パパスとママス
家に帰って俺は驚いた。なんと白馬の6頭建の金ピカの馬車と金ピカの鎧を着た騎士が10人程並んでいたのだ。
「何だこれは!金ピカだらけじゃねーか!」
「領主様の馬車と護衛の騎士達です、ぼっちゃま」
物凄く強そうなフル装備の騎士が2列になって並んでいる間を俺は家の方に歩いて行く。全員180センチ以上の体格の騎兵達だ、見るからに強いって感じだ。普通の兵士よりヤバそうな感じがビンビンする。
「お勤めご苦労さんです!坊っちゃん!」
凄く怖い顔の騎士が俺に挨拶をしている、自分の家じゃなかったら逃げ出していた所だ。絶対こいつ何人か殺してるよな。
「おう!ご苦労さん」
弱気を見せると食い殺されそうなので虚勢を貼ってみた、怒り出したら素直に謝ろうと思う。目を合わせると怖いので正面を向いたままで屋敷に入る。なんだこいつ等山賊じゃないのか、絶対カタギの騎士じゃねーだろ。俺の親って何者なんだ。
「おう帰って来たか!我が息子よ!」
小太りのオッサンが俺に話しかけてきた。身長は160センチ位かな、何だか冴えないオッサンだった。隣にいるオバさんは俺の母親なのかな?両方小柄で全く威厳の欠片も無い人間だった。しかし、着ている服は両人とも豪華だ、金ピカの飾りを体中に付けて、両手には全部の指に馬鹿デカイ宝石を付けていた。
「お久しぶりです、父上」
「へっ・・・、何でマトモな挨拶をしておるのだ?」
「何の事でしょう?」
「いや、お前がマトモな挨拶をしたのでビックリしたのじゃ」
「まあ、立派になって母さん嬉しいわ!国一番の学校に行かせた甲斐が有ったようね!」
「おう!そうか、これが教育の成果なのか!流石エリート学校だな。寄付した甲斐が有ったな!」
え~俺ってそんなにお馬鹿だったの。親に心配される位、しかも親バカでコネで学校に入れたってのも事実だったの。そりゃあ馬鹿にされるし嫌われるハズだわな。
その後親と晩飯を食べるのだが、俺が学校で好成績を取ったといったら驚いていた。まあ、予想はしていたがな。母親は泣いていたな、父親も感動の余り天井を向いて涙をこぼすのを我慢していた。
「お前、立派になったな!父さんは今猛烈に感動している!」
「母さんも嬉しいわ!出来損ないじゃ無かったのね!」
「・・・・・・・」
幾らなんでも失礼だろうこいつ等、俺が息子だったら傷つくと思うぞ。まあ俺は全然傷つかないんだけれども。
「旦那様、マリーは坊ちゃんが頭が良くなった理由を知っています!」
「ほう、それは興味深いな。言ってみろ」
何をいう気だマリー、俺の秘密を知っているのか。もしかして転生だか入れ替わりを知っているのか。嫌々何を言っても俺の親が信じるハズ無いな、田舎のおっさんとおばさんだからラノベ何か知るわけない。
「坊ちゃんは頭を強く打ったんです!それから頭が良くなったんですよ、多分寝ていた脳細胞が動き出したんです!間違い有りませんです」
「なんと!頭を打ったら賢くなっただと!う~む、我が息子らしいな」
「そうですね、ウチの息子はツキが有りますからね」
俺の両親はマリーの妄想に納得してしまった様だ、折角俺が考え出したカバーストーリーが無駄になってしまった。俺は神様から神託を受けて生まれ変わった事にしようと思っていたのに残念だ、俺が考えた話の方がカッコイイんだけどな。
それから両親による俺の回想が始まった。何でも生まれつきフラフラ出歩く癖の有る俺が、ある日どっかから手に金塊を持って帰って来たのだそうだ。それこそが俺の領地に眠っていた金山の元になった洞窟から俺が発見した金塊の一号だったのだそうだ。
なんとビックリ、俺が金鉱の第一発見者だったのだ。つまり俺のお陰で両親も俺も金持ちになったのだそうだ。成程それで俺は大事にされていたのか、納得した。俺は銀のスプーンを持って生まれてきた人間では無かった訳だ、俺は自力で金のスプーンを手に入れるタイプの人間だったのだな。頭は悪いがツキの有る人間って訳だな。
「父上、母上、大事な話が有ります」
「うむ、言ってみろ。息子よ」
それから俺は領地の金がその内取れなくなってしまうので,今の内に金を稼がなくてはいけない事を両親に話した。その話を聞いた両親は絶大な反応を示した。
「その話は本当か!」
パパスはウルウルした目で俺を見ながら言った。
「本当です、美味しいものでも食べたら無くなるでしょう。金も同じ事です」
「ひえ~、また貧乏に戻るの!」
ママスはモンクの叫びの様なリアクションだった。
「どうすれば良いのじゃ!儂等は頭が悪いから分からんぞ!」
「お任せ下さい!私が何とか致しましょう!」
「頼むぞ息子よ!」
「やっぱりツイテルわね!いい時に頭が良くなったわ!」
俺の両親は凄い田舎者の様だ、簡単に俺の言うことを信用してしまった。ハッキリ言って心配だな、これなら詐欺に引っかかるのは確実だ、金が無くなる前に詐欺で俺の領地は無くなるのではなかろうか。
「ではこれからの計画を話します。これを実行して時間を稼いで何とかする予定です」
「分かった!前の様に一日一食は嫌なのじゃ!」
「ではよく聞いて下さい!金は使うと減ります!節約して下さい」
「何でも言うことを聞くから何とかしてくれ」
俺は最近考えていた計画を両親に話す、本来は領地を見てから色々考えたいが今の時点ではできる事は少ないのだ。兎に角時間を稼ぐのが一番だ、ならば一番効果的な方法は減産だ。金を掘り出すのを今の半分にすれば無くなる期間を今の2倍に引き伸ばせる。強引だがやるしかない、現場や各方面から文句を言われるのは間違いないな。
「でも半分しか金を取らなくなったら職人達が騒ぎ出すぞ」
「神託が降りた事にして下さい。全部神様のせいにします、問題有りません」
「そんな無茶な!」
「では人道的に危険だから鉱山の安全点検の為と言って下さい。人道主義の美旗で相手をぶん殴ります!」
「ひえ~!凄く黒いな息子よ!」
「まあまあ、立派になったわね!母さん嬉しいわ」
それから家族で夜遅くまで領内の改善策について話し合った。俺が紙に改善策を書いていると両親が嬉しそうに「凄いな、難しい字を書いている」とか「まあ字が書ける様になったのね、母さん嬉しいわ」等と言っているのを聞いて少し凹んだ。
「でも息子よ、失敗したらどうしよう」
「また一日一食になってしまうわ」
「大丈夫です!俺は今屋台で月30万程稼いでいますので、親子3人で普通に食っていけますから!」
「なんと!なんと!そこまで頭が良かったのか、流石我が息子じゃ!頭を使うことは全て任せたのじゃ」
「まあ本当に立派に成ったのね」
少し両親が不安だが、俺がしっかりしないと行く末は不安しかないようだ。明日から更に頑張らねばならない様だ。つまり明日からはオークを狩りまくるしかないな、俺は相棒の棍棒を握りしめて気合を入れた。
そしてパパスは俺と一緒にダンジョンでオーク狩りを、ママスはハンバーガーの下ごしらえをする事になった。




