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チート能力は親の金でした  作者: ぴっぴ
第1章 学園入学編
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死んだ覚えは無いのに、生まれ変わった様だ

 俺はトラックに轢かれて死んだわけでもなく、スライムに転生したわけでもなく、勿論ゴブリンに転生した訳でもなかった。気がつけば王様や王女が居て魔王を倒せと言われる訳でもなく、神様が親切に現れて俺に色々な説明をしてくれる事もなかった。


 ただ気がついたら15歳のひ弱な少年になっていた。それも勉強も運動も出来ないクラスで最低の嫌われ者の馬鹿餓鬼にだ。


「ぼっちゃま!ぼっちゃま!大丈夫ですか?」


 変な声で起こされた俺は体中が偉く痛かった。目を開けてみるとメイド服を来た可愛らしい女の子が立って居た。


「あんた誰?」


「へっ?・・・・・・ぼっちゃま、とうとう完全な馬鹿になっちゃったんですか?」


「・・・・・・」


 何だか物凄く失礼な女の子だった、大体メイドのコスプレをしている残念な女子に言われたく無い台詞だった。確かに抜けた所は有る、素直に認めよう。だがこれでも一応年上だし小娘に馬鹿扱いされる謂れは無いはずだ。


「もう一度聞こう、小娘。お前は誰だ!」


「あたしは坊ちゃんのメイドのマリーですよ。忘れたんですか?もう5年も面倒を見ているのに」


「そんな事は知らん!始めて見る顔だ」


「・・・もしかして・・・頭を酷く打ったから・・・記憶喪失に・・・」


 メイドの格好をした女の子がオロオロしている。どうも冗談を言ってる訳ではなさそうだ、しかし俺はこの子と遊んでる暇は無いのだ。メタボ対策で歩いて痩せなくては血圧がやばいのだ。隣のオロオロしている子を無視して体を起こすと体中に激痛が走った。


「いててて・・・体中が痛い!」


「坊ちゃん!起きちゃダメです。坊ちゃんは学校で階段から落ちたんですよ!寝てなくちゃダメです!」


 起きようとしたところをメイド娘に無理やり押し倒される。全身が痛む、打撲の他に骨折している所も有るようだ。仕方ない大人しくしておこう、それにこれでは痛くて逃げられそうに無いからな。


「坊ちゃん、これを呑んで下さい」


「何だそれは?」


「中級ポーションですよ、骨折位までなら直ぐに治ります」


 メイドがガラスの小瓶に入った液体を俺に差し出した、ラノベ小説の定番の回復薬だ。まあどうせ中身は栄養剤か何かだろう、メンヘラコスプレ娘を刺激すると危険らしいので大人しく飲む事にした。


「げ~!不味い!」


 栄養ドリンクなら甘くて美味しいハズなのに予想外に不味い。青臭くて苦いのだ、しかし俺は一度口に入れたからには絶対に吐き出さないので全部飲み込んでやった。吐き出すとメイドに負けたみたいで嫌だったからな。


「ふふふ、全部呑んでやったぞ!」


「当たり前じゃないですか、坊ちゃんは馬鹿なんですか」


「何だと貴様!」


「元気になられた様で結構な事です。ではごゆっくりお休み下さい」


 気がつくと体の痛みが消えていた。骨折を含む打撲多数で俺の見立てだと全治3週間位の怪我だったはずだ。一瞬で治るはずが無いのだ、つまりここは俺のいた世界とは違うのか? いや、俺が催眠術や思考誘導されている可能性が残っている・・・・・・訳は無いな。俺は催眠術なんてかからないし洗脳される程純粋な人間でも無いからな。

 ベットから降りて部屋を見てみると随分豪華な部屋だった、高級そうな家具や置物が大量に置いてある20畳程の部屋だ。どうやら俺は金持ち子供の様だ、専属メイドまで居るのだから親はかなりの金持ちなのだろうな。そして窓を見てみると俺の姿が写っていた、神経質そうで痩せた子供だ。


