺はリーダー達に戦争の仕方や作戦の立て方をみっちり教育してやっているのだが、彼等は俺の高度な作戦を気に入らない様だった。彼等の戦いは正々堂々と向かい合って戦うという昔話を信じているのだ、負ければ死ぬとか、自分の家族が蹂躙されるといった事は全く考えつかない様だった。どれだけ相手に期待しているのだろう?高潔な人間ならそもそも人の領地や財産を奪いに来ないって事すら考えない連中だった。人が良いと言えば聞こえは良いのだが、俺から見れば唯の馬鹿だった。俺にとっての戦争とは何が何でも勝たなければならないものなのだ。勝つためには何でもやるのが俺の戦い方なのだ、評判なんてものは後から幾らでも操作出来るのだ、それも勝者に都合の良い様にするのが歴史ってものなのだ。
「坊ちゃん、客人です」
「誰だ?」
「ここらを治める領主だそうです」
「やっと来たのか、直ぐに会う」
辺境を治める領主がやっと来たようだ、人質を開放して1ヶ月。物凄く動きの悪い領主なので俺の中では最低評価だ、自分の領地が侵略されているのにノンビリしすぎなのだ。こういう場合は間違っていても構わないので早急に対策を取らなくては成らないのだ、間違っていた場合は作戦を変更すれば良いだけなのだから。
「え~・・・・・・あなたが領主?」
「私が領主のスマイルです、宜しくお願いします」
俺の前に小さな女の子が座っている、どう見ても子供にしか見えない。事情を聞いて見たら本来の領主は侵略に恐れをなして逃げてしまったのだそうだ。そこで何故か領主の妾の子供である彼女が領主って事にされたらしい。
「大丈夫?無理してない」
「心遣い有難うございます、私はハッキリ言って生贄でございます。でも領民さん達を守りたいです」
「う~ん・・・・・・」
一体どうすれば良いのだろう?領主が逃げ出す気持ちは分かるが早すぎると思う。一度戦って負けてから逃げ出すのなら理解出来るが、戦う前から逃げ出すのは余りに卑怯な気がするのだ。オマケにこんな小さな子供を生贄代わりの領主にするのはあんまりだと思うのだ。
「お願いします、領民さん達を助けて下さい」
スマイルちゃんは良い子だった、自分の周りの人達を本気で助けたいと思っている様だった。子供が敵の砦に来るのは怖かっただろうに必死で頑張って俺に助けを求めているのだ。
「・・・・・・分かった。助けよう、ついでにスマイルちゃんの領地も増やしてあげよう」
逃げ出した領主は王都の連中と同じ匂いがする。都合のいい時だけ領主や貴族の権利を振り回して、都合が悪くなると逃げ出すのだ。金が無くなると増税して自分の給料を増やす公務員と同じ匂いがするのだ。ハッキリ言って気に食わない、領民に寄生して生きている寄生虫なのだ。こういう連中は俺の敵なので思いっきり仕返ししてやるのだ。
「と言う訳で今日からは厳しく教えます!貴様ら~!気合入れろ!」
「ひえ~!」
「ゴールド様頑張ってください!」
スマイルちゃんに応援された俺は厳しく領民を教育する事にした。最初はゲリラ戦を教えて王都の連中に嫌がらせをして消耗戦を挑もうと思っていたのだが、スマイルちゃんを捨てて逃げ出した領主にもついでに嫌がらせをしてやる気になったのだ。嫌がらせの方法は簡単だ、捨てた領地を広げてやるのだ。今のスマイルちゃんの領地は人口1000人程度の領地だがこれをドンドン広げていって王都に対抗出来る位にして見返してやる作戦だ。
「坊ちゃん、偵察隊が帰って来ました」
「良し、作戦が立てられるな!明日からは実戦だ。野郎ども覚悟を決めろ!」
「・・・・・・本当にやるんですか?」
「当たり前だ俺は何時でも本気だ。俺の恐ろしさを王都に叩き込んでやる」
