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ものまね勇者は聖剣使い  作者: ぐっちょん
第1章、俺は聖剣使い。
4/20

ブックマークありがとうございます。

嬉しいです。


更新、遅くて

すみませんm(_ _)m

 ――ベジタル王国――



「獣人国からの使者は帰ったか……」


「はい陛下。しかし、先延ばしもそろそろ限界かと……」


「テデルよ、それくらいワシでも分かっておるわ。困ったのう。

 邪気を放つ魔物が目撃されたから早く勇者を派遣しろと言うのだろう……何度も聞いておるわ……」




 所属する国により多少の違いはあれど、勇者の役目は魔物の討伐や、冒険者ギルドで滞っている難易度の高い案件消化を義務づけられている。


 その中でも、最も優先されるべき事項が、邪気を放つ魔物の討伐である。

 邪気を放つ魔物は聖剣でないと討伐できない。厳密にいうと倒すことはできるが完全な討伐はできない。邪気を払う聖剣でトドメを刺さないと短い周期でより強い力を宿して復活しまう。更に何度かその復活を繰り返すと魔王化してしまう。


 では手を出さず放置をすればよいと思うが、そうもいかない。こちらも周りの魔物を喰らい魔王化する。


 魔王化すると勇者一人での討伐は厳しくなり、最低三人の勇者で挑まないと討伐できないほど、強力な魔物となり、破壊活動を始めてしまう。


 だからこそ、勇者は魔王化する前に邪気を放つ魔物を討伐しなければならないが、その負担も大きい。


 それ故に勇者は富、名声、力を手に入れている。



「はい。獣人国には勇者が一人もおりません。邪気を放つ魔物は勇者の聖剣でしか討伐できませぬ。

 それに獣人国の騎士が一度、その魔物を倒していると聞き及んでおります。

 これが二、三度、繰り返されれば、力をつけ魔王化した魔物によって獣人国は滅びますな……」


「うむ……」


「ただ滅びるだけならば問題ないのですが、獣人国には貴重なミスリル鉱山がありまする。それ故に無下にはできませぬぞ、陛下」


「分かっておる。同盟国ではないが、我が国は、勇者保有国という立場を利用し、ただ同然でミスリルを得ておるからの……」


「はい……」


「テデルよ。我が国に、辺境にある獣人国に好きこのんで向かう勇者はおらぬのだ……

 現に、我が国に所属する四人の勇者には断られておる。危険なだけで魅力がない、獣臭くて行きなくないと言うのだ……実際、獣が二足歩行しているような奴らだからな、無理もない。

 我が国のことではないゆえ、これ以上強要すれば、帝国に引き抜かれる恐れがあるからの。無理強いはできぬのだ……」


「まったく頭が痛い話ですな。いっそうのこと獣人国を我が国の従属国にしてはどうですか? そうなれば渋々でしょうが勇者殿も従うのでは?」


「うむ。それはわしも考えた……だがな、獣人国の多くの土地は森林だ。開拓せねば使えぬ……ミスリルは魅力的だが、それだけなのだよ」


「そうですか……」


「うむ。それだけじゃない。報告によれば、獣人族には様々な種族が共存しているゆえ、種族間のいざこざなど日常茶飯事なのだというではないか。奴隷として強制的に従わせなければ、クセが強すぎるようだ……

 それに、獣人国の南にはいつ魔物の氾濫が起こってもおかしくない魔の樹海が広がり、定期的な間引きをせねばならんのだ。

 その度に勇者たちや、騎士団を派遣せねばならぬのだぞ……ミスリル鉱山だけでは釣り合いが取れぬわ」


「確かに……そうですな。ですが、このままでは。我が国の威信に関わりますが、それ以上に……帝国に繋がりを持たれますと……」


「分かっておる。ぐぬぬっ! ハインツ帝国さえ不穏な動きを見せねば、ここまで獣人国との交流を深める必要などなかったのだ。我が国でも少量だが、ミスリルが採れるのだからな……」


 そう言ったベジタル王は獣人国からの正式文書をぐしゃりと握りしめた。


「陛下……」


「すまぬ、少し取り乱したようだ。……どちらにせよ、獣人国と帝国が手を結ぶのも不味い。

 もう一度勇者アインに話をつける。前回の三倍の金額を提示してやればあるいは……」


「さ、三倍と言いますと、白金貨30枚、30億ルドでございますか!?」


「……仕方あるまい。なあに、我が国が全てを負担する必要はないのだ……」


 ベジタル王が鼻で笑うと口角を少し上げた。


「そうですな……たしかに、その条件ならば勇者アインは頷くでしょう……では時間もかかることですし、勇者アインを……」


 コンコンコンッ!!


