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チート能力は親の金でした  作者: ぴっぴ
第1章 学園入学編
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学園初日

 メイドのマリーに起こされて朝食を食べた俺は学校に行くことになった。屋敷の玄関前には既に馬車が待機していた。2頭立ての豪華な馬車だ、金ピカで成金丸出しの悪趣味な馬車だった。扉の所には紋章なのだろうかツルハシが交差した絵が書かれていた。


「おいおい、こんな趣味の悪い物に乗って行くのか?」


「そうでございますが・・・それが何か?」


「金ピカじゃないか、目立ち過ぎだろ」


「当家は金持ちですので目立つのは宿命でございます」


 なんていう嫌な貴族なんだろう、これみよがしに金をひけらかしている様だ。謙虚に生きるとか控えめとかはまるで無い様だな。これじゃあ相当な風当たりの強さが予想されるな、少なくとも俺のクラスにこんな奴がいたら嫌われるのは間違いない。

 そう言えば家が金持ちで高級車で送られてくる連中の性格は酷い奴が多かった事を思い出した。あの連中は親の傲慢さを餓鬼の癖に持ってる嫌な連中だった。やたらと色々なものを自慢していた様な気がする、自分の実力じゃなくて親の金で買ってもらっただけなのにな。

 

 豪華な馬車に乗り5分ほど経ったときにマリーがおもむろにこう言った。


「着きました。おぼっちゃま」


「何だと!まだ5分しか経ってないぞ。家の直ぐそばじゃねーか!馬車に乗る意味有るのかよ」


「ちっ!・・・・・・坊ちゃんが歩くのを嫌がるから毎日送り迎えしているのでございます。・・・それが何か?」


 何という根性なし、俺は馬鹿なのか。歩いても時間は変わらないだろうに、いや待てよ確か治安の悪い所では安全の為に送迎をする事が有るな・・・俺は金持ちのガキだから誘拐対策で馬車に乗っているのかも知れない。


「もしかして誘拐対策で馬車で乗るのか?」


「いえいえ、一人で歩いていると虐められるから馬車で送迎致しております」


「いじめ?・・・なんだそれ・・・聞いたことは有るが・・・」


「坊ちゃんは良く虐められてるそうでございます」


「うおお~!!!!」


 俺は今猛烈に感動している、この俺様が他人からイジってもらえる日が来るとは。今日は最高の日になるかもしれないな、イジメっ子とかいう連中にイジってもらえるように頑張らなくては。俺は両手の拳を突き上げて雄叫びをあげた、そして馬車の天井に手をぶつけて涙目になった。ふふ・・・軟弱な拳で良かった、以前の俺なら天井をぶち破って馬車を壊していた所だ。


「頭は大丈夫ですか?坊ちゃん」


「頭は大丈夫だ、ぶつけたのは拳だからな」


 馬車からメイドに下ろされた俺は、更にメイドからデカイ籠を渡された。


「何これ?」


「坊ちゃんのお昼ご飯でございます。坊ちゃんが食堂で食べるのが嫌だと我侭を言いやがりますので、私がわざわざ早起きして作りました」


「ああ・・・ありがとう」


「では坊ちゃま、今日も頑張って下さいませ」


メイドを乗せた馬車が屋敷へと帰ってゆく、学校が終わる時間には又迎えに来てくれるのだそうだ、俺はご機嫌で馬車に手を振ってやった。メイドは微妙な顔をして俺の方を見ていた。

 さて困った、校門の前に下ろされたのは良いが、俺はここがどこだか分からない、勿論自分の教室の場所など分かるはずもないのだ。まあ、焦っていてもしょうがないイジメっ子とやらが絡んでくれる様なのでその時に連れて行って貰えば良いだろう。取り敢えずすることが無いのでぼ~と立っていたら話しかける奴がいた。


「坊ちゃん、おはようございます」


「?・・・誰だお前?」


「・・・嫌だな~坊ちゃん。キリマンジェロですよ、坊ちゃんの唯一の友達の」


「ふ~ん」


 目の前にいる色白の影の薄そうな男は俺の知り合いらしい。この俺に友人が居るとはビックリだこの男は変わり者に違いない。もし俺がこの世界に居たら俺のようなクソ餓鬼と友達になる事等有り得ない。


