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ものまね勇者は聖剣使い  作者: ぐっちょん
第1章、俺は聖剣使い。
10/20

更新遅くてすみませんm(_ _)m

 ――翌朝――


 ギルド長に指定された場所、村の入り口付近で子どもたちを待っていると、門番をするガルドさんと、ディックさんに声をかけられた。


「よう、シュナ。今日も元気か」


 二人とも熊の獣人でゴウキさんと仲がよく、俺にもよく声をかけてくれる。


「はい。ガルドさんとディックさんも元気ですか?」


「おおよ」

「俺たちは元気が取り柄だからな」


「ははは……」


 元気か? これは獣人国のあいさつだ。その日初めて会う場合に使うんだと、この村に来てすぐマレーさんに教えてもらった。


 前の村ではあいさつなんてしてこなかった、というより話すらしてこなかった俺からすると、会話そのものが慣れるのが大変だった。


 それもこれもすべてにゃんこおかげだ。


『どうしたにゃか?』


「ん? なんでもない」


『ふーん……』


 にゃんこはよく喋る。黙っていても喋る。今だって知らない場所に行くのが嬉しくて機嫌よく変な鼻歌を歌っている。


 ――まあ、それに応えているうちに言葉が出るようになったんだっけ。今日も護衛の報酬で魚でも買ってやろうかな。


「今日はガルドさんとディックさんが当番なんですね」


 この村では武術系のスキルを所持する者は自警団に所属するよう定められているらしく、この門番も自警団の中から交代で就くことになっている。


「ははは、まあな。んで、シュナは朝から何を……ああ、なるほど。ラルフの代わりにって奴か? シュナもいよいよだな」


 ディックさんは俺が腰から下げている長剣を眺めて頷いた。

 これは先ほど自警団の詰め所から借りてきたものだ。


 ――いよいよ?


 ディックさんが言っている意味がよく分からなかったけど、二人とも俺が護衛をすることは知っているようだ。


「子どもたちが湖畔で野外学習をするらしいんです。でも湖畔ってどこにあるんですかね?」


 ――俺知らないんだよな。東側か?


 西側の森ならば邪因子を持つ魔物を狩りに何度も行っているから、少しは詳しくなったが湖なんて見たことない。


「すぐそこさ。いつも行く湖で安全なところだぜ」


 ディックさんがそう言って東側の森を指差した。


「そうなんですか?」


「ああ」


 湖畔まではそれほど遠くなく、子どもたちの足でも四半刻ほどでたどり着ける場所にあるらしい。


 俺の肩に座るにゃんこが『30分くらいにゃね』と小さく呟く。


 ――30ぷん??


 にゃんこはよく、俺の知らない言葉を使う。聖獣支の世界の言葉なのだろうけど、聞いても意味が分からなかったから、気にしないようにしている。


「わりと近いですね」


「ああ。それに湖畔は子どもたちが野外学習でよく行くからな。そこまでは魔物避けの魔草も植えているんだ」


「そうだったんですか……」


 それを聞いた俺は少し肩の力が抜けた気がする。どうも20人くらいの子どもを俺一人で護衛しなければならないと聞いて、思った以上に肩の力が入っていたようだ。


 俺を見たガルドさんとディックさんが――


「初めはみんなそうだ」


 そう言ってにやにやと笑みを浮かべていた。二人には初めからバレていたようだ。気恥ずかしい。


「おっ、みんな集まってきたな。シュナこれからよろしくな頼むな。ディック、そろそろ仕事に戻ろうぜ」


 ――よろしく頼む?


「え、あ、はい?」


 ガルドさんの視線の先には、子ども連れのお母さんたちがぞろぞろこちらに向かって来ている。


「ああ、そうだな。サボってたと言われて明日も門番になったら敵わんからな。じゃあなシュナ、変に気負うことはねぇぞ」


「はい、ありがとうございました」


 二人が仕事に戻り、集まる子どもたちに目を向けていると、嬉しそう手を振るリズを見つけた。


 ――ん? あはは。


 リズは早く行こうと、マレーさんの手を一生懸命引っぱっている。


「こらこら、リー。引っ張らなくてもにゃんこは逃げないよ」


「シュナ〜、にゃんこぉ〜」


「マレーさん、それにリー」


 元気に手を振る二人にあいさつすると、マレーさんは嬉しそうに、俺が腰から下げている長剣に視線を向けた。


「聞いたよ。今日はシュナが護衛なんだって」


「はい、そうなんです」


「良かったじゃないかシュナ。これでシュナもこの村の自警団だ。もう仲間入りだよ」


「え?」


「ははは、忙しくなるぞ」とマレーさんが愉快そうに笑っているが、先ほどのガルドさんやディックさんの態度から察すると――


 ――もしかして仕向けられた?