「何用だ?」


 ベジタル王がそう返すと、ドア越しに男性の声が聞こえてきた。


「はい。勇者アイン様が陛下に急ぎお目通りを願っております」


「ほう、アイン殿が自ら……珍しいのう。……ふむ。丁度よいわ……おい」


 王は、側に控えていた側近に合図を送った。


「はっ!!」



 ――――

 ――




「はぁ、はぁ、……や、やばい……」


『どうしたかシュニャ?』


 俺の肩に座るにゃんこが俺の顔を覗き込んできた。このにゃんこ、俺が跳んだり跳ねたり転びそうになったりしても微動だにしない。


 ほんと、聖獣とは不思議な生き物? だ。


『具合でも悪くなったにゃか?』


 俺は勇体強化した身体で一昼夜走り続けた。勇体強化した身体は強靭で疲れ知らずなのだが……


 ぎゅるるるぅ……


「……腹が減った……」


 俺が持っていたのは狩りの昼食用に携帯していた、少しばかりの干し肉と水だけだった。


 あとは適当に木の実や、狩った獣の肉を食べるつもりだった。


 だが、それも走りながら食べ尽くし俺は空腹で今にも倒れそうになっていた。


『そんなことにゃか? シュニャはお腹が空いていたにゃか……』


「そんなことってな……そういえば……にゃんこも食べてないけど大丈夫なのか?」


『あちしはシュニャの魔力をもらってるから平気にゃ。あとは……ご褒美に自分でだした〈猫まんま〉を食べるくらいにゃね』


 ――俺の魔力? にゃんこに魔力を持っていかれてる感覚はないけど……それよりも……


「その猫まんまって……何……ぎゅるるるぅ……ぁぁ……力が抜ける……せめて水だけでも……」


『シャニャ? そんなにキツイにゃか? 魔力ごっそり使うにゃが、〈猫まんま〉だしてあげてもいいにゃよ?』


「……食べれる物なら……なんでもいい……たのむ……」


『そうにゃか……じゃあ、あちしに任せるにゃ』


 自分の胸をぽんっと叩いたにゃんこは、俺の目の前にくるっと宙返りしながら飛び降りると、前足の肉球をぽふっと合わせた。


『むにゃむにゃむにゃ……聖獣にゃん法……猫まんま!!』


 ボフッ!!


 俺の目の前に、何もないところからお椀とスプーンが現れた。


「うおっ!」


 その中からホカホカと湯気が上がっている。俺は恐る恐るそのお椀の中を覗き込んだ。


 ――なんだこれ?


 白い小さなつぶつぶの物に茶色い何かが、混ぜられている。ただそれだけ、それなのに……


 ――すごくいい匂いがする。


 ごくり


 俺は思わず生唾を飲み込んだ。


「にゃんこ……これ食べていいのか?」


『も、もちろんにゃ……』


 にゃんこがそう言った時には、すでにスプーンとお椀が握られていた。

 そして、俺はスプーンを使い一口頬張った。


「はふっ! う……うまい!! うまいよ、にゃんこ!!」


『そうにゃ、そうにゃ……もちもちしたお米に……絶妙な量のカツオ節と熟成しょうゆが絡んでいるにゃ……あちしがあみだした黄金比にゃから……とうぜんにゃ……』


 にゃんこが何やら話しているが、俺は食べることに夢中でそれどころではない。そしてまた、一口頬張る……


『うまいにゃか?』


「うまい!!」


 更にもう一口食べる。


『うまいにゃか?』


「うまいよ!! にゃんこ……ありがと……」


 ――ぅぉ!?


