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チート能力は親の金でした  作者: ぴっぴ
第3章 ゴールド無双編
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坊ちゃん僻地に立つ

 ゴールド子爵領を旅立って3週間、やっとエルグランド要塞に到着だ。新型の装甲馬車と装甲貨物を使って3週間なので並の馬車なら4週間程掛かる僻地の要塞だった。最初の1週間は王都付近を通ったので賑やかだった、途中の町の宿なんかに泊まって旅行気分だ。次の2週間目は町が減り村が目立ってきていたが何とか泊まれる場所は確保出来た、村で食料なども手に入った。そして3週間目に入ると村どころか人の姿を見ることが無くなって来た。成程、僻地って言われるだけの事は有るな。人が住んで居ないのだ、だだっ広い荒野が広がる平地だった。勿論宿屋なんてないので俺達はテントで野営だった。


「あれがエルグランド要塞?ボロボロじゃん」


「戦いの跡ですかな?あちこちに穴が空いてますぞ」


 森の手前に小さな砦が建っている、砦は一応石で出来た要塞だったが城壁は5メートル程の高さの木で出来た柵だった。ハッキリ言って直ぐに壊されそうな砦だった、そもそも何でこんな所に有るのか訳が分からない位置に有るのだ。ここは辺境で守る人も場所もないし、交通の要所って訳でも無い、それに周りが広すぎて何を守れば良いかも分からないのだ。


「誰がこんな物造ったんだ!馬鹿じゃね~の!」


「ハッキリ言って馬鹿ですな。こんなの守れませんよ坊ちゃん」


「そもそもここを守っても、砦の周りから他の場所に行き放題だぜ」


 砦を見た瞬間に俺は王家の考えが分かったような気がした。王家は俺を僻地で孤立させるつもりなのだ、そして蛮族か王都の息の掛かった兵隊に砦を襲わせて俺を消すつもりなのだ。


「隊長、グラハム領に急史を出せ、直ぐに援軍を呼べ」


「了解!」


 夜の到着ならとぼけて1週間位何処かに隠れてから行くのだが、既にこちらの姿を見られているので渋々要塞に入って行った。要塞の見張り台から手を振っている奴がいたのだ。


「これはこれはようこそ!エルグランド要塞へ」


「うむ、新しく要塞指令官に任じられたゴールドだ、宜しく頼む」


「司令がお待ちです、こちらへどうぞ」


 ボロボロの要塞に貧相な装備の兵たちが居た。食物が悪いのか元々弱いのかは知らないがどう見ても元気が無かった。なんだろうこの違和感?


「ゴールド卿!待ちかねていたぞ。儂がエルグランド要塞指令、エルグランド子爵だ」


「初めましてエルグランド卿、新しく要塞指令官に任命されたゴールド子爵です」


「うむ、うむ。王都からの使者から聞いておる。大層有能だそうだな、安心して跡を任せられるな!ではこれでお暇しよう!さらばだ!」


「えっ・・・・・・・チョット・・・おっさん!」


 エルグランド指令は俺に挨拶すると、大急ぎでお供を引き連れて要塞から出て行ってしまった。なんだあれ?まるで夜逃げだろ。


「何だ彼奴」


「逃げましたな、凄い逃げ足ですな」


 エルグランデ要塞を造った無能指令官エルグランドは挨拶した途端に要塞から逃げ出してしまった。余りの事態に俺は固まってしまって止める暇も無かった、もっとも止めても無駄だったと思う。


「どうするべ?隊長」


「先ずは状況の把握ですな、その後対策を練りましょう」


 俺達はエルグランド砦にたどり着いた。そしてそのまま砦の中に入った訳だが、砦の守備隊が思った以上に酷かった。普通国軍ならば揃いの鎧や武器を持っているのが普通だがこの砦の守備隊は装備がバラバラなのだ、これは有り得ない事態だった。何故なら洗浄で敵見方が入り乱れた状態になった場合敵と見方の区別がつかないからだ、これでは戦争が出来ない。金をケチるにも程がある状態だった。


