はふ~また金が増えた
田舎から帰ってきた俺は又頭を抱えている。そうだパパスとママスから貰った金だ!小遣いなら何か買って終わりなのだが5億ゴールドは額が大きすぎる、小心者の俺は胃に穴が開きそうだ。話には聞いたことがあるが「金が金を呼ぶ」って奴は本当だな、金は寂しがり屋さんだったのだ。仲間を大量に呼ぶ雑魚モンスターのような奴だ、いやいや・・・モンスターより危険だな、在るだけで俺の胃を攻撃してくるからな。
「隊長、商業ギルドに行くぞ」
「投資ですか?」
「そうだ!こんなに金が有ったら俺の胃に悪いからな」
俺の精神と肉体の健康と安全の為に金には何処か違うところに行ってもらうことにした。金が有ると屋敷でノンビリする事も出来ないじゃないか。
護衛騎士10騎を引き連れ商業ギルドへ向かう。俺が金を持っていると落としそうなので隊長が5億ゴールド入ったカバンを背負っている。中は大型金貨がぎっしり詰まっているから重いのだ、多分50キロ位は有るだろう。
「ごめんなさいよ!ギルド長さんいますか?」
「ゴールド様、ようこそお越し下さいました。直ぐに呼んでまいります」
流石はゴールド会員、受付のお姉さんまで俺の顔を覚えているようだ・・・いや待て待て、顔を知れれてるって事は俺に危険が有るって事だ、金持なのが知れ渡ると俺の身に危険がやって来るかも知れない。一番ありそうなのは誘拐だ、金目当てで誘拐したら俺の親なら幾らでも金を出しそうだ。まあ後から仕返しに軍隊を差し向けそうだが。俺の思考がドンドン暗い方へシフトしてゆく、早く金を手放さないと悪いことが起きそうな気がしてきた。
「ゴールド様お待たせしました」
「おう、ギルド長待ってた。投資したい!」
「それは・・・チョット・・・申し上げにくいのですが・・・」
「え~!駄目なの」
その後ギルド長から何故投資出来ないのかの説明を受けた訳だが、今いる理事達が自分の権限が減少するのを恐れて俺にこれ以上の投資をさせたくないので圧力を掛けて来ているのだそうだ。それに理事達の中には上級貴族も居るので商業ギルドと言えども逆らえないって話だった。
「ふむ、既得権益を守りに来てるって訳か」
「はい、その通りでございます。中々難しい御方達でして商業ギルドとしても逆らえません」
「ふ~ん、俺は商業ギルドを支配しようとは思ってないんだけどな。まあ良いや、じゃあ物件を買いたい」
「どの様な物件でございますか?」
俺の目的は屋敷から大金を無くす事なので、商業ギルドに投資しようが物件を買おうがどうでも良いのだ。以前から欲しかった屋台の旗艦店を買うことにする。旗艦店を持つ事で俺の使用人たちの負担を減らさなければ逃げ出されてしまいそうだからな。
「いい場所に有る広めの土地のある物件が欲しい。平民向けの食物屋をする」
「ならば丁度良い物件がございます」
商業ギルドに金を借りて返せなかった者の土地や建物が多数有るので良い奴を安く売ってもらった。改装もついでに商業ギルドに頼んだが、まだ金が余っている。これは更に使えと言う神の思し召しに違いない。
「旗艦店は其れで良い、全部で2億ゴールドだな」
「はい。本当に宜しいのですか?食べ物屋では元が取れませんよ?」
「それ単体では20年経っても無理だな、だが方法は有る。内緒だけどな」
「ふむ、それは楽しみですな」
「もう一件物件が欲しい。今度は工房だ、腕の良い工員込で欲しい」
「工房ですか?どういった工房でしょうか色々な種類の工房が有りますが」
「ふむ実はな・・・・・・」
俺はギルド長に俺が造ろうとしている物を説明した。俺が欲しいのは色々なものを作り出せる技術者なのだ、想像力は必要無いが俺の引いた図面通りに作る能力の有る者が欲しいのだ。
「腕が良くて想像力の無い技術者が欲しい訳ですか・・・」
「良く居るだろう?新しい物を開発して売れなくて失敗する奴。市場調査を全くしない奴」
「成程!それなら居ますぞ。売れなくて工房毎差し押さえている物件が有ります」
俺は事業に失敗して商業ギルドに差し押さえられてる工房を職人ごとギルドから買い取った。買取額は1億ゴールド、職人が5人ほどの小さな工房だが、職人の技術って奴は金では買えない貴重なものだから全然後悔はしなかった。売れる商品が造れなかっただけの事なのだ、それよりも新しいものを創ろうとした意志や技術を俺は買うのだ。
「隊長!工房に行くぞ」
「了解しました」