座学や訓練等幾らやってもしょうがない。兵士は実戦で強くなるのだ、戦いで死ぬような奴は要らないのだ、殺しても死なないのが優秀な戦士って奴だ。無茶苦茶な様だがこれが真実って奴だ。
「ふんふんふ~ん」
俺はご機嫌で部隊を編成してゆく、今回は相手の補給部隊を襲撃するだけの作戦なので簡単だ。今回が初めての作戦なので相手も油断しているハズだからな。それにこちらの偵察で相手の舞台の規模や進路も分かって居るので失敗する方が難しい。
俺の手持ちの全軍200名を使って相手の補給部隊30人と荷馬車10台を襲撃する作戦を立てる。相手の数が少ないので同じ人数の部隊でも上手く行くだろうが初戦なので全力で出撃する。俺の部隊の全員に自信をつけさせ戦場の空気に慣れさせる目的があるのだ。ついでに補給物資と相手の装備を奪ってこっちの戦力を増強する、これを繰り返して相手を一方的に弱体化する一般的な作戦だ。
「よ~し、全軍出撃。相手はたったの30人だ気楽にいけ!」
俺達は5日程かけて襲撃地点に到着した。襲撃方法は最も簡単な方法でやることにした、荷馬車の前後を同時に攻撃して逃がさない様にする作戦だ、ついでに荷馬車を壊されると勿体ないので中央部分にも急襲をかける電撃作戦だ。最もこっちの数が多いので普通なら直ぐに相手は降伏してしまうだろうが。
夜襲をかける方法も有るのだが、暗いと相手を取り逃がす可能性が有るので昼間に襲撃をかける方法を採用した、夜襲はこちらの人数が少なかったり補給物資を焼いてしまう場合などに使うのが一般的な方法なのだ。つまりは苦し紛れの作戦なので自軍が不利な状況で使う作戦なのだな、今回のように自軍有利な展開を作るのが参謀の力の見せ所って奴だ、少人数で大群を破るってのは無能な人間の考える夢物語って奴だ。
「攻撃よ~い!」
「攻撃開始!」
のんびりと1列になって進んでくる補給部隊に俺達は襲撃をかける。前日に掘っておいた穴の中に隠れていた部隊は一斉に弓を射かけて前後と中央部分に突撃をかけてアッという間に相手を制圧する。7倍の数に奇襲を掛けられて勝てる補給部隊ってのは存在しないのだ。僅か5分ほどで相手を制圧した俺達は相手の装備を剥ぎ取って荷馬車も全部頂いて砦に凱旋だ。一応辺境の兵士のフリをする為に俺達は毛皮を着た蛮族スタイルをしている、襲撃に俺が居ることがバレるのは今のところは不味いのだ。
襲撃から又4日程かけて砦に戻って来たら恒例の宴会だ。今回は犠牲者もなく相手を粉砕して荷馬車10台分の物資を奪って30人分の装備も頂いたので宴会は大いに盛り上がった。これで俺の兵士達も初戦をくぐり抜けたので少しは自信が出てきた様だ、こうして徐々に強い兵士を育てていくのが普通なのだ。まあ最初から強い兵士って言うのも居るのだがアイツ等は生まれつき変なので使いづらいのだ。
「敵襲~!!!」
「何だと!総員退避~!」
宴会して盛り上がっていた所に敵襲だ、俺達は大慌てで砦に篭って迎撃の準備をする。幾ら何でも敵襲が早すぎるので皆大慌てだ、俺も慌てて砦の屋上から敵の方向を見ると強そうな騎兵が100騎程こちらにやってくるのを確認した。騎兵は平原での機動性と突破力が驚異だが砦の防衛戦では大した事は無いのでひとまづ安心していると、騎兵が何やら大声を出している。
「ゴールド!早く開けんか!」
「誰だお前!」
「馬鹿が!嫁を忘れたのか貴様!」
強そうな騎兵は俺の嫁の部隊の様だ、良く見ると確かに新型の鎧と装備を持っている俺の領地の騎兵達だった。偉く嫁が怒っているが辺境にいると時間の流れが良く分からなくなってしまうので仕方ない。そういえば俺は新婚なんだったな、生きるのに忙しくて忘れてた。
こうして又俺の部隊は増強された。嫁は俺と違って強いので戦争では頼りになるのだ。




