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星に祈りて
懿嬪は高笑いをした。全てが儚い幻であったと肌で感じた。幻に踊らされ、幻に酔った。所詮、こういう運命だったのである。
「それを持っていたのは昭容、お前ではないな。楊尚宮であろう?一つ教えてやる。中殿は私がいなければ中殿になれなかった」
見計らったかのように義禁府の兵士がなだれ込んできた。懿嬪の幻はここで終わったのである。
懿嬪に連座するように内人や尚宮も捕えられた。そして尚宮の1人が李久台の名前をこぼした。
しかし、誰ひとりとして信寧君の名前を出すものはいなかった。希望を残したかったからである。
慶華は長房の外に出て空を見上げた。星が煌めいている。それに全てが終わるように祈りを込めた。