騎兵10騎と共に工房に押しかけたら物凄く驚かれた。工員たちは騎士達に借金の方に奴隷にでもされるんじゃないかと怯えていた。
「ど・・・どういったご用件でしょう?」
「この工房は俺が買い取った!今からお前らは俺様のものだ!」
「ひえ~!!」
ドワーフの職人達が俺達を見て怯えていたのでついやってしまった。これじゃあ悪徳貴族になってしまうじゃないか。その後親方に俺の欲しいものを造るように命令を出した。
「これとこれを造ってくれ、出来るか?」
「台車は直ぐに出来ます、3日位です。こっちの奴は少し時間が掛かりそうです」
「分かった、それで良い。頑張ってくれ!親方」
「はい頑張らせてもらいます」
「それじゃあ運転資金として5千万ゴールド置いていく」
「そんなに頂けるんですか!太っ腹ですね」
「フフフフ、持ち逃げしたら俺の騎士が地獄の果てまで追いかけるからな。心して使えよ」
こういう時は俺の周りの騎兵達は役に立つ、何せ見た目からして恐ろしいのだ。全員鍛え上げられた騎兵だからな。騎兵って奴は育てるのに非常に金が掛かるのだ、だから優秀な歩兵から選ばれてなる職業なので一般の兵士より遥かに強いのだ。うちの連中はおまけに体が大きいものばかりで威圧感は王都の親衛隊以上だった。
何とか3億5千万減らした俺は護衛と共に屋敷に帰った。まだ1億5千万残っているが、工房の予備費や旗艦店の宣伝や人を雇えば直ぐに減るはずだ。早く使ってしまわねば俺の胃がやばいのだ。
「やあ隊長さん、お陰で助かったよ、これで皆と旨いものでも食べてよ」
「私達は何もしていませんが?」
「嫌々、隊長さん達が居るだけで俺が有利になるんだ」
隊長さんに小遣いを渡して皆と旨いものでも食ってもらう事にした。給料は子爵家から充分出ている様だがこんなのは気持ちの問題だからな、主人の気前が良いと働きやすいのだ。俺は働きやすい職場を目指しているからな。
しかしこの件で騎兵達に好かれた俺は後悔する事になる。この日から騎兵達に可愛がられるようになったのだ、彼等の可愛がりは普通の人達とは大分違うのだよ。
「坊ちゃん!まだまだ!」
「もう嫌だ~!休ませてくれ~!」
「そんなんじゃ自分を守れませんぜ!さあ立って!」
そうだ、彼らに毎日戦闘訓練で可愛がられているのだ。才能が有って実戦経験豊富な騎兵が10人で俺を虐めるのだ、毎日が生き地獄だった。大体幾らやっても俺は強く成らないんだぞ、才能が無いってのはそういうモノなのだ。だが幾ら言っても才能の有る彼らには分からない様だった。
この怒りは何処へぶつければ良いのだろう?俺だけがきついのは嫌だ仲間が欲しいのだ。
「というわけで、屋台会議を始めます。私から重大発表が有ります」
「「「うえ~、又ですか坊ちゃん。もう私達限界ですよ」」」
俺は屋敷の従業員を集めて会議を開いた。彼等の負担を軽減してあげるのだ、俺は良い雇い主だからな。しかし彼等は露骨に嫌な顔をしていた。屋台が増えるたびに彼等の仕事が増えて行くのだ、俺だって嫌だろうと思う。しかし経営とは毎日が戦いなのだ指揮官は甘いことばかり言っているわけにはいかんのだ。
「皆さんにお知らせです、この度商業ギルドから店を買取りました。ここを屋台の本店にします」
「また仕事が増えるんですか?勘弁して下さい!」
「いえ減ります、調理師のバーグさんは部下を雇って下さい。プロの調理師を2名、それであなたは管理者となりますので仕事は減ります。さらに助手は学生のバイトを派遣します」
「ありがとうございます!坊ちゃん。感謝します」
これに伴ってメイドのマリーは売り子達の指導者の地位を与えて売り子を3人程雇ってもらう事にした。そして執事のセバスには完成したハンバーガーを各屋台に配送してもらう輸送隊の指揮官の地位を与えた。
つまり俺の使用人達は3人とも管理職になったのだ。そして各自に管理職手当を月3万ゴールド与える事になった。
「それでは皆さんに管理職手当として毎月3万ゴールド支給いたします」
「「「うお~!!マジですか、坊ちゃんありがとうございます!」」」
みんなは管理職手当で喜んでいた、俺は彼らを見て微妙な顔をしていたと思う。なにせ管理職ってロクなものじゃ無いからな。僅かな手当で滅茶苦茶残業させられて、部下達の面倒まで見なくては成らないのだ。俺は間抜けな部下を20人も持たされて毎月100時間以上残業をさせられていた頃を思い出していた。あれから俺は絶対管理職には成らないって誓ったのだ。時間外手当が計算したら時給200円だったからな。