 仕方ない、認めよう。俺は異世界に転生させられた様だ、ラノベの主人公か脇役をやらされる様だ。神様の説明も無く王様の説明も無いので俺は脇役なのだろう、世界を救ったり魔王を倒す事は期待されて無いのだろうな、気楽で宜しい。つまり俺は自分の事だけを考えて生きていけばいい訳だ。そして俺は部屋を出てメイドを探す、状況を把握する為に。


「マリー!」


 廊下に出て大声を出す。しかし弱々しい声だ、昔の俺なら屋敷中に轟く程の大声が出せたのだがこの貧弱な体では声も弱々しい様だ。


「どうしたんです? ぼっちゃん。大声なんか出して、何時もの様に部屋に引き篭っていて下さい」


「俺は引き籠もりだったのか?」


「本当に忘れたんですか?」


「そうだ!記憶が全くないから教えてくれ」


 それから俺は俺の事をメイドから色々聞かされた。俺は金持ちの貴族の長男なのだそうだ、そして今は王都のエリート学校の1年生。そしてこの家は俺が王都の学校に通うためだけに買った屋敷。因みに親は子爵と言う位の貴族、5年前は騎士だったのだが出世したらしい。


「つまり俺はコネでエリート学校に入った、金持ちのバカ息子って事か?」


「そうですね。コネじゃなくて金で入った成り上がり貴族のバカ息子です」


「成程、それじゃあ学校でも風当たりが強そうだな」


「毎日苛められて泣いて帰って来てました、でももう大丈夫そうですね」


「そうか?」


「以前とは全然違いますからね。以前は私の顔色を伺う程の小物でしたよ、胸とお尻ばかり見てました」


 良く見てるとメイドは結構可愛かった、成長すれば美人になるだろう顔立ちだ。あと3年もすれば美人メイドに成るだろう、体も結構メリハリが有る155センチ80・55・80って感じかな?


「もう少し育てばいい体になりそうだな」


「どこの親父ですか、チラ見していた時の方が可愛げが有りましたよ」


「それは悪かったな、俺に可愛げを期待しないでくれ」


 見た目は神経質そうな子供だが中身は俺なのだ、可愛げなんてものはとうの昔に擦り切れて無くなった人間なのだ。


「おいマリー、何で俺の後ろに立ってるんだ?」


「何でと言われましても・・・坊ちゃんの食事の介助でございます」


「そんなところに立ってないで一緒に食おうじゃないか、食ってる所を見られていると落ち着かないからな」


「お気持ちは嬉しいのですが、使用人は主と一緒に食事するものでは有りません」


「では主として命令する。一緒に食事をするのだ」


「はあ~まったくしょうがないですね!命令だから従うしかないですね、私はしがないメイドですから!」


 少し嬉しそうな、それでいて嫌そうな微妙な顔をしてマリーは俺の隣で夕飯を食べだした。俺が口の周りをソースで汚したりするとちゃんとナプキンで拭いたりして面倒をみてくれた。ついでに俺の日常の行動について聞いてみた。


「マリー俺は明日からどうすれば良いんだ?」


「坊ちゃんは学生ですから毎日学校に行ってください。学生の本文は学ぶことです」


「それは構わないが、俺は学校が何処に有るかも知らんのだがな」


 学校に通って学生する事は問題ない、退屈だが黙って座ってれば良いだけなので働くより楽だ。それに俺はこう見えても頭は良い方だ・・・・・・いや違うな・・・・・・頭は悪いがテストは出来る方だ。


「問題ありません、坊ちゃんは毎日馬車で送り迎えいたします」


「へ~送迎付きなのか、俺の親は金持ちなんだな」


「そりゃあもう、坊ちゃんの家は王都でも金持ちで有名ですよ」


 成程俺の親は金持ちなのか、金持ちになったことは無いから分からんが俺の人生はイージーモードなのかも知れないな、少しこの世界が楽しみになってきた。


 風呂に入って早めに休むことにしよう、明日に備えなくてはな。なにせ自分の名前もまだ知らないのだ、まあ名前等は興味ないからどうでも良いな。

 異世界に転生し自分の名前も知らないのに平気な顔をして豪勢なベッドに眠る主人公。ブラック企業で鍛えられた主人公はこの程度の逆境ではくじけない、なにせこの男、空気と水さえあれば何処ででも生きていけると思っている野良人間であった。



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