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王妃の願い
王妃のもとに義禁府の役人が訪れるのに時間はかからなかった。王妃は毅然と放火を認めた。王妃を捕らえることは出来なかったので左承旨、楊龍壽に報告させた。
「中殿が敬慧を!?」
「はい。どうしても王子をお産み遊ばされたかったのでしょう」
「それでもやり過ぎた!直ぐに中殿を廃妃にする!」
「しかし!」
「あまりにも婦徳が無さすぎる!」
鼻息を荒げて主上は王命を下した。その王命を持って左承旨は王妃の元へと向かった。王妃は無表情だった。光のない瞳をしている。
「王妃、韓昭蘭。その身分を剥奪して廃妃とする」
「謹んでお受けします。これで良かったのです。私は王妃になるべき人間ではなかったわ。私が追い出されれば熹嬪が王妃になるのよ…娘には悪い事をした。子守唄を歌って、この両腕に抱いてあげたかった…そうしたら私は私は…この地位にしがみつきたくなるわ」
「中殿媽媽!知っていたのですか!それ故に放火を?」
「この宮廷はどこにでも口があるのよ。最後の願いです。娘には母を熹嬪と仰ってください」
すっと、廃妃は立ち上がり康寧殿向かって礼を尽くすと部屋をあとにした。




