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ものまね勇者は聖剣使い  作者: ぐっちょん
第2章、仮
17/20

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ブックマーク、ご感想ありがとうございます。


更新遅くてすみません。

しかも、少し短めですm(__)m

「それで、今日は何を片付けてくれるんだ?」


 アランさんのそんな声に、はっとしてアランさんに振り向く。

 すると、アランさんはニタニタ、ニヤニヤしながら依頼書が貼り付けてある掲示板を指差した。


「……」


 ――うっ。居心地が……


 返す言葉が思い浮かばない俺は、慌てて握りしめていた権利書と何屋カードを腰に括り付けている小さな小袋にしまい、逃げるように掲示板の前に移動した。


 この村に住むには慣れてきたけど、人から向けられる好意にはどうも抵抗がある。


 ――自分が何かしてやる分には平気なんだけどな……


 照れ臭くて、なんて言って返せばいいのか分からなくなるんだ。


 ただ、それを分かっている感じがするアランさんは――


 ――ちぇっ、まだ笑ってるよ。


 依頼書を一通り見て、急ぎの依頼がないことを確認した俺は、貼り出されて(ギルドが依頼を受け)一番日数が経過している薬草採取の依頼書を手に取った。


 まあ、そうは言っても三日前に貼り出されたもので、それほど日数が経過しているわけではない。


 あ、でも俺が何屋活動を始めた時は酷かった。人手不足で十日以上経過しているものがざらにあり、中には三十日以上経過しているものもあったんだ。


 なにせ、この村の住人たちはそれぞれ本業があり、その傍で何屋活動をしていて、俺みたいに何屋活動だけで生活している人なんてほとんどいない。


 感覚としては、自警団のように持ち回りで何屋活動をしているって感じかな。


 ――あ!?


