春休み
進級試験も無事に終わり、大賞を受賞した俺は里帰りだ。目立たない様にわざと力を抜いて受けたのに学年1位を突き抜けて大賞を受賞してしまった。これは学園に多大な貢献をした学生に送られる賞なのだそうだ、後から校長に言われたから間違いない。俺が広めたテニスのせいだったのだ、このテニス他の学校にも受けが良くて今年度から色々な学校で公式のスポーツとして行われる様になるという話だ。そしてテニス発祥の学園って事で校長の株も大分上がったらしい。
「まさかな~、健全な体に健全な精神が云々を皆が真に受けるとは思わなかったぜ」
「なんだヤッパリ嘘だったのかアレ?」
「嘘じゃないけど真理でも無いな、人間って体だけで出来てるわけじゃ無いからな」
「でも体を楽しく鍛えられるという点では素晴らしいですわ。大賞の価値は有りますわ」
「はあ、ありがとうございます。先輩」
大賞を受賞したので学園の生徒から嫌われるかと思ったら、意外と皆納得していた。それだけ学園の生徒にテニスが好感を持って受け入れられたって事だった。テニスのファンクラブの連中は俺にお祝いまで持ってくる奴までいた「どんだけミニスカが好きなんだよ!」って話だ。
今回の里帰りは憂鬱だ、メンバーが多くて濃ゆいのだ。ドワーフ先生とその仲間、校長まで何故か居るのだ。俺の田舎に温泉宿が出来たって噂を聞きつけた様だ。おまけに俺の知り合いなので5割引で宿泊出来るそうで、俺は大層先生達に褒められた。
「いや~!ゴールドの友達で良かったぜ!持つべきものは友達だな!」
「あんたは教師だろ!俺の友達じゃねーからな!」
最近俺に話しかけて来る連中が増えてきた、返事をしたり愛想笑いをするのが面倒なので迷惑なのだ。これが有るから俺は目立つのが嫌いなのだ、勝手に友人になったり敵になったりするのはやめてほしいものだな。俺は生まれついての一匹狼なのだから群れるのは嫌いなのだよ、生物学的にはイレギュラーな存在だって事は理解しているが、理解したからといって変わるものでもないんだなこれが。
「あ!見えてきたぞゴールド!ノボリだ!」
「まあ!又大段幕が有りましてよ!」
町に着く直前からノボリと横断幕が見えている。以前のやつよりもパワーアップして大きくなっている様だ。前回は10人位で笛や太鼓を叩いていた楽団が更に人数が増えてフルオーケストラになっている様だな。町も前回より大きく成って発展している様だ。農地開発で人口も急激に増えているって話だった。
町が大きくなっているせいか町の入口に門が出来ていた。結構な大きさで高さは10メートル程、入口の幅も15メートル程有る立派な奴だ。俺の実家は確実に発展していることがこの門からも分かるな。
「おい見ろよ!あれは笑えるぞ!」
「本当にな~」
ドワーフの先生や校長が大喜びで笑っている。計画通りに横断幕が出ていて嬉しいようだ。
【領地の誇りゴールド坊ちゃん!大賞受賞おめでとう!】
【スポーツの神!ゴールド坊ちゃん!】
【テニス界の女神!マミ様!】
いつの間にか色々な話が広まってる様だ、テニスを広めた事まで領地の人間にバレてる様だな。マミ先輩まで英雄扱いになってて傑作だ。
「先生!あれ!あれ!」
「む~!」
面白い横断幕が有ったのでドワーフ先生の肩を叩き返して大笑いしてやる。俺だけじゃなくてドワーフ先生の横断幕も出ていたのだ。
【採掘王!ドワーフ先生!万歳!】
【温泉王!ドワーフ先生!】
町の住民たちが俺達に手を振っているので俺は愛想笑いをしながら手を振り返した、ドワーフ先生は心底嬉しそうな顔をして両手を振っていた。先生は目立つのが好きなようで羨ましい。
「良くぞ帰って参った!我が息子よ」
「偉いわゴールド!帰る度に立派になるわね、母さん嬉しいわ!」
俺の親たちが満面の笑みで俺を出迎えている、阿呆だった俺が有名に成って嬉しい様だ。まあ親としてはそうなのかも知れないな。そして何故か俺の里帰りに付いて来た学園長が代表として挨拶している。
「盛大な歓迎痛み入ります、領主様。私学園長のカークと申します」
「おう!学園長でしたか!先生達の指導のお陰で息子も立派になりましたぞ!有難うございます」
「先生達が良いから息子の頭が良くなって嬉しいですわ!」
「・・・・・・」
親と学園長、そして先生達が盛り上がっていた。今晩は町のお祭りをするのだそうだ、盛大に料理を振舞って町の住民全員で俺の大賞受賞を祝うらしい。金山も臨時休業にしたそうだ、どんだけ喜んでいるのか想像もつかない状態だった。
そしてその日の夜は城に全員泊まり夜は宴会だった。先生達は領主の賓客扱いとなって嬉しそうだった、そして城の中の豪華な装飾品や豪勢な食事を見て驚いていた。
「お前の家ってスゲ~金持ちだな!」
「そうみたいだな」
「こんな旨い酒始めて飲んだぞ!」
ドワーフ先生は美味しい酒と料理を食べて感動していた。腹ペコやマミ先輩もグラハム家の財力を知って驚いていた「噂で聞いてたのより10倍は凄い!」のだそうだ、俺は金ピカの装飾品なんか見ても何も思わないのだが、見る人が見れば色々と思う様だった。
そして宴会の次の日に先生達は温泉宿に移動した。これから3日程湯治をするのだそうだ、俺達も領民にテニスを教えてから合流する事になった。テニスはグラハム領の公式スポーツになったらしい、パパスが決めたからにはそうなんだろう、な何せこの領地ではパパスが法律だからな。
「息子よ、領民にスポーツを教えてやってくれ。健康な領民を育てるのだ」
「そうそう、まず体が丈夫じゃなくてはね」
「分かったよ。先輩と腹ペコはトッププレーヤーだから任せてよ」
次の日から2人のテニスを見せる事から始まったテニスの広報活動は、何もする事のない田舎に爆発的に広がって行った。2人には毎日サインをねだるファンが出来、テニスの道具を皆が欲しがる自体となった。
そして俺の工房の支店と屋台の支店をグラハム家の領内に出す事になった、従業員は領内の若い連中を雇えば良いだろう、良い景気対策に成って俺も儲かりそうだ。
「また儲かりそうだな、ゴールド」
「だよな、儲からなくても良いのにな」
「勝手に向こうからお金が寄って来ますわね。人徳ってやつでしょうかしら?」
何故か物事が上手く行く。俺には幸運の女神がついている様だ、予想の通り等と言うセコイ儲けとは違う斜め上の成果だった。まあ親が領主なので領内の経済活動は自由に出来るのが俺の強みだな、領内では無敵状態だからな。




