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はじまりⅢ
翼は机に向かい少女が手にしていた風呂敷を広げた。中には史記が入っていた。史記をしばらく読んでいると背後から龍壽の声がした。
「龍壽!」
「元子さま、先にいらしたのですね。妹を待っていたのですが、なかなか現れず…」
「それなら私が預かったおいた」
龍壽の表情が驚きに変わった。
「慶華にお会いに?」
「慶華と言うのか」
「はい。女ですが、史書や詩に明るく話が合います」
龍壽は照れくさそうに言った。その様子から龍壽は慶華の才能を愛しているのがわかった。そこに学士が現れた。2人は居住いを正して学士の方を向いた。
侍講院は帝王学や史書を学ぶ。それは夜遅くに及ぶこともある。翼は学問に夢中になった。至密尚宮の崔尚宮(チェ尚宮)は心配して王妃張氏を呼ぶことも度々、あった。そんな息子を王妃張氏は「書虫」、本の虫と呼んではからかった。