「お前変わった奴だな、俺の友達とか馬鹿じゃねーのか?」


「え~!!!それを坊ちゃんが言うの~」


「ワハハは~、実は俺は記憶がなくなったのだ。以前の事は何一つ覚えて無いのだ!」


「うへ~!坊ちゃんが本当の馬鹿になっちゃったの?」


「失礼な奴だな、友達じゃなかったのか。俺は馬鹿じゃねーから!馬鹿って言う奴が馬鹿だって婆ちゃんがいってたぞ」


「もう良いよ、早く教室に行こう。遅刻しちゃうよ」


 こうして俺は自分の教室に連れて行ってもらった。そして教室に入ってみたら何故か教室にいた連中が俺の方を見て見ないふりをしていた。成程・・・無視って奴だな、まあ俺は全然気にならないけど、気の弱い奴なら気にするかもしれんな。


「おいキリマンジェロ、俺の席は何処だ?」


「坊ちゃんの席は一番後ろだよ」


 一番後ろの自分の席について教室を見渡す。全部で40人のクラスの様だ、歳の頃は15歳くらいか?高校1年生って感じなのか。どうも色白で軟弱な餓鬼が多い様な気がする、俺みたいな成金の餓鬼が通う学校なのかな?


 その後教員らしき者達が授業らしきものをやっていたが俺には全然分からなかった。全然分からないが授業中に熟睡するのは得意だったので昼休みまで大人しくしていた。

昼飯の時間になったので教室の殆どの学生は何処かに行った、多分学食でも有るのだろう、俺は昼の弁当を持たされているので教室に残っていた。そして横に置いていた大きな籠を開けて見るとサンドイッチと果物がどっさり入っていた。とても一人で食えるような量じゃ無いが、食えるときに食って、寝れる時に寝るのは野良人間の基本なので有り難く頂くことにする。


「・・・・・・」


 教室の隅にいる女の子が物凄く睨むので食べにくい。俺は食事を人に見られていると気になるのだ、無視してもらうのは全然気にならないのだが。


「おい!何か用か?用が有るなら言え」


「別に・・・・・・」


 俺は遠慮なんてしないし空気を読まない男なので、俺を睨んでる女の子に声をかけた。すると当然の様にすげない返事を返された。だが俺の耳は彼女の腹の鳴る音を確かに捉えたのだ、俺は目と性格は悪いが耳だけは良いのだ。


 でかい籠を持って女の子の隣の席に座る。女の子は物凄く嫌そうな顔をして横を向いている。俺を完全に無視するようだ。しかし俺は空気を読めない男なのだ、俺に無言で何かを分かれと言うのは無理なのだ。そう俺ははっきりと言われなければ分からない・・・いや違うな、ハッキリ言われてもどうでも良い。俺は自分がやりたいようにやる男なのだ。


「パン食うか?」


 俺はバスケットから食い残しのサンドイッチを取り出して女の目の前に突き出した。向こうを向いているが鼻がヒクヒクしている。俺はこんな状態をよく知っているのだ。猫や鳥を餌付けするときに連中が警戒している時にそっくりだ。


「大丈夫。毒は入ってない」


 そう言って俺は卵サンドを食って見せた。そして俺が差し出しているのは俺の嫌いなキュウリのサンドイッチ全部だ。早い話、俺が嫌いなサンドイッチを全部この女に食ってもらいたいのだ。


「なんのつもりだ!私を笑いに来たのか!」


「いや、一人で食えないから手伝って貰いたいだけだ」


「何!私に手伝ってもらいたいのか?」


「そうだ、これもついでに頼む」


 俺は嫌いなサンドイッチにプラスしてバナナや林檎も差し出した。俺はフルーツ等軟弱な食べ物は嫌いなのだ。こういう果物とか甘いものとかは女子供の食い物だ、漢の食物では無い。


「・・・・・・美味し~!!・・・」


 目の前の女の子は脇目も振らずに食べていた、ツギの当たった服に痩せた体。どう見ても貧しい様だ、まあ親が金持ちじゃないだけだから彼女のせいじゃ無い。俺は金の有る無しで差別する事はないからな。

 その後、バスケットに残っていた食物を全部やったら喜んでいたので俺は自分の席に帰って、また午後からの授業を受けた。勿論午後の授業もサッパリ分からなかったが、分かったフリをして時折頷いてみたりしていた。


 そして放課後、俺はイジメっ子とやらが絡んで来るのをウキウキして待っていたのだが誰も俺には近づいて来てくれなかった。そして迎の馬車に乗せられて屋敷へと連れて帰られてしまった。何の事は無い、俺は学校に昼飯を食べに行っただけだった。





 

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