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或る動騒  作者: 或る男
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或る街、或る兵士

15:28 Furstenwalde


 私はひとまず街の南側にある橋から脱出する事にした。

路地を幾度か角を曲がりながらしばらく進むと、通りに出た。

ここの通りも大まかには先の大通りと変わらない。

違うことがあるとすれば軍の身なりをした亡骸があることか。

ここまでの事象を見るに、おそらくは軍が「暴徒」を鎮圧したのだろう。

死骸から水筒、ナイフ、拳銃とその弾薬を拝借した。

私は通りを足元に気をつけながら進んだ。


近道をするために路地を通っていると、誰かが歩いてくるのが見えた。

私は状況を把握し、あわよくば脱出させて貰おうと考え、話しかける事にした。

歩いてきた人物は、小柄で軍服を着た男であった。

「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」

彼が言った。

私は何故この状況になっているのか解らないこと、ここを早く脱出したいことを話した。

…声が高いことは予想通りだが、たどたどしく、しかもぶつ切りにしか発声できないというのは流石に勘弁してほしい。

「そうかい、お譲ちゃん」彼は言った。

「悪いが、死んでくれ」銃を、突きつけられていた。

私の頭は真っ白になり、ほぼ無意識に体が動いた。

彼の足を払ってバランスを崩し、胸元を掴んで頭を壁に叩きつける。

彼に馬乗りになり、ナイフを取り出すと一切の躊躇も無く首を掻き切った。

彼は痙攣して、しばらくすると動かなくなった。

人を殺したというのに私はまったく罪悪感を感じず、かといって達成感も無かった。

ただ、私にあったのは飽きと義務感だけである。


道を進みながら考える。

私にとって軍は敵であり、軍人は殺す必要があるらしい。

私はいつか軍が私を狙う理由が知りたいと思った。

ただ、生き残った市民は殺せという命令が出ただけかもしれないが。


橋まで後三百メートル程まで近づくと、周囲の道に兵士が現れるようになった。

私は彼らに見つからないように道を進んだ。

橋が見える場所まで行くと、橋の上に兵士が沢山居ることが解った。彼らは川を渡って逃げようとした生存者に銃を撃っているようである。

これではとても橋から外に出ることは出来まい。

私は仕方なく東の森に行くことにした。

ここから森までは一、二キロほどは離れている。

急いで道を進んだ。


私は道のりのおよそ半分近くまでは苦労せず進んだが、ここで問題が発生した。


「ここは、何処だ?」


…私は、迷子になっていた。

思わず独り言が出るほどには参っている。

なにせ、一時間も進めていないのだ。迷路の如く入り組んだ路地裏には参った。本当に気が滅入る。

仕方なく、多少の危険は許容して大通りに出ることにした。

相変わらず大通りは酷いものだ。いや、もっと酷くなっている。向かい側など五割は火事になっていた。人肉の焼ける匂いと火の熱さにへこたれそうになる。


大通りを慎重に歩いていると、人影が見えた。三人ほど、だろうか。

固まってこちら側に歩いて来ている。

観察すると、三人はおそらくは軍人なのだろう。銃を構えながら進んでいた。ガッチリした体格の軍人が細身の兵士と話している。長身の人物は後ろを警戒しているようだ。

---ガラスが割れる音がする

まずい、瓶を割ってしまったようだ。こちらに気付かれた!

どうすれば…銃声が聞こえた--ッ

私は横に飛び込んだ。さっきいた場所に銃痕がある。危なく蜂の巣になりかけた。

しゃがみ込んで瓦礫に隠れ、銃撃をしのぎながら、拳銃を取り出した。

中腰になり、銃を構えると体格の良い人物に撃った。的が大きかったのが幸いしたのか、弾丸は正確に眉間に吸い込まれていった。

次の敵は何処に居るのか…私は敵になった気持ちで考えた。

相手は素人…瓦礫はここ…ならば横!!

私は廃墟の中にいた人間に向けて撃った。

最後の一人は、私と同じように瓦礫に隠れながらこちらに銃撃している。

瓦礫から横に顔を出し、銃撃を誘った。長く銃撃が来ない…どうやらリロード中のようだ。

この隙を見逃さず、私は奴に近づいた。瓦礫を踏み越え飛びかかる。

奴の驚く顔が見えた。その勢いを保ったまま首にナイフを挿し込んでやった。

私はほぉっと息を吐くと、軍人どもの死体を漁った。

帽子…被っておこう。

小銃…使えそうだ。ついでに弾薬も手に入れた。

手紙…見てみると遺書だった。破棄する。

写真…家族のようだ。火に放り込んだ。

携帯食糧…取っておこう。


私は役に立ちそうな物数品と軍用小銃を手に入れた。肩からそれを掛けると、ずっしりとした重さを感じた。


そのまましばらく大通りを進んで行く。

幾度か軍人に発見されそうになったが、その都度何とか切り抜けた。

十字路で右に曲がると森へ続く道がある。

私は壁に隠れて様子を窺った。というのも、橋での様子を考えると、此処にも当然軍隊がいると思われるからである。


予想通り…いや、予想以上にたくさんの兵士がいたので私は少々驚いた。

これを突破するのはなかなか骨が折れそうだ。

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