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ものまね勇者は聖剣使い  作者: ぐっちょん
第2章、仮
16/20

15

短くてすみません。


「なんだシュナ。朝から元気ねぇな」


「ははは……」


「まあ、深くは聞かんが。それより今日来てもらったのはこれだ。これをシュナに渡したくてな」


 そう言ってアランさんが取り出したのは、何でも屋カードだった。これは人族の国でいう冒険者カードと一緒で、身元の証明証にもなる。


「え? 俺、持ってますよ?」


 アランさんの意図が分からず、首を捻りつつ小さなずだ袋から何でも屋カードを取り出して見せた。


「おう。そっちの何屋カードは回収するから、今日からこっちの新しい何屋カードを使ってくれ」


 獣人たちは面倒くさいのか、何でも屋カードを略して何屋カードとよく言う。だから俺も今はそれに倣って何屋カードと呼んでいる。


 アランさんがニヤニヤしながらそのカードを差し出してくる。


「そうなんですか。じゃあ」


「おう」


 ――ん?


 アランさんが手に持つカードと交換した俺は、少し重さのあるそのカードに視線を向けた。


「へへ、シュナどうだ」


「……なんかカードの質感が石ぽいような気がしますが……え、これってミスリル!?」


「おう。モッフモフ王国はミスリル資源が豊富にあるからな。それより裏面を見てみな」


「は、はい……あれ、何ですか、この二つのマークは?」


 笑みを浮かべるアランさんに促されて見た裏面には、印を押したような跡があり、カードの裏面が少し凹んでいた。

 王冠を被ったライオンのようなやつに、猫のようなトラのようなやつ、そんな凹みが二つあった。


「そのライオンの印影が、このモッフモフ王国の国民だと認めたと意味をする。

 その隣にある黒豹の印影が、クマント村の何屋ギルド長。つまり俺が、その者の身元は確かだと保証したって意味になる。この二つがあって初めて意味を成すんだが、どうだカッコいいだろ? 黒豹の刻印は俺だけが使えるんだぜ」


 茶化す感じでアランさんがそんなこと軽く言ってくるが――


「俺、人族なのにモッフモフ王国で国民と認められた……の?」


「ああ」


 俺はアランさんが言ったことがとても信じられず、狐にでもつままれたような不思議な感覚に包まれた。


 なぜなら、その要因はもう分かっているだろうけど、人族にしか誕生しない勇者にある。

 そのため人族は獣人族を劣等種族だと決めつけ嘲笑の対象でしかなかった。


 人化できることを知られていないから余計にその傾向がある。


 そんな人族を受け入れたところで意味なんてないだろうに、この国は一部の人族を自国民として認める方針を明らかにしたのだという。


「まあ、その条件はかなり厳しいんだけどな。魔王という脅威が取り除かれ今が、色々と法改正を行うに都合が良かったのだろうさ……」


 その中に、いままで先送りにしていた獣人国に居住する俺みたいな人族の問題も含まれていたらしい。


「よかったな。これでシュナは正式にモッフモフ王国の国民と認められたんだぞ。

 あ、俺は誰でも認めるわけじゃないからな、そこんとこは勘違いするなよ」


「……アランさん」


 これで、今後何が変わるのかというと、まず何でも屋ギルドで活動して、その報酬を受け取る度に差し引かれていた税金が半分になるということ。


 いままで、四割くらい取られていたからかなり助かる。


 他に人族は、何でも屋以外の職業に就くことができなかったけど、それがどのような職にも就くことができるようなるし、自分の家だって持てるようになるんだ。


 ――家か〜、俺だけの家。俺の居場所。なんかいいなぁ。少しずつお金も貯まってきてるし、今住んでいる家を買えないかあとで村長に相談してみようかな。


 他にもなんだかんだあるようだけど、今の俺には難しい過ぎてよく分からない。


「そうそう、それで村長がお祝いにと、シュナが今住んでいる家と土地の権利書を置いていったぞ」


「はい?」


 そう言ったアランさんが一枚の木のプレートを差し出してきた。


 どうやらこれが、今俺が住んでいる家と土地の権利書になるらしいが、それこそほしいと思った矢先だったため、俺はどう反応していいのか困ってしまった。


「ははは、ほらよ」


「え、あ……正直ありがたいんですけど、いいですかね?」


「はは、なあに、あの家は村の中心から少し離れてて不便な場所で人気がないんだ。ずっと空き家だったのもそのためだ。

 空き家のままだと知らぬ間に野盗などに利用される危険性があるから取り壊す予定まであった家なんだよ。

 だから、シュナが気にするほど、あの家に資産的な価値はないんだ」


「そうですか……でも、あの家の敷地は少し広いんですよ? 少しくらい払った方がいい気がするんですが?」


 いくら中心地から離れてて資産価値がないと言っても家は家だ。俺くらいの歳で、そう簡単に買える物じゃないと思う。


「いいからいいから。村長は、この村のために頑張ってくれているシュナに留まってほしいだよ。

 正直、シュナがこの村に来てからこの村の小さな問題はすべて解決している。

 それもこれもお前が能力を活かし、器用になんでもこなしてくれているからだ……言っちゃなんだが、近隣の町や村のギルドからお前に依頼を頼めないかと問い合わせがあるくらいなんだぞ。

 だから、村長は焦ったんじゃないのか、この村が嫌いじゃなければ素直に受け取ってやれ。俺もこの村のギルド長として助かるしな」


「……この村を嫌いだなんて、思うはず……ない」


 人に感謝されるってことが、未だ慣れなくてむず痒く感じるが、この村は行き場のなかった俺を受け入れてくれた心地よい居場所。

 そんな俺がこの村を嫌いだなんてあるはずない。


「じゃあ受け取ってくれるよな?」


 ほれほれ、とニヤニヤ顔のアランさんが急かすように権利書を差し出してくる。


「……ありがとうございます」


 照れ臭く感じながらも差し出された権利書を受け取ったが、いざ受け取ると、今まで味わったことのない喜びがこみ上げてきた。


「嬉しいか? これからは家賃を払う必要もないし、敷地内だったら畑を作ったり好きに使えるぞ」


 そんな俺を、生暖かい目でアランさんが見ていたことなど、嬉しさのあまり手に持つ権利書に釘付けで、心ここにあらずといった有り様の俺は気づくことなどなかった。


最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

ただ、展開が少し遅くなってます。

すみませんm(__)m

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