 でも、これは俺が一人前だと認められたってこと? 人族なのに?


 俺がこの村に来て、たまに通り過ぎる冒険者らしい人族を見かけたりもしたが商売をしている獣人族以外は、一定の距離を保ち深く関わろうとしていなかったが、初めて見た獣人同士の連携は凄かった。


 どういった連絡手段をとっているのか詳細は分からないけど、人族の冒険者が獣人国の国境を越えたと情報が流れてくるや否や、村周囲の警戒が強化され、この村に向かってくると分かると、俺には隠れるか冒険者の振りをするよう伝えられ、村のみんなは一斉に獣化した。


 まあ、冒険者らしい人族が何の目的があって来ているのか分からないけど、どこか獣人たちを嘲笑し、見下しているような嫌な視線を向けてくるのだから当然だろう。だから尚さら、俺は戸惑いを隠せずにいられなかった。


「それよりもシュナ。剣術スキルの準備はできているのかい? ないなら今のうちにモノマネしとくかい?」


 そんな俺の心の内など知らない、マレーさんが子どもを心配するような顔で俺に近づいてくる。


「だ、大丈夫です」


 思わず俺は後ずさりした。


 ――近い、近い。


 人化したマレーさんは意外にも出るところは出て、スラッと背の高いなかなかの美人なお母さんだった。戸惑っていた俺の心の内など一瞬で吹き飛んでしまった。


 俺が初めて人化した姿のマレーさんを見た時には、ウソじゃないのかと何度も目をこすってしまったのは記憶に新しい。


 ゴウキさんがデレて頭が上がらないのも納得できる。

 だから、もし近づき過ぎてマレーの胸にでも触れたらゴウキさんに殺されかねないんだ。


「そうかい? それならいいんだ」


 正確には初めこそ剣術スキルを自警団に所属する一人からこっそりモノマネさせてもらったが……


 何度か使用したあと普通に剣術スキルを取得してしまった。隠密スキル、調合スキルなども取得してしまったんだけどね。


 ――一度モノマネすると感覚がつかみやすくて、すぐにスキルを取得してしまうんだよね。


「あとは先生だけだね」


 いつの間にか子どもたちの数を数えていたマレーさんがそう言った。本当はこれも俺の仕事だったんだけど、やはりマレーさんは世話焼きたがり屋さんらしい。


「そうですね。ここから確認できないから、少し遅れるのかな……」


「リー。にゃんことあそぶ〜」


 今まで大人しくしていたリズが、元気に手を挙げると、にゃんこに近づきしっぽに目掛けてぴょんぴょんと跳ねて始めた。


「じゃあ、先生が来るまでだからな」


「うん」


 元気よく返事をしたリズを前に、俺は肩に座っていたにゃんこに顔を向けた。


『しょうがないにゃね。あちしが遊んでやるにゃ』


 と、言いつつも見るからに嬉しそうなにゃんこは、ぴょんとリズの頭の上に飛び乗った。


「あはは」


 リズがそれはそれは嬉しそうにわーわー、きゃーきゃー、はしゃぎ頭ににゃんこを乗せたままちょこちょこ走り始めた。


「こら、リー。そんなに走ると転ぶよ」


 そんなマレーさんの声が聞こえてるのか、聞こえてないのか、はしゃぐリーの周りには他の子どもが集まっていた。


 俺の周りには、そのお母さんたちがあいさつに来てくれる。


「リズちゃんあたしもにゃんこ」

「にゃんこだっこしたい」


『いたいにゃ、ひっぱるのは無しにゃ』


「ねぇねぇにゃんこ」

「にゃんこ」


『あたたにゃ、しっぽ。しっぽ、ひっぱってるにゃよぉぉ』


 いつの間にか子どものおもちゃにされていたにゃんこは、ぴょんぴょんと素早く跳ね上がり、子どもたちの頭の上を器用に逃げ回り始めた。


「きゃはは、にゃんこはやいはやい」


『シュニャ、助かけるにゃよ』


 ――あはは……


『シュニャ、シュニャぁぁぁ』


「にゃんこ、そっちいったよ」

「まてまて〜」


 少しにゃんこが不憫に思っていると――


「カレンの奴、やっときたな……」


 ようやく自分の倍はありそうな、大きなずだ袋を背負ったクマの獣人のカレン先生が到着した。


「みなさん、遅れてすみません……」


 俺よりも少し年上に見える可愛らしい先生は、みんなに向かってペコリと頭を下げた。

最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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