意外と好評だった
グラハム・ゴールドの電撃婚約発表は学園のみならず直ぐに王都中に広がった。俺は乗っ取りや命が惜しくてした苦肉の策だったのだが、意外と王都や学園の女性たちに好感を持って受け入れられた。
「先輩、なんか俺人気が出てるんですけど」
「そりゃあね、女性は皆シンデレラストーリーが大好きなのよね」
「シンデレラ?」
今回の婚約は王女に迫られた大金持ちの子爵が、並み居る王女や上級貴族の娘を振って、貧乏な女性を選んだって事で平民の女性から熱狂的な支持を集めているのだそうだ。まあ貴族より平民の方が圧倒的に多いのだから数で圧倒するのは当然だな。
「へ~、そんじゃ折角侯爵の養女にして世間体を気にしたのは意味無かったんですかね?」
「そっちの身分を合わせるのは貴族向けの世間体だわ、平民には通用しないわね」
俺には良く分からない法則が有るようだな、平民と貴族は違う規則で生きてるらしい。俺にはさっぱり分からない理屈だ、多分俺の両親にも分からないだろうな。
「息子よ、でかした!」
「まあまあ。2人もお嫁さんが来るなんて母さん嬉しいわ!」
婚約発表したら直ぐに俺の両親が騎士団100人を連れて王都にやって来た。今回は俺の工房が造り上げた6輪リジットサスペンションの金属の装甲を持つ装甲馬車だ。矢や槍を軽々と跳ね返し天井には自動装填式バリスタを備えた新型だった。今や上級貴族が欲しがる馬車ナンバー1なのだ、因みに1台1億ゴールドで予約は2年先まで埋まっていると言う代物だ。
「有難うございます、父上、母上。ゴールドは頑張りましたぞ!」
女が寄ってきて五月蝿いから婚約した等と言える雰囲気でも無いので、俺は努力したアピールをしてみた。世間では努力に対して非常に寛容な事を知っていたからだ。因みに俺は結果が伴わなければそんなものは無意味な事を知っていた。また、馬鹿が努力すると非常に周りに迷惑な事は、国会を見たり大企業が簡単に倒産をすることを知っていれば誰にでも分かる事だった。
「それじゃあ相手の親御さん達に挨拶に行こうじゃないか!息子よ!」
「親戚付き合いは大事なのよ」
それから俺は両親と相手の親に挨拶回りだ。装甲馬車と騎士100騎を連れた俺達は先ずマミ先輩の男爵領へと向かった。
強力な騎士団と装甲馬車、そして男爵よりも上位の貴族の突然の来客にマミ先輩の実家は大騒ぎになった。そしてお土産として渡された男爵領が買えるほどのデカイ宝石と男爵領10年分の予算に匹敵する金塊を渡された男爵は固まっていた。
「ワハハハ!つまらない物ですがどうぞ!田舎の土産です」
「・・・こんな物を頂いて宜しいのですか?お返し出来る程の物を我々は持っていませんが・・・」
「まあまあ、何をおっしゃるのですか。大事な娘さんを頂くのですから、此れ位じゃとても足りませんわ」
グラハム家の財力を見せつけられた男爵は簡単に陥落した。逆らった所で勝てる相手では無いのだ、おまけに男爵にとっては宝くじに当たった程の幸運でも有るのだから。
「マミの事はお願いいたします、我エドワルド男爵家も全力でグラハム家に仕えさせて頂きます!」
マミ先輩は外堀を埋められて俺の嫁に成る事が決定した。でもまあ、マミ先輩が嫌なら手は出さないし、マミ先輩は自分の好きなように生きれば良いのだ。さて次は腹ペコの所だ。
「これはこれはグラハム閣下ようこそお出で下さいました」
「突然押しかけてすいませんね、息子共々宜しくお願いします」
「こちらこそ以前領民を救ってもらった恩は忘れておりませんぞ、娘共々グラハム家に忠誠を誓わせてもらいますぞ」
腹ペコの父親のシルバー卿にも宝石や金塊を渡したのだが、こちらはガンとして受け取らなかった。流石腹ペコの父親、頑固だった。その代わり領民共々グラハム領に移住したいとの事だったのでパパスは腹ペコの父親に領地と男爵の地位をプレゼントした。
「何だか悪いなゴールド、領民を受け入れてもらった上に親父を男爵にしてもらって」
「気にするな、グラハム領は土地と金が余っているのだ」
「うちも支度金をあんなに貰ったから肩身が狭いわ」
「気にしないで下さい先輩、あの程度の金は1年で又稼ぎますから」
「ワハハ!頼もしいな我が夫よ!馬車馬のように働いて旨いものを食わせてくれ」
「任せておけい!腹ペコよ、腹一杯飯を食わせてやるぞ」
「程ほどにねゴールド君、あまり目立つと上級貴族達が煩いわよ」
今回の件で俺は王族や上級貴族の一部を敵に回した様だ。元々はグラハム家の財産なので王家や上級貴族には関係無い話なのだが、彼等はグラハム家の財産を手に入れられなかった事を恨みに思っているのだ。俺は他人が誰と結婚しようが自由だと思うのだが、体面を気にする貴族達は自分の思い通りに行かないと何故か怒るのだ。だがまあ俺はブレーキ役のマミ先輩と俺の暴走を加速するターボチャジャーで有る腹ペコを手に入れたのだ。俺の無双はこれから始まるのだ。
しかし、人生って奴は上手く行ってると厄介事がやってくる。それは避けらないお約束の様なものだ、上手く乗り越えられれば笑い話になるし、負ければ人生の転落期がやってくるのだ。勿論俺にも貴族達の嫌がらせって奴が噛み付いて来ることになった。




