後宮抹殺書
王妃は少しでも食事をとるために5回に分けて食べた。しかし、その半分は悪阻で吐いてしまっていた。産室庁の御医や医女たちは頭を悩ませた。一人の医女の提案で安胎薬を変えたら少しは吐かなくなったが、悩みは尽きなかった。
王妃付きの尚宮や内人たちは言動を慎み、なるべく王妃の心を落ち着かせることに専念した。しかし、そのどこかよそよそしい態度が紅雲府夫人を苛だ出せた。こうなると窘めるのは王妃の仕事である。全てが悪循環に陥りかけていた。
慶華はなるべく王妃の負担を減らすべく後宮の業務を代行することにした。
春景殿で後宮の帳簿を呉尚宮と閲覧していたときである。突然、呉尚宮が声をかけてきた。
「昭儀媽媽、何か紙が挟まっております」
「何かしら?」
慶華は呉尚宮から紙を手渡されるとそれを広げた。紙には宜宗の文字で「趙氏に反逆心があれば始末せよ」と書かれていた。
「呉尚宮これは…」
「後宮抹殺書にございます。噂を聞いていましたが、まさか本当にあるとは…その昔、章宗の寵姫である靜嬪が章宗の死後に王を害さぬように密かに抹殺書を作ったのです…」
「趙氏…呉尚宮、これを知られてはならないわ」
「はい」
慶華は一人の内人を呼んだ。内史を管理する内人の貴月だった。彼女に後宮抹殺書を書き写させて保管させた。彼女は口が聞けなかったのである。だから、後宮の秘密を書いた内史を管理させるには持ってこいだったのだ。