「想像以上に酷いな、これは既に王国兵士じゃなくて義勇軍状態だな」


「そうですな、オマケに彼等は税金が払えなくなって連れられてきた農民ばかりですからな」


「やる気も能力も無いって訳か・・・・・・」


 エルグランド砦の守備隊は約100名、そして殆どが借金の為に連れられてきた農民達だった。本物の戦闘になって軍隊が出てきたらあっという間に全滅するのは間違いない状態だ。自分の領地から切り離された状態でこの状況は非常に不味い、暗殺どころか相手の軍隊が少しでもまともであれば俺達は瞬殺される状態なのだ。


「逃げるか・・・・・・」


「敵前逃亡は死刑ですな」


「名前を変えて領地に引っ込めば平気だな、だがそれは面白くね~な」


「王都の連中に舐められっぱなしと言うのも腹立たしいですな」


 そもそもこの砦、王国の外れの空白地帯に造られた砦なのだ。森の向こうには別の共和国が有り、一応の平和状態だったのに突然王都が拡大政策を始めて領土を増やそうとしたために建設された砦だった。王都が領土を増やそうと砦を造れば、当然相手の共和国も自分の領土を減らしたくないので軍隊を送って来るのは当然の事なのだ。それが未だに小競り合い程度で済んでいるのは、ここがお互い領地の端に有る為に兵士を送るのに金と手間が掛かるため少人数の兵士しか送り込んでいない為なのだ。しかし向こうの共和国が少し本気を出して兵士を送る気になればこの砦はあっという間に落とされるのは確実だった。

 未だにこの砦が落とされていないのはこの土地が両国にとって大した価値が無いお陰だったのだ。しかし王家なんてものは価値よりも体面なんてものを気にする連中だから何時相手の気が変わるか分からないのだな。俺だったら金に成らない事に大事な人や金を投入する気は無いのだが、王家や上級貴族は自分で金を稼いだことが無いので兵も金も何処からか湧いて出てくると思っている様だった。


「よし隊長、消極的防御でいこう。砦から出ないで徹底的に守るぞ」


「まあ、仕方ないですな」


 それからの俺達は砦に亀の様に閉じこもって砦を守る為だけに戦った。相手が挑発しようが砦の周りをウロウロしようが完全に無視して砦に閉じこもって出なかったのだ。こんな戦い方は相手に有利になるだけで普通はしないのだが、相手も僻地に送られる部隊だけに精鋭というわけでもなく、同じ位の雑魚同士なので砦の柵を挟んで大声で悪口を言い合うと言う泥沼のような防衛戦になっていた。


「もうさ、戦いじゃねーな。どちらの悪口が面白いかって戦いになってるよな」


「お互い死にたく無いから逃げ腰ですからな。まあ、こんな戦いで命を落とすのも馬鹿らしいですからな」


 この砦に来てから2週間、激しい戦闘なんてものは無く、死者も居ないというのどかな戦いが行われていた。というのも相手の兵士達もどうやらこの辺に住んでいた住民達の様で、統一された装備も無く、弓や斧を持ってるだけの普通の領民達が100人程集まっているだけの集団だったからだ。相手からすれば俺達が居るせいで自分の村の仕事が出来ないので追い出したいが、無理に戦いを挑めば死ぬかもしれないので怖くてそこまでは出来ないって感じだった。


「補給が来ね~な、王都は何をしてるんだろうな?」


「嫌がらせでしょうな、本気で砦を守る気ならば兵や物資をどっさり送ってきますからな」


 この砦を守って2週間、補給物資が全くやってこないのだ。戦争ってものは大量に物資を消費するので補給がなければ戦争を続ける事は出来なくなるのだ、つまり王都は戦争をする気が無いって事だ。そもそも食物が無ければ戦えないし、矢がなくなれば弓兵の出番は無い、槍や剣等も戦っていれば駄目になるので新しい装備が要るのだ。



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