 アランさんの先ほどの話からも、この村だけじゃなく、この国全体がそうなのかもしれないと今更ながらに気づいた。


 ――それでなのか……あ、でも隣に越してきたアルーラさんたちは何屋活動するって言ってたな……


『それを受けるのにゃ?』


 俺が薬草採取の依頼書を手に取り眺めていると、興味津々といった様子のにゃんこがその依頼書を覗き込んできた。


 ――『そのつもりだよ』


『薬草採取場所の近くには川があるにゃ。今日はお魚にゃね』


 ――『あはは、そうだね。じゃあ……早く依頼を済ませて川魚をとって帰ろうか』


『それがいいにゃ』


 よほどうれしいのか、俺の肩で二足立ちしそうな勢いのにゃんこの頭を撫でてやり、俺は薬草採取の依頼書をアランさんに渡した。


「いつもすまんな。ポーションの在庫はあるんだが、いざという時のために、予備はいくらでもほしいからな」


「いえ。俺の方こそ報酬をもらってますから」


 この薬草採取が残っているのにも原因がある。それは、薬草は見慣れても雑草と間違えてしまうほど見分けがつきにくい。


 それなのに、この村には本業が忙しい道具屋さん、武器屋さん、薬屋さんの三人しか鑑定スキル持ちがいない。


 俺は一度、薬師さんから鑑定スキルをモノマネさせてもらったあと自分で習得してしまったから簡単に見つけられるようになったんだけど……


 鑑定スキルがないと、ひとつひとつ吟味して採取していく必要があるんだ。だからどうしても効率が悪く量も取れない。


 それ加えて、薬草が自生している地域までの距離が少し遠いんだ。俺は勇体強化をしているから走ればすぐだけど、村のみんなはそうでもない。


 そのため、自然と薬草採取は俺の仕事のようになってしまった。


「気をつけて行ってこいよ」


「はい」


 俺がギルドのトビラに手をかけ出て行こうとしたところで、村中に甲高い音が鳴り響いた。


 ――ん? これは……


 いや、正確にはこの甲高い音は人族では聞き取れないほどの高音らしいけど、俺は勇体強化をしているので、耳鳴りのようにだが、なんとか聞き取れている。


「待てシュナ。人族が近づいているという知らせの音が鳴っている」


 俺にはその音が聞こえていないと思っているアランさんが、そう言うと黒豹の獣人の姿になった。

 おそらく、今の音を聞いた村中の人がアランさんのように獣化しているはずだ。


「またですか」


「ああ」


 これには、いつもながら感心する。なんでも王国所属の鳥の獣人が、高空を巡回し人族が近づいている村や町に知らせてくれるのだ。


 今までも、漏らすことなく連絡が来ていることから、かなりの数の獣人が飛び回っていると思うけど、第一弾は国境の門番から警戒するようにと国中の町や村に信号が飛ぶようになっているらしいけど、その辺は機密事項らしく詳しくは教えてもらえない。


「最近多いですね。冒険者ですか?」


「ああ。国と国との繋がりが薄いこの国には、入国してくるほとんどが冒険者だったが、ほんの僅かだった。

 ……どうも魔王が消滅してから騒がしい。どうやって消滅したことを知ったか分からねえが、ベジタル王国が冒険者を使って何やら嗅ぎ回っていると俺は睨んでる」


「嗅ぎ回ってるんですか……」


『シュニャ。間違いなく聖獣支だにゃ。あちしたちはアンテナさえ張っていれば、魔王の存在を感じ取れるにゃから。消滅したことも分かるにゃ』


 ――『……そう、なるよね』


「それでシュナ。気をつけろよ。冒険者は俺たち獣人には大した話はしてこないが、お前は人族だ。同じ冒険者の振りをしてもいいが、何を聞かれるか分からんぞ」


 ――うっ。それは困る。


「ああ……俺、いつもみたいに家で大人しくしとこうかな」


 そう、人族に良い感情を向けることができない俺は、この村に慣れた辺りからいつも隠れて過ごすことにしている。隠密スキルを使えばバレないかもしれないけど、バレた時のことを考えるとやっぱり家で過ごした方が無難だと思ったんだ。


「おお、そうだな。こんな時だ。ポーションの在庫はまだある。依頼は明日にでも回せばいいだろう。

 それに、家に隠れるんだったら、人族が去ったあとの鐘が鳴ったら知らせに行ってやるぞ」


「え、いいんですか。じゃあお願いします」


 ほんとうはその音も聞こえるんだけど、聞こえると言えない俺は、アランさんの提案を即答したが――


『ええ、シュニャ。お魚なしにゃ?』


 肩でノリノリになっていたにゃんこの耳と尻尾がシュンと垂れ下がった。


 ――『あー、いや、ごめん。今日のところはいつものお店でお魚を買って、川魚は明日とろうな』


『しょうがないにゃ。分かったにゃ』


 渋々といった感じだけど、にゃんこも納得してくれたので、俺は魚を急いで買いに走り自宅へと戻った。


 ――――

 ――



 ――???――


 真っ暗な闇の中、揺らめく大きな影の前に跪いた小さな影が頭を垂れていた。


「やはり魔王を消滅させたのは猫か」


「はい。……様。烏を飛ばせたので、間違いありません」


「忌々しい猫め。もう少しのところで取り逃したからな。それで残りの三匹、(イタチ)(カエル)鹿(シカ)はどうだ?」


「はい。問題なく魔獣支化できております」


「そうか。クックック。憐れな奴らよ。本気で今の聖獣支を倒せば、新たな聖獣支に取って代わることができると思っているのだからな」


「はい。そうですな。まあ、奴らはまだ魔剣の使い手も決まっておりませんので、しばらくは力をつけさるためにそのままにしておきます」


「うむ。それがいいだろう。して……」


「はい。そちらも抜かりなく……邪因子の量を増やしております。複数の魔王が同時に誕生するのも時間の問題かと……」


「そうか。ならば……」


最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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