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ものまね勇者は聖剣使い  作者: ぐっちょん
第2章、仮
19/20

18

ブックマークありがとうございます。


更新がかなり遅くなりました。

すみません。

 俺は聖剣を構え目の前の聖剣使いを警戒する。


 ――『にゃんこ。なんでヤツは聖剣を二本も持ってるんだ』


『シュニャ。(うさぎ)にゃ。卯の聖剣使いにゃ』


 ――『うさぎ?』


『そうにゃ。卯の聖剣、兎の耳は双剣なのにゃ。だから二本あるにゃ。でも関係ないにゃ。二つで一本分の力にゃから……


 ――『なるほどね』


『あと、ウサギはしたたかなヤツにゃから注意するにゃ』


 ――『うん、わかった』


 よく見れば、カルの頭には白いウサギが顔を出している。


 そのウサギは俺の肩にいるにゃんこをじっと見ていて、カルには何やら呟いているようだけど、残念ながら遠すぎて何を話しているのかまでは聞こえてこない。


「僕はカル。見ての通り卯の聖剣が使える。そして、こちらが卯の聖獣支様のラビだよ」


 一定の距離を保ち立ち止まったカルが、自信の現れだろうか、おどけてそう言うが見下されているようにも感じる。


「それで、俺になんのようだ」


「おお怖っ。そんなに睨まないでよ。僕はちゃんと名乗ったんだから名前くらい教えてよ。()()()さん」


「くっ」


 ――こいつ、どこで俺の名前を……クマント村のことも知ってるのか?


『シュにゃ!』


 ――はっ!?


 俺はそのことに気をとられ、少し動揺をみせたのがまずかった。カルが軽く跳躍したかと思えばすぐ目の前にいる。俺が動揺した一瞬の隙をつかれた。


 ――やばいっ!


 気づいた時にはすぐ目の前までカルが迫っており、低い姿勢から双剣を振り抜こうとしていた。


「あはは……調子に乗って油断したお前が悪いよ」


「ぐうっ!」


 ――強いっ


 俺はとっさに聖剣を前に出しカルの双剣を防いだが、今まで受けたことのないほどの激しい衝撃が両手に走る。


 ――まずい、押し込まれるっ……ぐっ!


 俺は押し込まれ後ろへと流れる身体に右足を引いてどうなか踏ん張ると、聖剣にぎゅっと力を込め押し返し反撃に出る。いや出ようとした。


「あはは、残念」


 俺は相手が双剣だということを忘れていた。


「しまったっ」


 迫る双剣がスローモーションに見えるが、身体は動かない。斬られる! 俺がそう思って全身に力を込めたその時だった。


 ――!?


『それはさせないにゃ。むにゃむにゃ……聖獣にゃん法……猫だましっ!!』


 俺の両眼と両耳にふわっとした何かが巻きついたかと思えば、にゃんこからそんな声が聞こえる。


 パパッパンッ!! パンパンッ!!


 カルの顔の前に閃光が走り、破裂音が響く。

 にゃんこの聖獣魔法だ。前に一度見たことある魔法。


 ただ今回のにゃんこの魔法は、以前、獣人族を相手に使用した時よりも、数倍激しいものだった。


 だからだろう。俺の顔にふわふわのしっぽを巻きつけてくれたのは。俺にも近い位置で発動した魔法だったけど、そのおかげで少し耳がキーンとするくらいで、特に問題はない。


「……にゃんこ、ありがとう」


『にしし……任せるにゃ』


 これが本来の威力なのか正直分からない。けど助かった。にゃんこのしっぽが俺の顔から離れると。


「ぐぅっ!!」


 両眼を抑えたカルから呻き声を上げ、よろめいている。


 ――今なら!


