主上殿下
宜宗20年になった。この年、宜宗は体調を崩すことが多くなった。しかし、昌陵君を甲斐甲斐しく世話する善花を見初めてしまった。自身の世話を理由に昌陵君から善花を奪って、彼女の純潔まで奪ったのである。鄭良媛のことで傷つき、また善花のことで傷ついた昌陵君はその年、流刑地に戻った。全ては趙淑儀の思い通りだった。
しかし、一つだけ思い通りにならなかったの宜宗は亡くなったことだった。
それから間もなく世子は王に即位した。嬪宮は王妃となり、二人揃って正装をして即位したことを宗廟に報告した。康寧殿に移った日に主上は尚膳に硯を刷らせていた。
「尚膳、後宮の品階はどうなっている?」
「嬪、貴人、昭儀、淑儀、昭容、淑容、昭媛、淑媛になります」
するとしばらく主上は考え込んだ。そしておもむろに口を開いた。
「庶母の品階を上げるのは礼に当たるだろうか…」
「歴代の王たちはそうして庶母に礼を尽くしてまいりました」
「そうか。ならば、趙淑儀を嬪にする」
「かしこまりました」
「それと同時に楊良媛を昭儀に、朴承徽を淑媛に冊封する」
「すぐに礼曹に通達を致します」
尚膳は硯をすり終えると手を汚したまま部屋を後にした。入れ替わるように大殿尚宮が夜食を持ってきた。
「主上殿下、大妃媽媽が夜食を用意してくださいました」
「それはありがたい」
主上は顔を上げあて、体を伸ばした。




