ゴールド領へでも行くか
グラハム領の金山は無くなってしまった。だが金山のお陰で色々な産業や農地が大量に出来上がりつつ有った。特に将来性を感じるのが人材だ、学園の卒業生や有能な人材を大量に雇用出来たのでグラハム領はただの成金が治める田舎から王都より20年進んだ技術を持つ先端の地方へと変わって行こうとしていた。
「ゴールド、金が取れなくなったと聞いたぞ!大丈夫なのか?」
「大変だわね、どうするのゴールド君?」
「へ~き、へ~き。何の問題も無いな。既に代わりの産業が可動し始めてるからな」
「そうか、お前が言うならその通りなんだろうな。安心した」
「大丈夫?無理してない」
2人の嫁は対照的だった、言葉通りに受け取る腹ペコと額面通りに受け取らない先輩だ。まあ全然似てないから上手く行くのだろうな、俺としては金山のお陰で良い嫁が2人も手に入ったので満足だ。それに工場がフル稼働し始めたら金が余ってどうしようもなくなるに違いない、今でも月に20億ゴールド程の金が俺にはいってきているのだ。尤もこの金は自分の領地の製塩工場や工房に全てつぎ込んでいるので俺の手元には全然ないのだが。
「それより買い物に行こうぜ、故郷へのお土産がいるからな」
グラハム領は金が採れなくなったので今はお通夜状態になっているらしい。住民の気分が沈んでいるのは良くないことだ、別段騒ぐような事でもないのに沈んでいると経済まで不景気になってしまうので、俺達は景気づけに帰ることにしたのだ。そこで俺の婚約者2人を見せて盛大にお祝いをしてグラハム領を明るくする計画だ。
「ほれ、一人1000万ゴールド。腹ペコはお菓子、先輩は子供服なんかを買ってください」
「孤児に配るやつだな!」
「孤児院用の奴でいいのね?」
「そうそう、もう直ぐクリスマスだからね。プレゼントを配るんだ」
「「クリスマス?」」
この世界にはクリスマスは無いが、俺は孤児達にクリスマスプレゼントを配るつもりだ。そして親が子供にプレゼントを配るという習慣をグラハム領に根付かせるのだ、そして俺の店が今よりも儲かる様にしようというセコイ作戦でもあったのだ。こうやってコツコツと涙ぐましい努力の連続で儲けるのが商売人って奴だ、遊んでいて金が儲かるわけないからな。
でもまあセコイが子供は喜ぶし、親も子供から好かれるし良い習慣だと思うのだ、それにクリスマス商戦で株価が変化する程経済効果が有るから、馬鹿に出来ない習慣ではあるのだ。それに全部自分の店で買ったので売上に貢献したようなものだった。
「小僧共!我の懐から零れ落ちた物を感謝して拾うが良い!ワ~ッハッハッハ!」
「お菓子が欲しい子はこっちに来るのだ!」
「服が欲しい子はこっちに並んでね」
グラハム領の孤児院を訪問した俺達3人は別々に物資を配っている、全員にお菓子というのも味気ないので俺はスポーツ用品、マミ先輩は服やタオルなんかを配っているのだ。マミ先輩が人気が有るのは当然だが俺や腹ペコも子供達に人気が有った。
「「「おっちゃん!ダンジョンの話が聞きた~い!」」」
「しかたね~な、少しだけだぞ。実はなおっちゃんな・・・・・・」
俺は孤児院に行く度に孤児達に冒険者としてダンジョンに潜って金を稼いでいた話を面白おかしく脚色して話をしていたのだ。その時に冒険者のタグをちらりと見せたりすると話に信ぴょう性が出て子供達は大喜びするのだ。
「おいゴールド、凄い法螺話だな。ドラゴンを丸焼きにして食ったとか嘘過ぎるだろ」
「良いじゃねーか、子供の時くらい夢を見させてやれよ。その内嫌でも現実に気づくんだからな」
「子供達が喜んでいたから良い事にしましょう」
俺は子供達に期待していたのだ、彼らはグラハム領の無償提供する学校の1期生なのだ。読み書き計算を3年程学習し運動等も授業で行っている。そして無料の学園では簡単な家事や工作等も教えているのだ。そして成績が優秀な物は更に3年制の上の学校に進学する、そこでは学業だけでなく簡単な軍事訓練もしているので非常時には兵士として領地を守る人材になるのだ。そう、俺が狙っているのはマルチな能力を持つ領民を育成する事だ。優秀な人材で有りながら有事の際には戦えるマルチロールファイターが欲しいのだ、まあ子供の頃から育てれば大丈夫だろう。そして俺の教育方針のせいで孤児達は非常に優秀な人間へと育っていった。
他の領の貴族と同等の教育を受け、他の領の兵士と同等の訓練を受けた人材が俺の領内に住む孤児達なのだ。普通は馬鹿にされるはずの孤児達なのだが、俺の領地の孤児達に限っては何故かエリート扱いされると言う不思議な逆転現象が起きるのは俺が組んだ教育プログラムのせいだった。
「良いかお前ら!沢山勉強して沢山働いて、沢山税金を納めるのだ!」
「「「は~い!領主様!!!」」」
「ワハハハ!良い返事だ、またお土産持って来てやるからな!覚悟しておけ!」
孤児達を派手に訪問して景気付けをした俺達は、そのままグラハム領で婚約者2人をお披露目する大宴会を開いて多くの領民を招いた、勿論飲み食いは全部タダだ。ここで景気良く見せて、金が採れなくなってもグラハム領は健在だって所を領民達に見せるのだな。
「息子よ!婚約おめでとう!」
「2人も良い人が来てくれるなんて嬉しいわ!」
「ワハハハ!そうでしょう、そうでしょう。2人は幸運の女神ですからね」
「何だと!私は女神だったのか」
「ふふ、女神に成れる様に頑張るわね」
派手な顔見せをしてしまった、本来人前に出るのは嫌いだが仕方ない、貴族の務めって奴だ。だが学園を卒業して自分の領地に戻ったらこんな事は2度としない、俺は自分の領地から一歩も出ない引きこもりになってやるのだ。
「引き篭もる・・・だと」
「そうだ、俺は引き篭もりたいのだ。その為に領地の開発を行ってるのだ」
「意味が分かりませんわ」
「王都に遊びに行くのが面倒だから、自分の領地を王都より発展させているのだ。地元で何でもそろえば王都に行かなくて済むじゃないか」
「たったそれだけの理由で領地を開発してたのか!」
「あのな~、持続的に王都より20年先を行くのは難しいんだぞ。地盤が無いと無理だからな」
「そんな理由で領地開発をしたのはあなたが始めてだと思うわ」
普通の人間には理解出来ないだろうが俺の出不精は本物なのだ、ついでに俺は人見知りも激しいのだ。もう一生分人に会って話をしたから学園卒業後は結婚式を挙げたら一生領地に引き篭るつもりだったのだ。
しかし俺の計画を邪魔する奴らが出てくるとはこの時点では気がついて居なかった。俺は王族や上級貴族達の執念深さを舐めていたのかも知れないな。