 すぐに攻勢に出ようと思ったが、カルも、それをそう簡単に許してくれない。

 目頭を押さえたままのカルが、バックステップをしてから後方に転がり俺の間合いからすぐに離れた。


 ――くっ、速い。もう距離を取られた……


「キュア」


 十分な距離を確保したカルはすぐに状態回復魔法を使っている。カルは回復魔法の使い手でもあるようだ。


『すまにゃいシュにゃ。もう回復されたにゃ』


 ――『そんなことないよにゃんこ。助かったよ』


 にゃんこが少ししょぼんとしたような気がしたのでカルから視線を逸らさず、視界の隅に見えるにゃんこの頭を軽く触る。


「あーあ」


 それからはカルが警戒を強めたのか、俺をじっと見てくるだけで、動く気配がまったくない。


 ――こないのか、いや油断はダメだ。


 カルは速い。ちょっとした行動でも見逃せすぐにば命取りになる。油断することなく、攻勢に出てくれば反撃でもしてやろうと俺はカルの一挙一動を観察する。


「あはは、いやぁ。まいったね」


 ポリポリと頬を掻き何やら呟いたカルが俺のほうに笑みを向けてきた。


 ――? なんだ……いや、油断するな。


「ほんと、君の魔力どうなってるの。聖剣を維持しつつ、聖獣様に魔法を使わせるなんて……でも、これならどうかな……」


 そう言った途端カルの身体が黄金色に輝き始める。


 ――これはっ……


「聖装っ! 卯の聖鎧」


 すぐに黄金の輝きがおさまれば、聖鎧を纏ったカルが姿を現した。

 ウサギをモチーフにしたシンプルな聖鎧。


 聖鎧を纏うと、聖剣の本来の強さを発揮できるだけでなく、勇者本人の身体能力の能力も上昇させる。魔力によっては何倍にも…… とんでもない代物だ。


 ただ魔力の消耗が激しく長時間の使用が困難だとにゃんこは教えてくれたが、すぐに「シュにゃは気にしなくてもいいにゃね」と笑っていたことを思い出す。


「ふふふ、どうだい驚いたでしょ。僕はこれでも覚醒している。先ほどの倍の力とスピードを出せるんだ。もうお前に勝ち目はないよ」


 顔面部分(面甲)を跳ね上げたカルが、口角を少し上げて勝ち誇った視線を向けてくる。


『シュにゃ、このままではまずいにゃ。シュにゃも聖装するにゃ』


 ――『うん、分かった』


「聖装、猫の聖鎧」


 俺もすぐに聖鎧を纏った。俺のは猫をモチーフにしているが、やはりシンプルな聖鎧。聖獣支の聖鎧はどれもシンプルな見た目なのかもしれない。


 纏った瞬間から力が身体中から溢れてくる。


「これで振り出しだな」


 俺は聖鎧を纏うと両手で聖剣を構える。やはり、相手の手の内が見えていないうちは、こちらから動きたくない。


 というのも俺は聖剣使いになってまだ数ヶ月。魔物の相手は十分にしてきたけど、対人はほとんどない。勇者アインとだって逃げただけ…… どう足掻いたって俺には対人での戦闘経験が少ないのだ。


 アルーラさんたち? アルーラさんたちとは……まだ、まともに組手ができない……

 いや、したいとは思っているんだ。けど、アルーラさんたち色々と揺れてるから目のやり場に困る。女性耐性のない俺には刺激が強すぎるんだ。


 ――せめて獣人の姿だったら平気なのに……


 それで、目の前にいるカルはどうかというと、勇者アインと同様、躊躇なく襲いかかってくる。それだけでもう、かなりの場数を踏んでいるだろうと判断できる。


「はあ? なんで……だよ。なんでお前まで聖装できる……」


 魔力の都合上すぐに攻勢に出てくると判断していたカルは、なぜか動揺しはじめ両手に握っていた双剣をカタンと地面に落とす。


「?」


 ――いや、これは油断させてから、来る気だ……


 俺はより警戒しカルの一挙一動に注目する。


「ははは……いや、だって、お前は聖剣を使えるようになって数ヶ月だろ……? そう聞いてる。なのに、もう覚醒して聖鎧を使えるだなんて……普通なら早くても、聖剣を手にしてから数年はかかる。それなのに……」


「……」


 ――『にゃんこ、そうなの?』


『うーん。あちしは知らないにゃ……神様が決めることにゃから……』


 ――『そっか……』


 渇いた笑みを浮かべカルは突然腕を組みはじめ、うんうん唸り出したかと思えばスッと聖装を解いた。


「……た」


「?」


 ――今度はなんだ?


 魔力が切れたと思わせて聖装を解き、油断させてから再び聖装をする気か? いや、でも、それだと聖装をしたばかりだったからバレバレでありえないと、首振って否定していると――


「やめだ、やめ。降参する」


 カルが落としていた聖剣を拾い上げから鞘にしまうと、両手を挙げてからひらひらさせて首を振る。


「はあ?」


 俺は意味が分からなかった。カルが降参する意味が。


「ほらほら。僕はもう聖鎧を解いて、聖剣もしまったんだ。だから、お前も解きなよシャナ」


『シュにゃ、解いたらダメにゃ。ウサギはしたたかな奴にゃ』


 ――『うん』


「無理だ。信用できん」


 そりゃそうだろう。いきなり襲ってきた奴でもあるんだ。自分が聖剣を収めたからと言って、俺までそれに倣う義理はない。


「……むむむ」


 このまま見合わせたまま待っていても俺が聖装を解かないと悟ったのかは知らないが、目の前のカルがどこか諦めたように息を吐き出す。


「はあ……まあもういいや。僕はハインツ帝国の勇者カル。シュナ、お前を勧誘に来た」


「ハインツ帝国……え、なぜ?」


「本当は魔王を倒して図に乗ってるお前が気に入らないから、高くなったその鼻をへし折ってから連れていくつもりだったんだけど……予想外だった」


 ――高くなった鼻って。


 自分の鼻を触りつつ首を捻る。


 ――変わってないと思うけど……


「それでどうかな、僕たちと同条件でいいと皇帝から許可はもらっている……

 いや、ちょっと違うね。僕たちを含めてもう一度見直し、待遇を厚くするとまで言ってくれているんだ。まずは爵位が与えらて――」


 カルが指を折りつつ帝国の勇者として務めた時の条件を語るが、その内容は信じられないほどの好待遇だった。

 俺が前の村にいた頃に耳にしていたような夢のような勇者生活。地位、名誉、富、その全てを得る。


「ふふふ、どうだい。なかなかのもんだろ。もちろん来るよな? 断る理由もないしな」


 カルが勝手にこくこくと頷くが。


「……」


 俺がすぐに返事をしないどころか、聖装を解かないのを見て、カルの表情に焦りの色が見えだす。


「わ、悪かったよ。いきなり襲って悪かったと思ってるから、だからその聖装を解いて、僕と一緒に帝国に行こうよ。ほら……」


 カルが右手を拭いてから、俺のほうに差し出してくる。けど、俺はそれ以前に人族を信用できない。


「嫌です」


「はあ? う、ウソだろ、おい……冗談だよな?」


 そんな俺の返事に、もう取り繕うことをやめたらしいカルが酷く狼狽した表情を見せる。


「冗談じゃない本当だよ」


「おいおい……マジかよ……」


 そんな時だった、しつこく食い下がってくるカルの後方から俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


「「「シュナ」さん」殿」

最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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