 少しお腹も落ち着き、ちゃんとお礼を伝えたくなった俺は、お椀からにゃんこに目を向けるも、すぐ傍まで近づいていたにゃんこの顔に驚いた。


『そこ、そこがうまいにゃよ……そこにゃ……』


 そう言って前足で残りの猫まんまを指すにゃんこの口元からは絶えずよだれが滴れている。


「なぁ、にゃんこ?」


『どうしたにゃ、シュニャ……早く食べるにゃ……』


 返事したにゃんこの視線は、俺が手に持つ猫まんまに釘付けのままだった。


 ――あちゃぁ……にゃんこも食べたかったのか……


 一目見てにゃんこが食べたいことに気づいてしまった俺は、申し訳ない気持ちで一杯になった。


 すごい勢いで食べてしまった俺のお椀にはほとんど猫まんまが残っていない。


「にゃんこ。もう一杯出せないかな?」


『出せるにゃが……魔力ごっそり使うにゃよ?』


 にゃんこが俺を気づかいそう言うが、期待しているのだろう。その瞳がキラキラと輝きを放っている。


 ――あはは……


「……その魔力なんだけど……俺はどうも消費していないと思うんだ」


『ふにゃ? どう言うことにゃ?』


「ほら、言ったろ。聖剣召喚も勇体強化も『ものまね』してるって……魔法の場合も、ものまねだと魔力消費しないんだ……だからこれも……」


『消費してないにゃか?』


 俺はにゃんこに頷いてみせた。


『にゃ、にゃんと……たしかにシュニャは勇体強化をずっとしていたにゃ、あちしも魔力をパクパク食べたにゃ……』


 ――パクパクって……そんなに魔力を食べてたのかよ……


 にゃんこの瞳がより一層輝きを放ち始めた。


「猫まんま頼めるか?」


『もちろんにゃ!!』


 にゃんこは白いつぶつぶ、これはご飯と言うらしいが、これに味噌汁をかけた猫まんまも食べさせてくれた。


 それもまたうまかった。


 お腹一杯になった俺は更に二日走り続けた。


「はぁ、はぁ、はぁ、見えた!! あれが国境……だな……」


 勇体強化した身体で走っていた俺は、南を目指しようやく、獣人国との境が見える町にたどり着いた。


 ――あはは、やった……ここまでくれば……


 なぜ、南に向かうことにしたのかというと、家族が俺を置いて出て行く頃、どこに向かうか話し合っているのを耳にしていたからだ。


 その時に、別の国に向かうには南の国が一番近いと聞いた……ただ、獣人族の国になるから南の国はやめておこうという話だった……俺は獣人族のことなんて何も知らないけど、このベジタル国じゃなければどこだっていい。


 もしかしたら、人族よりは獣人族の方がまだマシかもしれないという安易な考えもある。


 ようやくたどり着いたベジタル王国と獣人国との境。俺は町から離れ木陰に腰を下ろした。


『なんで、こんなところに隠れるにゃ?』


「あ〜、ほら。あの村で手を出した、あいつは勇者だったろ? 勇者には権力があるんだ……」


『権力?』


「んんと、この国ではヤツの立場は勇者だ。

 勇者は偉い。だから、その勇者に歯向かった俺は……たぶん捕まる。最悪、殺されるかもしれない……」


 にゃんこが不安そうな顔で俺の肩から覗き込んできた。


『いまの話は……ほんとにゃか?』


「たぶん……そうなる。すでにお尋ね者として、指名手配されているかもしれない……それだけ勇者は重宝されているんだ。この国で捕まったら終わりなんだ」


『だからシュニャは、どこの村にも寄らなかったにゃね』


「うん。しかしどうやってあの国境を抜けようか……」


 国境にはその警備兵が多くスキをついて潜り抜けるには少し難しそうだ。それに……


 ――お金もない……


 しばらく動かずに様子を探っていると、町から見たことない頑丈そうな二頭立て馬車とそれを守るように騎士らしい人物が四人、国境の方に向かっていく。


 ――……あれは!? 獣人か?


 その馬車の御者は人族ではなかった、騎乗している騎士もだ。体型は人族と変わりないが、獣の顔をしていた。


『あれがウワサの獣人にゃか……』


「ウワサ?」


『そうにゃ。人なのか獣なのかはっきりしないから勇者選別対象から外されてるにゃ……』


「え? そんなことってあるんだ……」


『貸せる力が違うにゃよ』


「へえ……」


 ――見た感じは獣に近いけど……


「なぁ、にゃんこ……獣人族も、スキルってあるのかな?」


『そこは人族と、変わらないからあるはずにゃ……』


「ふーん」


 ――じゃあ、ものまねスキルは使えるな……


 俺は試しにものま眼を使って見た。

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